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07


私のホールデビューは思いのほか好評だったらしく今日もなぜかスカートをはいてホール働きしている。なぜなんだ!こんなの契約違反じゃないか。私は接客業はやりたくないからキッチンにいるんだ。じゃなきゃ他の仕事場に行ってるぞ。やめてやるぞ、という事でやってきました。

『杏子さん、私キッチンに戻りたいんですけど。』

「いいじゃないか。スカート似合ってるぞ。それに佐藤と一緒じゃない方がお前も働きやすいだろ。」

『(気づかれてるっ!)い、いいんです!私頑張るって決めましたし。言わないよりは言っておいた方が後悔もしないっていうかとにかく、』

「時料50円あっぷ。」

『ホール頑張ります。(50円は大きいぜ)』

「そうか、よかった。頼んだぞ。」

「あれ、名前ちゃん!今日はホールなの!?一緒に頑張ろうね!」

『まぁ…、適当に。あー、客に笑顔とか神経使うわー、小鳥遊君。私お皿運ぶから注文は取ってもらっていいかな?』

「はい、伊波さんより使えそうですし全然かまいませんよ。」

「酷い!!」

「皆さんお揃いで。あれ、名字さんがなんでホールに?まぁ、ただいま。」

『音尾さん、おかえり…。あのー、ぽぷら。私の見間違いかな。なんか女の子がいる…、』

「見間違いじゃないよ!私にも見えるもん。」

『まぁ、後はまかせた。私は客にこれ運んでくるから。これ以上私に考える事を増やさないで。ホールでいっぱいいっぱいだから。』

「ええ!?逃げるんですか。」

「そうだよ、名前ちゃん。ホールまで逃げるとは頑張る宣言はどうしたのかな。あ、給料に負けたんだっけ?」

『ふふ、相馬さん。これは仕事として引き受けたんだから文句言われる筋合いありません。キッチンにいてもホールにいても私の方が働いてます。なんなら相馬さんがホールに出ますか?キッチンに戻ります?私にワンツーのパンチ入れられたいですか?選ばせてやりますよ。』

「キッチンで仕事しまーす!」

まったく、茶々をいれないと仕事ができないのかあいつ。シカトしてホールに出る。もうこの際全力で接客してやる。50円あっぷのためにも頑張らなければ。どうせずっとホールの訳じゃないし。佐藤さんの事もあるし気分転換にいいかも。お待たせしましたー、と笑顔でスパゲティを出せばなんだかがん見された。なんか変だったか?

「君見ない子だね。新しい子?あ、別に俺達怪しい奴じゃないよ!」

「そういう方が怪しいっての!俺達近くで仕事しててよく来るんだよね。種島さんをからかって遊んでるんだけど。」

「あ、猪俣さんたちだ!そうだよ!酷いでしょ!私の事いつもからかうの。佐藤さんみたいに身長のことからかって。」

『(佐藤さん…)私もう2年目なんですよ。実はキッチン担当でホールは今日が2回目なんです。人出がいなくて手伝ってます。常連さんでしたか。いつもありがとうございます。』

「へー、そうなんだ!」

「なんだか可愛い女の子がいつも作ってたって思うと美味しく感じられるよな。」

「もうまたそんな事言ってー。彼女さんに怒られますよー。」

「小学生にはわからねえよ。」

「小学生じゃないですってば!」

最初はなんだこの客、と思った場ぽぷらがいてくれたし話してみたらいい人だった。そんなこんなで彼らと仲良くなったがそろそろ戻らないと怒られる。急いで帰ると佐藤さんが待っていた。なんなんだ。この無言の威圧はきっと怒ってるのだ。なにかしたか、と思い返すがわからない。だって今日はホールにいたし。

「仕事中に何やってんだ。ずっと同じテーブルにいてどうする。人手が足りないからいったんだろうが。」

『す、すみません。』

「…、いや、わかればいい。さっさとこれ運べ。後スカート、短くねえか?」

『いや、既定の長さですけど。変ですか?やっぱり着なれてないから辺に見えるんですかね。』

「いや、別に…。似合ってなくはねえよ、」

『えっと、それは。』

「なんでもない、」

厨房にすたすたと戻って行ってしまった。なんなんだ、一体。似合ってはなくはねえ、って事は似合ってるってことか?その場にしゃがみ込んでドキドキを抑えた。ああやって私の心を簡単にかき乱す。なんてズルイ人なんだ。佐藤さんから逃げるためにホールにいるのに全く意味がなかった。


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