this is ... friend
4.自分の気持ち
あの日以来、私はなんとなく沢田君たちと一緒にお弁当を食べていた。
初日あれだけ文句を言っていた獄寺君も、以外にすんなりと受け入れてくれた。
というか、気持ち悪いくらい大人しくなった。相変わらず「十代目〜!!」とかは叫んでいるが、私に対する憎まれ口を利かなくなった。
ある日、ちょっとした異変に気づいた。
その日は朝、いつもより余裕をもって家を出たので歩いて登校していた。
ふと、後ろから誰かに名前を呼ばれて振り返る。
「沢田君。おはよう」
「おはよう、雫ちゃん。一緒に行かない?」
「うん。いいよ、行こ」
(ん?何かヘン…)
私と沢田君は家が同じ方向らしく、朝会う事も多い。そうするといつも沢田君がこうして誘ってくれた。
けど、今日は何か違和感を感じた。結局それが何か分からないまま学校についてしまった。
そして、温かい陽気で眠くなってきた2時間目の休み時間。
「よっ。ちょっといいか?これ教えてくんね?」
「山本君…って、それ数学じゃん。私に聞きますか……」
「いいだろ?頼むよ、雫!」
「えぇ〜…うーん…」
あれ?また違和感が………。あ、もしかして…!
「朝の沢田君もだったんだけど、私の事名前呼びになってる?」
「ん?ああ、獄寺が雫のこと名前で呼ぶからなぁ。やっぱ、うつるんだな」
山本君はハハッといつものように笑ったが、私は正直それどころではなかった。
獄寺君が私を名前呼び…??獄寺君の席に振り返って見るも、どうやら彼は寝ているようで机にベターと寝そべっている。
普段は「おい」とか「お前」としか呼ばないくせに。
「でもほんと、雫と獄寺って仲良いよなー」
「へっ!?そう…かな?」
「ああ」
…どうしてこんなハッキリと言い切れるのだろう。そんなことがずっと頭をぐるぐるしていると、あっという間に放課後。
「春日さん、ちょっといい?」
「え?うん…いいけど」
何の用だろう、と思ったがそれはすぐ明らかとなった。
体育館裏。人気のない場所。ベタな所に呼び出しやがって。
相手は同じクラスの女子が三人。皆目がマジです。
「あのさぁ、なんなの?あんた。調子乗ってんじゃないわよ!」
「調子乗ってるって、何の事?」
私は分かってたけど、あえて聞いてやった。
「ふざけないでよ!獄寺君や山本君に色目使ってさ!」
「い、色目!?ふざけないでよ誰があんな奴…!」
あんな奴?この女子は獄寺君と山本君って言った……
でも私の中に浮かんだのは、あのぶすっとした顔。
獄寺君の顔。
「ねえ、聞いてんの!?」
ハッと顔を上げたが、遅かった。目の前の女子は腕を思いきり振り上げて、私を殴ろうとする気満々だ。
間に合わない………
ガッ!!
「こんなとこで何やってんだよ?」
来るべき衝撃に目をつむっていたものの、左頬に衝撃は来なかった。
おそるおそる目を開いて見ると、そこには驚いた顔をした女子三人。
そして、後ろには銀髪の…
「獄寺君…そ、その、私たち…ちょっと春日さんとお話を…」
「話をしてたって風には見えねーな。おら、とっとと帰れ!!」
三人は目に涙をためながら…もしくは泣きながら、走ってあっという間に姿は見えなくなってしまった。
「ったく、大丈夫か?」
「………」
「…?おい、雫…」
獄寺君がしゃがんで私と眼の高さを合わせて来た。
だから、耳元で小さな声で言ってやったんだ。
「ありがと、隼人」
「っ!!?」
「へへーん。あのくらいで落ち込む雫ちゃんじゃないわよ!じゃ、私もう帰るから!」
私は、さっきの女子ほどのスピードではないが、その場を走って離れた。
「ありがとう……隼人」
この時、私は自分の気持ちにやっと気が付いたんだ。
私は、隼人が好き。
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