オレンジ
>>6
「……み、き」
『「うん。……貴幸、泣かないで?」』
俺の二〜三メートル先には、どこか切なそうに笑って耳に携帯を当ててる制服姿のままの三樹がいた。
電話越しに聞こえる声と、直接耳に届く高い声。
……なんか…、機械通すだけで声ってこんなに違うのか?
なんてつまんねぇことを考えながら、驚きを見せた俺に驚いたんだろうな。
三樹が今度は普通に笑った。
『「あはっ、なんか変だね。こんな至近距離での電話って」』
口に軽く握った拳を当て笑うクセがより女みたいだな、って改めて思う。
「じゃあ電話切ればいいだろ…」
俺は呆然と耳に当てたままの携帯を離して通話を切った。
「あははっ、そうだね!」
三樹も笑みを含んだままで、俺に便乗して携帯の通話を切ると、一歩俺に近づいてくる。
「なに、してたの?」
俺より十センチぐらい低いから、必然的に三樹はにはいつも上目遣いで見られる。
可愛い顔をしてるから似合っているというか、不自然ではないし、セフレの中では付き合いが長いから慣れただけのことかも知れないけど、違和感はない。
「別に?お前ん家に行こうとしてたんだけど?つか、お前が誘ったんだろーが」
「あはっ、そうだね!」
呆れたように言う俺に、向かって小首をかしげながら笑って相づちを打つ。
「…てっきり、また”ケイ”くんのこと考えて傷心に浸ってたのかと思っちゃったー」
笑顔を浮かべたままで、俺に近づいてくる三樹はまるで女みたいで。
さっきとは違う。
軽く虫酸が走る……。
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