[携帯モード] [URL送信]
05


今日はまあまあ暇だな、とのんびりやっていたらナポリタンをカウンターにだした時に袖が汚れた。やってしまった。別にコック服だからいいけど家で洗う時までほっておくのは嫌だ。落ちにくくなるしね。今暇だから抜けても大丈夫でしょ。早く洗おう、と思ったら小鳥遊くんが皿洗いをしていた。

『あれ、相馬さんの分なのに皿洗い?脅されたんだ。大変だねえ、小鳥遊くんも。』

「あ、名字さん!本当になんであんなに色々知ってるんですかね。よく佐藤さんにもからかいすぎてフライパンで殴られてるし。あ、手伝ってくれなくても大丈夫ですよ。」

『いいのいいの。どうせ暇だし、袖洗いたかったからついでだよ。あ、相馬さーん。丁度いいところに。そのオーダー作ってくださいね。』

「え、なんで俺が。」

『文句あるんですか?ないですよね?人に仕事押し付けてるんですからたまには人の仕事やっても罰は当たりませんよ。』

「…はい、やります。」

『じゃあ、ちゃちゃっと洗いますか。2人でやれば早いよ。』

「…凄いですね。相馬さんがいいくるまれてる。名字さんはなにか弱みとか握られてないんですか?まぁ、確かにまともですし…、」

『いや、1つ(佐藤さんの事)位はあるけど、やられっぱなしって性に合わないっていうか。脅されてならば脅し返せばいいんだよ、小鳥遊くん。』

「(ああ、この人もSか)でも相馬さんに弱みってあるんですか?」

『うーん、個人主義的な事は知らない。まぁ、相馬さんのことなんかとくに知りたいとも思いませんけど、色々あってね。』

「ねぇ、それわざと聞こえるように言ってるよね。前々から思ってたけど名前ちゃんって俺のこと嫌いなのかな。」

『普通ですかね。』

別に嫌いじゃない。が、好きかと聞かれれば人を脅す奴を好きだろうか、と考えてしまう。嫌いじゃないんだけどね。その性格を直せば温厚な見た目なんだし人付き合いは上手いと思うんだが。この人友達いないんだろうな、なんて思うとなんだか可哀想になってしまって話すのだ。憐みの視線やめてよ!なんて叫んでる。

「そういえばなんで名字さんだけ皆さん名前呼びなんですか?先輩とか伊波さんはまぁ、女の子だしわかりますが。でも伊波さんは先輩のこと種島さんって呼ぶし、なんでかなって。」

「名前ちゃんが俺の彼女だからだよ。」

「ええ!?そうなんですか!ここって恋愛禁止なんじゃ。いや、でも相馬さんなら何とかしそう…?え、でもさっき普通って、」

『なに、気持ち悪い事ぬかしてるんですか。洗剤目に入れますよ。』

「地味に痛いから!」

「冗談でもやめろ。」

「なんで佐藤くんが入ってくるのかな。そんなに気になる?名前ちゃんのこと。」

「…お前にはやらねえ。色々と不満と不安だらけだからな。」

『(佐藤さんは私のこと妹みたいに思ってるらしいしな。そんな心配されても嬉しくないっていうか…、もう本当に相馬は余計な事をベラベラと、)むかつく、』

「えっと、名前ちゃん。悪かったからそんなに睨まないでくれないかな…、」

『いいから仕事しろや。ああ、で私の名前だけど前同じ名字の人がいてややこしいから名前呼びになっただけだ。だから虫唾の悪い相馬さんの冗談はほっといてね。』

「あ、はい。」

『まあ、小鳥遊くんも好きな呼び方でいいよ。あ、そういえばハリネズミが大きくなってね!』

「え、本当ですか。大きくなるなんて!」

「…おい。さっさと仕事するぞ名前。」

『え、ちょ、佐藤さん?皿洗いの途中なんですが!』

よくわからないが連れてかれる。手だけ洗って戻る。そんなこんなでオーダーを処理してやっとあがりになりる。着替えてから最後にお茶をもらおうとキッチンに行くと八千代さんと佐藤さんが2人で居るのを発見。…見たくないな。なんでこう私って間の悪い。

「もしかして佐藤くん、杏子さんの事すきなの!?」

『(おーっと!!さすがに佐藤さんに同情!)』

「…頭いてえ、俺上がりだから帰って寝る。お疲れ…、(馬鹿かこいつ、でもなんでかそんなにいらついてないつーか、)」

『佐藤さん、だ、大丈夫ですか?その色々と…、』

「…おー、名前。見てたのか。なんかお前見てると安心するわ。もう帰りなのか。」

『はい、…あの告白とかしないんですか。そりゃ、店長の事好きってわかってますけど。ほら、なんていうか、』

「なんでそんな事いきなり言うんだよ。最近お前変だぞ。なんかあったか。」

『…報われないってわかってます。相手が幸せならそれでいいとか笑ってくれればとか喋れればとか。このままでって願うのはわかります。踏み出すのが怖いんです。壊れてしまって話せなくなるのが、でも私このままは嫌なんです。佐藤さん、私佐藤さんが好きですよ。』

「…は、」

『ただ伝えたかっただけなので。お、お疲れ様です。お先失礼します!』

バックを手にして素早く休憩室から出ていく。外に出て信号まで走ってから止まる。言ってしまった。とうとう、言ってしまった。悔しいんだか泣きたいんだか自分の事なのによくわからなかった。やってやったんだ。言い逃げだし返事なんて聞いてないけど。伝えられた。それがよかったのか後悔なのか今はわからなった。




[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!