04 「さて、どちらが先に死ぬかな?」 狩る者の立場となったアクマは、上機嫌な笑い声を上げながら地を蹴る。 姿を見せぬほどに速度を上げ、身動ぎしないエクソシスト達に狙いを定めた。 「安心するといい。すぐにもう一方も後を追わせてやるからね」 まずは、剣を使うエクソシストの方。 彼女は先の攻撃を避けきれなかったから、体力の限界は近い筈だ。 剣を握る右とは逆、左側から薙ぐようにして刃物を模した腕を振るうが、イルミナは直前に身を屈め、刃先は彼女の長髪の先を掠めるにとどまる。 ならば、と。 イルミナのステップによって離れた二人、そのもう一方が次なる標的だ。 氷を操るエクソシスト。 はじめの一撃によって左肩を負傷した少女は、そちら側の攻撃に対する防御が鈍くなっている。 加えて、こちらの速さに対応しきれていないなら、左手側の後方から攻めれば高い確率で落とせる筈だ。 ──サヨナラだ。小さなエクソシスト。 刃を模していた腕を更に変形し、槍のように鋭く尖らせ少女へ突き出す。 速度、角度ともに良好。 心臓を貫いて少女の身体越しに自身の腕を見る。 しかし、そのイメージを妨げるべく、命中の瞬間に少女が振り向いた。 首だけで振り返るのではなく、体ごと向き直り、更に後方へと跳んだのだ。 ──だが、遅い。 的との距離がひらいた事で、槍の狙いは心臓を逸れた。 だがクライサの回避行動はやや遅く、アクマの腕は彼女の腹に突き刺さる。 「………ッ!!」 ニィ、と笑った。 致命傷には少しばかり浅いが、少女の身体の内に腕がある事を見れば、蟲を入れるのには十分過ぎるくらいの猶予がある。 一匹や二匹でなく、それこそ溢れるぐらいに入れてやれば、この少女は終わりだ。 炎のイノセンスでも間に合わない。 身の内で動き回る蟲に恐れおののき、絶望に染まる顔を見──── ──……EZE── 「…………?」 なんだ、と思った瞬間、腕を掴まれた。 少女の両手。 赤く濡れた唇が、弧を描いた。 「捕まえた」 [*前へ][次へ#] |