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03




クライサが目を見開く。
その視界の隅で、アクマがニヤリと笑った。
三本。
指が、一秒ごとに一本ずつ、見せつけるように折られていく。

立てられた指が一本となったその瞬間、緋焔が唸った。

「!イルミナさん!!」

剣の纏う炎が、イルミナの傷付いた左腕を覆ったのだ。
めらめらと高く立ち上る炎に目を奪われるも、はっと我に返ったクライサが彼女に駆け寄る。

「ちょっ、イルミナさん、腕…っ」

「大丈夫よ、クラちゃん」

炎はイルミナの腕を離れ、再び剣を燃やすように纏わりつく。
彼女の腕はあれだけの炎に覆われながら、火傷ひとつ負っていなかった。

「傷口に入れられた蟲だけを焼き尽くしたのよ。緋焔の炎は、燃やすものを選べるからね」

「……はぁ、よかった。万が一、イルミナさんの身体に傷やヤケドが残ったりしたら、あたしお兄ちゃんになんて言い訳すればいいの」

「あら、それは私の台詞よ。さっきだって自分で自分の腕傷つけたでしょ。クラちゃんにケガがあったら、一番悲しむのはロイなんだから。気をつけなきゃダメよ」

「……。善処はするよ」

自信はないけど。
ボソリと零したら、拳骨の甲で額を小突かれた。
優しげな微笑みに苦笑して、現在の敵へと視線を戻す。
さて。
いい加減に勝負を決めなければ、こちらは不利になる一方だ。
先程抉った肩が痛みに疼き出したし、いくら蟲を焼き尽くしてしまえるとはいえイルミナも怪我ばかりしていられない。
何しろ体力が切れ始めているのだから、蟲を入れられる以前に致命傷を受ける可能性だって高くなるのだ。

「……イルミナさん」

アクマが動いた。
いっそう速度を増したその動きは、疲れた目では追えそうにない。
こちらを惑わすように周囲を駆け回るそれの気配を感じながら、ポツリ、クライサが呼んだ。

「あたし、鬼ごっこは逃げるより、捕まえる方が得意なんだ」

この期に及んで楽しげに笑うクライサの、表情と言葉にイルミナは目を見張る。
しかし、数拍の沈黙の後に口元を弛め、そうね、と微笑った。






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