オレンジ
>>7






「…三樹…お前、さっきから何なんだよ?…ヤリてぇんなら俺を怒らせんなよ…?」


圭は、こんなことしなかった。
人を試すような言い方、しなかった。
駆け引きみたいな、曖昧な言葉を使って遠回しに「俺のこと好き?」って聞いてくるような、そんな事さえなかった。
圭はいつも俺のこと見てるだけで幸せそうに笑って――…。

そして、そこで気づくんだ。



…なんでだ…?

またこうやって頭は勝手に圭を探してる。
すぐに比べて圭を探り出す。

『圭はこうだった』
『圭だったらこうした』
『圭だったらこんなことしない』
『圭は―…』


圭は――…





こんなにも女々しい自分が嫌で、全部を投げ出したくなる。

今の自分も、圭といた頃の自分も。
圭を想って止まない自分さえも総てを捨てちまいたいって思える。


「貴幸………好きだよ…」


そう言っていつの間にか俺のすぐ傍に来ていた三樹は背伸びをして俺の頬を掴んで口にキスしてきた。


いくら人通りの少ない夕方の時間だからって、周りも気にせずやりやがって…。


一言文句を言ってやろうと思ったけど、考えれば今更恥ずかしがることでも無かったし、第一……

離れた三樹の目が、なんだか哀しそうにしてたの気づいて。
いつも飼い主の帰りを一匹で待ってる犬…いや、猫の目みてぇだ。


「……お前こそ、泣きそうになってんじゃんかよ」

「…だってー、貴幸がエッチしないって言うからぁ…」


わざとらしく声を落として、俺の腕に掴まってくる。
端からみたら腕を組んでる状態。

慣れた行為だし、重いけど三樹がいつもと違う気がして敢えて何もいわねぇでおいた。


……泣かれたら困るしな。






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