オレンジ
>>2
足の動くまま向かったのは、土手だった。
チャリで圭を後ろに乗せて走った土手。
いつか、圭に名前を呼ばれて、振り返った時に見た夕日があまりに綺麗で、今でも忘れられない程だ。
それを見る興奮したような、嬉しそうな圭の顔も………。
でもあの時といろんなものが違う。
もう既に夕日はなく、濃い紫になっていく空。
こんな時間に吹く生温い風が涼しく感じる、あの蒸し暑い季節が終わって、人肌恋しい季節になって。
少しの風も、肌寒さに拍車をかけているだけ。
「…やべ…。チャリ忘れたし…」
今更ながらに思い出した。
駐輪場にチャリを置き忘れたこと。
「どんだけ動揺してんだよ、俺」
すげぇキョドってる自分が可笑しくてわらっちまう。
暗い空。
冷たい空気。
徒歩。
独り。
あの時とは全然違うけど、これだけは変わってないって言える。
一つは……
圭を思う気持ちが全く変わってないこと。
……そして―――。
ピリリリリリッ!
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