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03


消費の激しい野菜を切る。早めについた日はこうして先に準備をしながら色んな事を考えるが最近は佐藤さんの事ばかりだ。やっぱり好きなのかなぁ。このポジションがいいし割り切って入るけど付き合えたらそれは嬉しい。略奪なんて無理な気がするけど。だって相手はあの八千代さんだ。綺麗でスタイルがいい。んー、このままねぇ。どうしようかなぁ。

「おはよー、名前。早いな。」

『…(でも振られたら気まずくなってこうやって頭も撫でてもらえないのか)佐藤さん、』

「ん?どうした。具合でも悪いのか、無理すんなよ。」

『…あの、』

「あ、佐藤くん。聞いて、杏子さんがね今私のパフェを食べてて、あらごめんなさい。」

『いいんです。私は大丈夫です。八千代さんの話聞いてあげてください。あ、相馬さん。」

「あ、おい(…なんで相馬にいくんだよ。ってかなに気にしてんだ俺まじ意味わかんねぇ)…はいはい。で、パフェがなんだって。」

後ろからする八千代さんの声に胸がズキリと痛む。私やっぱり佐藤さんが好き。でも八千代さんにかなわないのはわかってる。でもそれでも後悔する位なら告白しようかな。なんだかああいうの目の当たりにすると辛いし。いっそのこと振られた方がすっきりするのでわ?淡い期待をもっとくのはどうなのだろうか。

『んー。』

「なになにとうとう告白?まぁ、名前ちゃんは佐藤くんみたいにへたれじゃないから決めたと思ったらやりそうだよね。今まで言わなかったのが不思議って言うか、今の現状で満足してたって言うか。」

『本当になんでも知ってますね。満足してたんですどね。実はもう3年生でバイトもやめなきゃですしチャンスは今年しかないですよね。』

「え、バイトやめちゃうの?進学だっけ。続ければいいのに。でもまぁ、振られても思いを告げて少しでも意識してもらった方がいいんじゃない?気まずくなったら俺が話しかけてあげるからさ。」

『相馬さん…、初めていい人だと思いました。いつも仕事しない使えない奴とか思ってすみません。』

「名前ちゃんって本当に俺には容赦ないよね。そういえば仕込みは今日「男ォオオオ!」…あらら。」

『…まひるのご登場か。久しぶりだな。私見てくるんでキッチンお願いしますね。』

「うん、わかった。気をつけてね。」

キッチンから八千代さんもでてきて裏に向かう。その時に佐藤さんとばっちり目があった。でも今まで八千代さんと楽しそうに話してたとか告白するかとか色々考えてしまって目線をそらしてしまった。気まずい、とか思うのは私の勝手なのだろうけど。ああ、恋って楽しいけど面倒だ。

「…おい相馬。俺あいつになんかしたか?」

「まぁ、なにかっていうか…。してるといえばしてるというか。それをしてると言えばいつもしてるし、」

「わけわかんねぇ。」

「まぁ、仕込みしようよ。そんなに気になるなら本人に聞けばいいじゃない。仲いいんだから2人とも。」

「…おー。」

「(佐藤くん最近轟さんと同じくらい名前ちゃんの事気にかけてるし、…まさか、ね)ねえ、佐藤君は轟さんが好きなんだよね。」

「ごっほ!それ以上言ったら殴るぞ。」

「ごめんって!んー、やっぱりそうだよねぇ。佐藤君最近なにかかわったことない?」

「はぁ?なに言ってんだよお前。」

「…ま、いいや。」

休憩室の方に向かえばまひるが八千代さんの後ろに隠れていた。ぽぷらが小鳥遊くんに大丈夫?と声をかけている。うわぁ、殴られたんですね可哀想に。冷蔵庫から持ってきた保冷剤にタオルをまいて渡す。うわ、凄い晴れてる。これ喋るのも食べるのも痛みそう。これだから怪力は、加減を知らない。

『大丈夫?小鳥遊くん。こら、まひる。男が苦手だからってむやみに殴るなって言ってるでしょうが。まっくもー。』

「軽いですよ名字さん!大体男性恐怖症だからって普通殴りますか!?」

「やべ、シフト間違えた。」

「店長!間違えたじゃないですよ!危うく死にかけて名字さんの家のハリネズミを見れなくなる所でしたよ!」

「そこかよ。とにかくあれだ、伊波もいい加減それ直さなきゃだし、」

「無理ですよ!だって男の人って乱暴だし、」

『お前がいうな。』

「確かに。」

「(お前もいうな!)」

ぽぷらが不安そうに見ているから話しかけようと思ったら佐藤さんに呼ばれてしまった。今はあまり会いたくないが仕方ない。結局はキッチンで会うし変な態度とるほうが間違ってるし、と思い向かう。避けるのは変だぞ自分、なんていい聞かして本人と向かい合う。壁の端から相馬さんが見ているのが腹立たしい。

「あのよー、俺なんか名前にしたか?さっき不自然だったから、」

『、えー、不自然じゃないですよ。まひるが来たから急いでただけでなに言ってるんですか。ほら、仕込みしちゃいましょうよ。』

「…おう。」

「小鳥遊くん、伊波さんの男性恐怖症直す係りに任命されたみたいだよ。仲悪そうだけど大丈夫かなー。」

『相馬さんすっごく楽しそうですけどね。まあ、まひるもいつまでもあのままじゃ駄目だし丁度いい機会なんじゃないかな。』

「あ、噂をすれば。ほら、伊波、ラーメン持ってけ。」

「ひっ、名前ちゃんじゃない。大丈夫、あれは女、あれは女。」

「…はあ、そうそう女です。なんでもいいから早く持っていきなさいな。」

「『ぷ、』」

いつもまひるのために女言葉を使ってあげる佐藤さんは優しい。だけど私と相馬さんはそんな佐藤さんを見て笑ってしまう。可愛いな佐藤さん、ってなわけで私はそんな彼が見たくてわざとまひるに料理を出さないでいる、ごめん。恋する乙女は策士なんだよ。相馬さんはただ面白がってるだけだし私は許されるだろう。

「いやー、今日も名演技だったよ佐藤くん。」

『本当に、痛い!痛い!頭もげますから!』

「人の苦労を笑った奴にはお仕置きが必要だ。相馬は仕事しろよ。」

「あらら、名前ちゃん頑張って。佐藤くんはきっと恥ずかしい所見られて照れてるだけだからさ。だって気に入ってる女の子に女言葉を笑われたとか、っ!さすがに中華鍋は死ぬからね!」

「こいつは妹みたいなもんだろうが。」

『い、もうと』

「佐藤君デリカシーないなぁ。」

「は、なんでだよ。」

『そうか、妹ですか。』

「ちょ、名前ちゃん!?」

そっか、私は佐藤さんにとって妹も同然なのか。そうだよね。確かに佐藤さんは年上で憧れでかっこよくて、私になんか手の届かない人だ。でもそれでもそんな事知りたくなかったなと私は休憩室に逃げ込んだ。きっと不自然だったに違いない。それでもあの場を笑顔でやり過ごすなんてできなかった。私はやっぱり彼が好きなのだ。




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あきゅろす。
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