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いただきもの
脳内コンフェション
道沿いに、大小様々な店が立ち並んでいるそこは、とある街中の商店街。

この近辺はまだ妖怪の被害をこうむってはいないようで、通りは行き交う街人や旅人で随分賑やかに活気づいている。

そんな群衆の中、だというのに。
一際目立つ、少年がいた。

少年は人混みをも気にせず、身軽に屋台を飛び回り、目を輝かせながらジクザクに前へ前へと進んで行く。

すれ違う人達は、横から突然が抜きん出てくる少年に一瞬驚きはするも、その少年の楽しそうな様子につい口元を緩めてしまう。

それは、小さな子供を見守る母親の気持ちと同じ種類のものだ。

そんな人々の優しい眼差しを受けながら、少年は小さな鼻をひくひくさせ、一件の屋台の前で立ち止まる。どうやら、おいしそうに蒸れた肉マンの湯気が、少年の食欲を呼び起こしたらしい。

「うっっっまそ〜!!おっちゃん!一個・・・・・・じゃなくて四個予約ね!絶対残しといてな!」

言って少年は、店主の返事も待たずに、元気に元来た道を引き返していく。

屋台には、いらっしゃいませと口を開きかけた店主の、不思議そうに首を傾げる姿だけが取り残された。


***


「――さんぞー!!」

と。大きく手を振りながら駆け寄った悟空とは反対に、三蔵は眉間に皺を寄せていた。

「うろちょろしてんじゃねーよ猿。おとなしくしてろ」

「へへっ、わり」

悟空は顔の前で両手を合わせ、誤魔化すように笑った。
そしてそのまま「実はお願いがあるんだけど」と、首を可愛いく横に倒した。

しかし、その謝罪とおねだりのあまり変化のないポーズ以上に、三蔵の表情はちっとも変わらなかった。

「三蔵?」

「・・・・・・却下だ」

「えー!?まだ内容言ってねーじゃん!」

「言わなくても解る。飯は夕飯まで我慢しろ」

そう切り捨てるように言うと、三蔵はスタスタと歩き出した。

「ちょっと待てよ三蔵」

追うような形で、悟空はその背中に呼び掛ける。

「俺、店のおっちゃんに予約って言っちゃったしさあ。だから、肉マン買ってくんねーとおっちゃんもがっかりしゃうぞ?」

「知るか。俺は銃弾を買いに来たんだ。他のものは一切買わん」

そこまで三蔵が言った時、悟空は三蔵の隣に追い付いた。
三蔵は止まり、悟空を見下ろす。

「それに文句があるなら、宿に帰れ」

悟空も負けじと三蔵を見上げ「やだっ!」と、声を張り上げた。

「宿には帰らない!俺、三蔵といる!」

「ふん。そう言うわりには俺を置いてちょこまかと先を歩いていたがな」

「え?あ、や、それは――」

確かに先を歩いていた。

だが、それをさも悪いことのようにまた話を堀返させられるとは思ってもいなかった悟空は、一瞬理解が出来ずに言葉に詰まった。


「・・・・・・それってそんなに悪いこと・・・・・・なのか?」

頭の中を疑問マークでいっぱいにさせ問う悟空に、三蔵は「ふん」と、鼻を鳴らし再び歩き始める。

「・・・・・・なんか不公平だ」

悟空は三蔵に駆け寄ると不満げにそう呟いた。

「・・・・・・不公平の意味解って言ってんのか?」

「八戒に教えてもらった」

一体どういう状況で不公平の説明をするようなことになったのだろうか。
三蔵はその経緯が少し気になったが、八戒の愚痴と皮肉が介間見えるような気がして、あえて訊かないことにした。

そんな三蔵の沈黙を気にせず、と言うか気付かずに、悟空は言葉を続ける。

「・・・・・・三蔵は俺が喋る前から言いたいこと解るのに、俺は三蔵が何考えてるか全然解んねーんだもん。ぜってー不公平だ」

「・・・・・・テメーは行動パターンが変わらなさ過ぎなんだよ。たまには食いもん以外のおねだりでもしてみろ」

ま、猿には無理か。と、皮肉を言うのも忘れずに三蔵は言った。

「猿って言うな!!」

悟空はうがーと、両手を上げて抗議をしつつも、頭の片隅では“いつもと違うおねだり”を必死で考えていた。
なんとかして三蔵に一泡ふかせたい、その一心で。

そして悟空は、思い付いた。

「三蔵ー、ちょっとしゃがんで?」

「・・・・・・・・・」

怪訝そうに悟空を見遣る三蔵。
いきなりしゃがめと言われれば誰だって警戒するだろう。
それが神経質な三蔵なら尚更だ。

「・・・・・・断る。しゃがむ理由がない」

「もー!肉マンもダメ!しゃがむのもダメ!ダメダメばっかじゃん!三蔵のケチ!これからは三蔵のことケチ蔵って呼んでやるからな!」

隣を歩く悟空は本気の目だ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「――ちっ」

三蔵は軽く舌打ちをすると、面倒臭そうに片膝を着いてしゃがんだ。

悟空に気押されたわけではない。
もしもこのことを悟浄に知られ、ニヤけながらケチ蔵とでも呼ばれたりしたら――それは、想像しただけで銃をぶっぱなしたくなるような不快感。

三蔵は、自身のプライドと弾の節約のためにしゃがんだのだった。

「で?これで何だってんだ」

「あのね――」

言いながら悟空もしゃがんでいき、周りの人々は避けるように三蔵と悟空の横を通り過ぎ、チラ見していく。

そんな中、悟空は三蔵の頬にチュッと唇で触れた。

「なっ・・・・・・」

「外国の挨拶なんだって。八戒が言ってた。
だから三蔵も俺にしてよ。これが俺のおねだり?みたいな」

絶句している三蔵に、悟空はにっこりと笑った。

もちろん、三蔵がそんなことをするとは思っていないので冗談で言っているのだが、
狙い以上に三蔵が驚き、かつ、予測もできないおねだりが出来たことに、悟空は内心勝った!と、万歳三唱していた。

――が、しかし。

いつまで立っても何も言わない三蔵に、さすがの悟空も心配になり、
「さんぞ?」と、顔を覗く。

「・・・・・・殺す、今すぐ殺す」

三蔵の目はすわっていた。

「なっ、なんだよー、男同士のキスなんて芸人とかでよくあんじゃん」

と言って、危険を察知した悟空は逃げ出した。

「待ちやがれ!」

「屋台の前で待ってるー」

悟空の足は素早い。

既にその姿は人波に消え、声だけが三蔵の耳に届いた。
その耳はほんの少し赤くなっていたが、幸か不幸か、悟空も三蔵自身もそれには気付かなかった。


「――あんのバカ猿が・・・・・・」


三蔵は思う。

全くもって不公平だ。

どうしてこっちの気持は
お前には伝わらないんだ。


「――・・・・・・悟空にあまり変なことを教えないよう八戒に言わねーとな・・・・・・」

しかし八戒のことだ。
国語と社会を教えてあげただけですよ。と、あの笑顔で返されるのがオチだろう。

三蔵はため息をつき、歩き出した。

悟空の待っている屋台へと向かって。







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ケチ蔵―――――――!!!笑
ラブラブいちゃいちゃ三空も好きですがくっつく前の親子三空おいしいです大好きです></////
私のリク聞いてくれるなんて光さん神。天使。私のよm
ありがとうございました!(*´▽`*)vV

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あきゅろす。
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