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08


今日はキッチンです。やっぱりこの服の方が落ち着く。もう久しく接客はしたくないなぁ、と思いながらキッチンの仕事をする。そんな私達は冷蔵庫の前でたっていた。開ければ納豆納豆。納豆だらけである。他にいれたい材料があるというのに。そもそも最初に入っていた奴は何処にいったんだろう。というかなんでこんなに納豆があるんだ。発注ミス?固まる私達に相馬さんが答えをくれる。

「あー、それ山田さんのらしいよ。なんでもここに住んでるんだって。」

『あー、訳あり家出少女ね。ここに住んでるんだ。まぁ、拾って来ちゃったっていうか家出なんだから帰る家なんてないもんね。それは仕方ないか。』

「山田呼んで来い。」

『ありゃま、山田さーん。佐藤さんが怒ってますよ。』

「納豆置きすぎだってさ。」

「納豆好きなんです…。」

『体にいいよね。』

はい!と元気に返事する山田さんは可愛い。私こんな妹がほしいです。頭をなでると葵って呼んでください!とキラキラした瞳で、みられた。それを見て嫌そうな顔をする佐藤さん。可愛い、といえば腰に抱きついてきた。ぽぷらとはまた違った可愛さだ。これは音尾さんも拾うわ。ってか、いい人に拾われて本当によかった。

「騙されんな名前。いいからこれどうにかしろよ。」

「もう佐藤くんったらそんな言い方ないでしょ。」

「あ、轟さんだ。」

『相馬さん。なんでそこで私を見るんだか。ほら、仕事しますよ。佐藤さん、ごゆっくり、』

「睨みながら言うなよ…。」

『睨んでません。』

「あらまー、いいの?佐藤君と轟さん一緒にして。もう諦めたとか?はい、すみません。包丁おろそう!…俺に出来る事があったら言ってよ。」

『…罠?』

「人の好意を踏みにじるのはよくないよ!!本当に応援してるって。いや、応援ってか名前ちゃんには幸せになってほしいよ。」

『相馬さん、』

いい人とは信じがたいが今だけ!なんて優しい人なんだ。諦めてはいないけど最近は普通に戻ってしまった。いや、ギスギスするのは嫌だしありがたいけども。これじゃあ告白した意味がないというか。まぁ、ふられてますよ、どうせ。しかしせっかく励ましてもらったんだし頑張らなきゃ、と心に誓いをたてる。そのまま相馬さんと一緒に倉庫に向かう途中爆弾発言が聞こえた。

「佐藤さんが好きなのは八千代さんですよ。」

「(山田仕事できないのにこんな事だけ鋭いぃぃいい!)」

『(変な現場に遭遇したぁあ!教えちゃったぁあああ)』

「はいはい、山田さんこっちおいでー。あのね、そういうこと言っちゃ人間関係が無茶苦茶になっちゃうでしょ。まったくもう、大変面白い事になりました。」

『さっき慰めたのはやっぱり嘘なのかお前。一辺殴らしてください。』

「いや、違うよ!」

『どこが違うんですか!というか葵ちゃんもなにしてんの!』

「なな、なんで名前さんまで怒るんですか!」

『そ、それはっ、』

「はいはい、山田さんはこっちにおいでねー。」

なんだかいたたまれない空気なので逃げる。とりあえず休憩時間だし休憩室に逃げ込む。椅子に座ってうつ伏せになる。なんでこうなったんだ、待て待て。八千代さんが佐藤さんの想いに気づいた…。いつか知るって知ってたけどわかってたけど、やっぱり嫌だ。思いを知ったら八千代さんだって佐藤さんを好きになるかもしれない。

『(誰にも渡したくないよ…、)佐藤さん…。』

「なんだ。」

『うわぁ!佐藤さん!なんなんですか、いきなり現れないでください。ってかいきなり無心に人の頭撫でないでください。』

「…言ってきた、」

『…はい?』

「なんか知らねえけど轟にばれてたからその場の勢い、っつーか言ったっていうか指さしたっていうか…。これも名前のおかげだな。なんだかお前の横安心するわ、」

『(なんでそんな事いえるの?私の事全然意識してないの?安心て何、そんなのいらないよ)好きでもないのに気軽に触らないでください!その気もないのに思わせぶりな態度しないでください!』

「っ、名前!」

『触らないで!…今日は帰ります。すみません、』

「あれ、名前ちゃん?!帰るの?…佐藤君なんかやったわけ?轟さんといいもてる男も罪だねえ。」

「…俺なにやってんだ。なんつーか轟の件が安心しすぎてあいつに無神経な事言ったよな…。ああ、轟の件もあんのか、あー、相馬。俺も帰る。」

「それって名前ちゃんに心許してるって事じゃ、…え、ちょっと待って!!帰るって佐藤君も!?名前ちゃんも帰って俺一人!?ちょっと待ってよ佐藤君!」

「後任せたから。」

「無理無理!無理に決まってるじゃない!ちょっと佐藤君!」

男子更衣室を叩く相馬さんにお疲れ様です、と言い走り去る。涙で視界がぼやけるけど気にしない。悲しいけどわかってたのに、頑張るって決めたのに。佐藤さんに当たってしまった。どこまでも可愛くないな私。宣戦布告までしたのに、もう自分が嫌になる。なのに好きなんて馬鹿みたいだ。こんな気持ちどこかにいってしまえばいいのに。



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