[通常モード] [URL送信]
蜘蛛の糸

(死ネタじゃありませんが)ハッピーじゃありません。ヤンデレじゃないけど病みぎみのペンキャスで雰囲気SSS。












すすり泣きのような声が 彼の細い喉から漏れる
なぞる指の動きに背を震わせて喘ぐ唇の奥には 薄い舌がちらりと見えた

「キャスケット」

呼ぶ声は彼の耳に届いていないのか、キャスケットの反応はない

「キャス――・・・っ」

こちらをちらりとも見ないまま、ペンギンの手で高められた身体が快楽に震える

「こっちを、見てくれよ・・・」

痺れを切らして 熱い涙を零す頬を両手で掬い取る

覗き込むようにしてその目を見つめても、透き通るように綺麗な瞳にペンギンの姿は映らない

顎を上げられた事による反射で開いた目は、ペンギンの律動に耐えかねたように再び固く閉じられる。
弾みで彼の滑らかな頬を落ちていく雫がペンギンの指を濡らした

その頬に唇を落として 彼への懇願を繰り返す

「名を、呼んで・・・・・くれ」

苦しげな呼吸の合間に嬌声を漏らすその唇は だらしなく開かれたまま、泣き声のような音しか零さない
キャスケットの弱い場所を指で、唇で辿れば 一際高く啼いて痩身を仰け反らせる
自分が、そういう風に仕込んだ
僅かな愛撫にも反応して身を震わせる、いやらしくて蠱惑的な、身体に 作り上げた。

なのに、
彼の内部を深く抉り、キツイ締め付けを味わう事は出来ても、その目をこちらに向ける事は出来ない

嫌がる彼を何度も強引に抱いた。
体格の差もあって、キャスケットを押さえ込んで自由にする事は造作もなかった
彼の心を得る事ができないのなら、他の誰にもその心を与えられないように――

身体を、奪う。
まだ未開の、真っ白で美しい肢体を、自分の手で汚す

彼が純粋であればあるほど、自分の穢れを羞じるだろう
快楽に慣れた浅ましい身体を、穢れた身体を持つ自分の心を、彼の想う誰かにそっくり全て
明け渡せるほど、キャスケットは器用じゃないはずだ

意地が悪いのは重々自覚している。
こんなにも酷い事を平気で行う自分に、彼との幸福な未来など無いことも 痛いほど分かっていた


「―――ぁ、あ、・・・・あっ・・・!」
ペンギンに散々蹂躙されたキャスケットが、全身を痙攣させて動きを止める
その瞬間、助けを求めるように開かれた彼の唇が、声にならない誰かの名前を呼び、がくりとシーツに崩れ落ちた

――聞こえない。 聞こえやしない。俺の腕の中でいくら呼んでも、そいつは助けちゃくれない

息が整わず肩を揺らすキャスケットの閉じた目は、まだ涙で濡れている
生理的な涙かもしれない。 或いは、自分の淫蕩な身体を呪った涙かもしれない

頬に掛かった髪を掬ってするりと横に流し、零れた雫を指で拭っても、閉じられた目は開かない
「キャス――・・・」

額を、瞼を、頬を、ゆっくりと撫でながら、もう一度、彼の名を呼ぶ


 『俺を、見てくれ。名を、呼んでくれ』

そんな願いを口に出す資格など、卑怯な自分はとっくに失ってしまっていた
願う代わりに ようやく呼吸の落ち着きはじめたキャスケットの体を、抱き締める
「・・・・っ」
何か呻き声のようなものを喉から漏らした彼は、身を捩って腕から抜け出し背を向ける

「―――・・・(キャス)」





ぽとりと落ちて彼の涙の滲むシーツに染み込む涙は、取り返しの付かない罪を悔いる苦衷に満ちていた







 届かない。届く事もない



全てを闇に染め、砕いてしまったのは、彼の心と自分の未来










Catch!    Uへ

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!