オレンジ
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ドラマとか小説とかで、泣いたら気持ちが楽になるって言うけど、嘘だ。
楽になんか、ならなかった。
もっと苦しくなった。
流れた分だけ胸が締め付けられて、苦しくなるくらいに呼吸が上手くできなくて。

これ以上泣いて…何になるの?
また貴幸の傍に居られるわけじゃないのに。

あの時に戻れるわけじゃないのに。
泣いても意味無いじゃん。
身体の中の水分と塩分が少なくなるだけ。



惨めになるだけ。


…それだけ。


なのに、一回流すと、涙ってものは簡単に止まってくれない。









それから俺はしばらく泣き続けた。
涙も止まらないし、止められなかった。
順也がいちいち優しくて。
いちいち涙を誘う言葉を俺にかけるんだ。

その度に新しい涙が溢れてきて、ようやく泣き止めそうになった時には順也のカーディガンは濡れてた。


腫れぼったくて重たい目を擦っては、しゃっくりをあげる俺に、順也はいつものように笑顔で頭を撫でてくれた。
優しく名前を呼んでくれた。


「泣けばいいのに…。無理矢理止めること無いだろ?いつかは自然に止まるんだから」



ドクン…ッ



心臓が脈打ったのを感じた。
自分でも不思議なくらいに冷静に受け止められていた。
順也の些細な言葉。


「……本当…?本当に…止まる?…」


涙。


「…け、い…?」

「……自然に?」


俺の声色の変化に気づいた順也はびっくりした様な声で俺の顔をのぞき込もうとする。

でも、俺は逆に顔を隠すように順也の胸に顔を埋めた。


「…ほんとに……自然に、…止まるのかな…?」



涙と一緒に、この――…。






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あきゅろす。
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