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空涙の裏側
第六話〜書類整理と監視役〜



――土方side


朝なぜか目が覚めやがった。
誰かが動いたような気配がしたかららしい。

不審者なら ぶった斬ってやる…。
うっすら目を開けてたら 森崎が掃除を始めた。
それなりに手際もよく、散らかっていた室内は掃除が終わる頃には一通り綺麗に片付いていた。
今日は女中の機嫌が一日中いいだろう。

それにしても 変な女だった。

突然連れてこられて それでいて総悟が手加減されるぐらい強かった。
近藤さんたちは信用してるみてぇだが素性が分かるまでは俺は簡単には信じてやるつもりはねぇ。
近々山崎あたりに探らせるか…

ここまで考えていたところに、思考を遮るかのように睡魔が襲ってくる。
考えなければならないことはまだまだたくさんあるが、俺はまた寝ることにした。
思えばここ数週間は三時間間睡眠が常だったというのを理由にして、森崎が使える奴だったら良いが、なんてさっきまで考えていた事とは矛盾した事について考えながら。


***


「佐樹、副長が起きていたの気付いていたでしょう?」

FDがからかうように言う。
だから、どうして機械音がこんなに感情篭った声を出すんだか。

『まあね。でも敵意とかはなかったしよかったんじゃない?私はもう寝るよ』

ぶっきらぼうにさっさと返答して自室へと向かう。
私は眠たいんだって…。
こうして私の二度寝は始まった。
起きるのいつにしようかな。


***


朝起きて朝御飯を食べに行くと女中さんにむちゃくちゃ感謝された。
毎回片付けるのが大変だったらしい。
しきりに感謝の言葉をかけられて私はどうすれば良いか分からなかった。
だって凄いんだ、ほとんど涙ぐみそうなんだけど。
普段どれだけ荒らしてるんですか…
裸のゴリラや副長を蹴りつける沖田さんが見られたりするんですか…ってことはその後起きてからも障子や畳が抉れたりするのかな。
酒瓶転がってるから大惨事になったりするのかな、アルコールと刀からの火花で火事とか…それはないか。
危なめの方向で想像してしまったことに苦笑しながら軽くお辞儀をしてその場を離れた。
人から感謝されるのは本当に気持ちのいいものだな…とか思いながら、FDもそんなことを思っていたらしい、だから機械なのに何で((ry

そうそう、それから山崎さんに監察されてるのが分かる。
正直言って悲しい、とかより面倒くさい。

「やっぱり情報が全くないのが怪しまれる原因だったんじゃないですか?」

FDもそれとなく気付いていたらしい。会話の途中でその話題を挟んでくる。
機械なのに気配がわかるのかな?FDは…っと、略すの忘れた。

『そうかもしれないけど。…仕方がないの分かって言ってるでしょ、FD』
「まあ、そうですね」

さらっと受け流して大きく伸びをする。
さてと今日は書類整理でもして山崎さんを退屈させますか。


***


―――少し前


土方「おい 森崎について調べろ」
山崎「総隊長についてですか?分かりました」

………

土方「あ?情報が1つもない?」
山崎「はい。過去も家族情報もなにもかも全て、です」
土方「…ますますもって怪しいな。引き続き情報を集めてくれ。それから、ちゃんと見張っとけよ」
山崎「はい。」

山崎(副長は総隊長を疑ってるのか…ま、こんないきなりの入隊だからそのくらい厳重にしておかなければいけないしな…)


***


カリカリカリカリ・・・

…書類整理、楽だ。
もともと私は同じ作業を繰り返す地味な作業(ルーチンワーク…だっけか)が好きだから結構楽しい。
こういうの好きな人多いんじゃないかな。


カリカリカリ…

スッ

ゴロン

スゥスゥ

…さて 何があったでしょう。

説明しよう!
カリカリカリ…(私が書類整理をしている音)
スッ (沖田さんが私の部屋に入ってきた音)
ゴロン (沖田さんが部屋に寝転んだ音)
スゥスゥ (沖田さんが昼寝を始めた音)

というわけ。


沖田さんは制服だからサボりだろう。
副長に告げ口するのは…今回はやめとこ。めんどくさいし。
沖田さんって何考えてるのか分かりにくいのか分かりやすいのか分からない。


カリカリカリカリ…

5枚仕上がる

6枚増える

5枚仕上がる

6枚増える

…あれ何か5枚仕上がるごとに1枚増えてってないか?
あの「一歩進んで二歩下がる」的な。

『…沖田さん…自分の書類ぐらい自分でやっていただけません?』

いぜん寝たフリを続ける沖田さん。
しかしこの部屋には私と沖田さんしか居ない。
…ん?今気付いたがよく(仮にも)女の子の部屋に堂々と入れるもんですね…うーむ。
ってかFD、私のセリフに介入してこないで。
ん?「括弧をつけると言う気遣いに感謝してくださいbyFD」…?
FDに実体が合ったら今確実に鳩尾を突いていた気がする。

『副長に言いつけますよ?』

途端に沖田さんが口を開いた。
明らかに人を馬鹿にしたような色を含む目だ。

「…はぁ 情けない総隊長ですねィ。部下の一人も正せないなんて」
『何言ってるんですか?こういうのは慣れてる人に任せるのが一番でしょう?』

これはちなみに 嫌味じゃないからね。
「私との口喧嘩に勝てると思うなよ?」とかは断じて思ってないからね。
FDにどれだけ鍛えられたと思ってるの?長年ずっと天才人工知能相手に過ごしてきたんだから。
…FDに勝てたことなんて何十分の一ぐらいしかないけどさぁ…うん。
と言うか正直言って沖田さんの考えている事が分からない。試してるのかからかっているのか、疑っていて何か裏でもあるのか。
…ん?そういやSとか言ってたな。

「…面白みのない奴ですねィ。そういうのがある奴の方が好きなんですがねェ」
『そうですか?じゃあ沖田さんの気を引きたい女の子は大変ですね』
「…つくづく面白くない奴でさァ、じゃあ俺はこれで。ほんとに土方のヤローを呼ばれちゃ後がうるさいんでね」
『じゃあその言葉ごと副長に報告しましょうか?』

心底嫌そうな顔をされたので冗談ですよ、と言って笑った。

「いじりがいのない奴ですねィ」
『誉め言葉として受け取っておきます』

そんな話ををしてたら意外にあっさり沖田さんは私の部屋から出て行った。
本当に何しに来たんだろ。

……ん?あれ?
おい、沖田さん…
自分の書類ぐらい持って帰ってください!!

そのあと全力でつき返しました。問題児だよ、アノ人。
この日はまだそれほど溜まっていない書類を全部終わらせてから寝た。


***

○月×日

今日はずっと書類整理をやっていた。途中で沖田隊長がサボりにきていた。
どうやら総隊長は隊長のターゲットにはされなかったようだった。うらやましい。
書類整理は隊長がいる間はあまり進んでなかったけど、いなくなってからの進み具合は副長に劣らない速さだと思う。
今日はずっと部屋の中にいた。
途中で何人かの隊士が総隊長に接触しようとしていたが、結局目的は果たせていなかった。総隊長も気付いていたみたいだけど無視していたようだった。
たまにこっちをチラッと見てくるから不安になる。
侮れない人だな、とおもいました。あれ、作文?

                                        山崎 退




ビリッ。

副長室から心無い音が響いて消えた。



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