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3 マフィアの娘
「へえ、沢田君たちは、ボンゴレファミリーなんだ」
「そうだ、十代目はボンゴレのボスなんだぞ!馴れ馴れしくすんなっつってんだろーが!」
「お、俺はマフィアになる気なんてないからっ」
「マフィアごっこだろ?本気になるなって、ツナ」
……なんだこの三者三様。皆言ってることがバラバラだ。
「…リボーンさん、これでファミリー成り立ってるんですか?」
「まぁ、一応な。本番はこれからだぜ」
にしても沢田君がボンゴレのボスとは…。十代目のあだ名の意味は分ったけれど。
こんな中学校に通ってる中学生がマフィアのボスだなんて。
「つかヴィヴロファミリーって事はオレらと敵なわけだろ!?十代目、やっぱりこんな奴と一緒に居てはいけません!」
「無知な人ね。ヴィヴロとボンゴレは今、同盟を結ぼうと動いてるのよ」
「ああ。雫の親父が動き出してるぞ」
「ははっ。じゃ、仲良くしても大丈夫だな?獄寺」
「ちっ…。勝手にしろ!」
獄寺君は本気で舌打ちして残っていた飲み物を一気に飲み干した。
このやろう、むせればいいんだ!
「でも、私とヴィヴロはもう関係ないも同然だし」
「え?どうして?お父さんがボスなんだよね?」
その沢田君の言葉に、心が冷たくなるのが自分でもわかった。
少し目を伏せれば、他の人たちは真剣な目でこっちを見る。
「…お父様は、私を捨てたもの」
だからもう、関係ない。
放課後。私は鞄に今日の宿題とか持って帰るものを詰め込んで、教室の後ろのドアから出ようとした。
その時、背中から声がした。
「おい、ちょっと待てよ」
…人を呼ぶのにこんな尊大な態度な人は私は一人しか知らなかった。
私はさっきまでと同様に、少し睨むようにキッと後ろにいる人物を見上げた。
「なんですか?私なんかと一緒に居てはいけないんじゃなかったの?」
でも私の態度とは裏腹に、獄寺君はさっきまでと全然違う顔をしていた。
不覚にもその顔にドキッとした事なんて、絶対信じない。
「…ちょっと付き合えよ」
「何よ、何か用があるんでしょ?」
「その…親に捨てられたってのはどういう事なんだよ」
予想外、としか言いようがない。まさか昼の話に一番最初に喰いついてくるのが獄寺君だとはまったく思っていなかった。
こういうのはお人好し(そう)な沢田君が聞いてくると思っていたのに。
「かっ勘違いすんなよ!テメーが十代目のお側に居ても大丈夫かどうか見極めるためだからな!」
さいですか。素直じゃない人……
「言葉の通りよ。私は勉強も、運動も出来ないから役に立たないと思ったんでしょ。だから私を並盛に捨てた」
「……」
「私からはコンタクトが取れないようにされてるし、もしかしたら部下に見張りでもさせてるかもしれない。だから私は普通の中学生として生きていくだけ。これで安心した?」
「……ああ。しょうがねぇ、認めてやるよ」
「ありがと」
私はそのまま自分の家――誰もいない、お父様が私へと与えた最後のプレゼントへと歩いて行った。
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