01 「『世界に穴をあける』?」 「そう。千年公が言ってたんだぁ、世界の綻びを見つけたんだって」 「世界のほころび…」 意味がわからない。 青年は首を捻るが、彼の様子など構う気配もなく少女は続けた。 「ボクの能力なら、綻びに干渉して穴をあけられる。だから試しにやってみたんだぁ」 そしたらどうなったと思う、と問いかけ、楽しそうに笑いながら青年を見上げる。 男は見当もつかないといった顔で口を閉ざしている。 「世界と世界が繋がったんだよ。ほんの少しの間だけ…繋げられる世界は決まってるみたいだけどね」 「は?世界が繋がったって…」 「だからぁ、ボクの扉を通じてある特定の世界からそこの住人をこっちに引っ張り込む事が可能なの。いくつか条件があるみたいだけどねぇ」 棒付きキャンディーに歯を立てて、割った。 「綻びは世界中に散らばってるみたいだから…『クライサ』もその一つを通ってきたんじゃないのぉ?」 「あのお嬢ちゃんも誰かに引き込まれたって事か?お前じゃなくて?」 「あの綻び、ボクの能力以外にも特殊な力には反応するみたいだよ」 「特殊な力って?」 「さぁ?」 ニコリと笑う少女。 青年は態とらしく肩を竦め、上着の内ポケットから煙草を取り出すと、口にくわえて火をつける。 「それで、お前はそのほころびとやらで暫く遊ぶつもりなわけだ」 「ふふー」 「?なんだよ」 「実はねぇ…」 12:女剣士の参戦 「……つまり、怪しげな扉が突然執務室に現れたもんだから警戒はしたものの、好奇心の方が勝ってつい開けてしまった、と」 広い空間に規則的にテーブルと椅子が並ぶ食堂。 その端の方の席についたクライサは、開けた目で向かいの人物に呆れた視線を送った。 「そしたら急に妙な機械に襲われるんだもの。さすがの私も驚いたわ」 青軍服に身を包んだ長い銀髪の女性、イルミナ・ウェイクフィールドは、変わらず笑みを浮かべたままクライサの言葉に続けた。 なんかすんげー落ち着いてません? 色々ツッコみたい衝動を抑えるべく、クライサは大きく深呼吸する。 よし、オッケー。 「イルミナさん、現状わかってる?」 「もちろんよ。異世界に飛ばされたんでしょ?」 だからサラリと返さないでくださいってば。 まあ、かといってパニックを起こし続けられるのも面倒なので、ひとまず黙っておく事にする。 [次へ#] |