もし、(エレシリ) もし、シリーズ。 第一段はもし、シリウスが奴隷の時に、食われかけてた時エレフ達と出逢ったら(長) 「シリウス、最近よく笑うようになったよな」 「常に笑顔なんで何考えてるかわかりませんがね」 「え、そうか?」 「最初は笑いもしなかっただろ?なんか無表情って感じでさ。」 「あの頃は…まぁ、色々ありまして。」 あの時の俺は、主に屋敷の掃除などをさせられていた。主人の趣味なのか大きい服をワンピースのように着せられていた。殴られる事もしょっちゅうだった。顔には当てないようにしていたみたいだけど。 ある日、俺はいつものように掃除をしていたらいきなり怒鳴られて主人の部屋に連れて来られてベッドに強引に投げ出された。俺はこの次に何をされるか知っている。 泣いても、誰も助けてくれない。 叫んでも、何も変わらない。 嗚呼、運命よ……貴柱は俺を見捨てるのですか。 その時、俺から『感情』と言うものが欠落した。 俺は、何も考えられなくなってしまった。 変わる事のない現実。 翻弄されるだけの人生。 〈焔〉を失った、只のガラスのような瞳。 身体をまさぐる掌。 蹂躙されても抵抗する事はない。 抵抗しても無駄だとわかっているから。 犯される。 ただそれだけが、脳裏によぎっていた。主人の手が俺の胸の飾りを弄っている。でも身体は素直で、ぴくりと反応している。 やがて、俺の後孔に主人のものが宛がわれて…次に来ると思われる痛みに目を瞑った。…自分でもよくわからない内に、涙が零れていた。 主人が力を込めようとした時、誰かが部屋に入って来て…そのまま主人を刺し殺したのだ。何が起こったのか理解出来ていなくてただ唖然としていると、主人を殺したと思われる人が俺を見つめていた。 憎悪に揺れる紫色の瞳と目が合った瞬間、俺の意識は闇に沈んだ… 「閣下…この者を連れて来て良かったのでしょうか…?」 「こいつを慕う者達が大勢いるようだからな、今は少しでも人数が欲しい。それに…こいつに、あんな表情(かお)させたくない。」 「………そうですか。」 ゆっくりと目が開く。すると見た事もないような所にいた。 「……目が覚めたか?」 俺を覗き込んだのはあの紫色の瞳。だが先程とは違って優しい目をしていて、俺は少しだけ安心した。 「ここ、は…?」 声が掠れて上手く音を紡げなかったが、声は届いたようだ。 「安心しろ。あの主人はもういないよ。お前は自由だから。」 不意に伸ばされた腕に、思わず俺はびくりと反応してしまった。かたかたと身体が震える。 怖い。 触られるのがどうしても怖かった。 それを察したのか、紫の瞳の人は苦笑しながらも俺を優しく抱き締めた。抱き締めながら頭を撫でられるととても安心している自分がいた。自然と、身体の震えは止まっていた。 いつ以来だろう、こんな風に誰かに優しくされたのは。屋敷にいた仲間達はいつも優しかったけれど……この人の優しさとは違う。 俺も、おずおずとこの人の背中に腕を回してすがり付いていた。暖かい。虚無感でいっぱいだった俺が、何故か満たされるような気がした。 ……少し、金髪の青年の突き刺すような視線が痛かったが、気にしない事にした。 そんな俺の様子を見て、この人は優しい声音で言った。 「俺はエレフ。お前は?」 「………シリウ、ス」 「…そうか。シリウス、お前が欲しい。」 「………、…」 その言葉に、ついびくりと反応してしまった俺を見てその人はまたしても苦笑しながら答えた。 「身体じゃないぞ?心と力が欲しいんだ。」 「…あ……」 そう言うと、俺の唇とこの人の唇が一瞬だけ触れた。 「……え」 こういう事をされるのは嫌いな筈なのに、何故か嫌ではなかった。むしろ、嬉しいと思えるくらいだった。 「これが、俺の気持ち。……今直ぐは答えを出さなくていい。決心が着いたら、俺の所に来てくれ。」 そう言って、この場所から出て行こうとする。 一緒に居て欲しい、と思った。だから俺は… 「……行、かないで」 「……え…?」 「一緒に、いたい…です…」 俺は彼を必要とした。 すると彼は、優しく微笑んだ。 「…そうか。ありがとう、シリウス。」 また、ぎゅっと抱き締めてくれた。 やっぱりこの人は暖かい。俺はこの人に包まれて、安心した。 「シリウス、もう泣くな」 「……泣いてません」 「泣くなら俺の前だけで泣いて。ていうかさ、笑ってよ。きっとシリウスは笑ってるのが一番似合うから。」 「………笑い方なんて忘れました。」 「……そっか…外、行こう?手、繋いだままでいいからさ。」 「…はい。」 そう言って建物から出た。空はとても澄んだ青だった。 嗚呼、俺達を照らしている太陽が眩しい。 終 長かった…! エレシリもいいと思うのだよ(笑) [*前へ][次へ#] [戻る] |