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無駄な知識と被害者と
「なぁ…なんで俺達、こんな目にあってんだ?」
「さあな。文句のひとつでも言いたいのなら、お使いを頼んだ主にでも言ってくれ」
「お前、俺が言えないのわかってて言ってるだろ…」
「自覚があるのならいちいち言わなくてもいいのではないか?まあ、ぐだぐだ言っててもこの吹雪ではどうにもならんしな。吹雪がおさまるまで大人しくしてることだ」
「そうだな…」

薄暗い洞窟の中で交わされるユンとロゼの言葉。
二人の声以外、聞こえてくるのは外からビュービューと激しく吹雪く風の音。
リリアに頼まれて、ラデッシュを調達してきてくれと頼まれたのだが…頼まれたのはユンであってロゼでは無く。二人がかりの方が早く終わるという事で、半ば無理やり連行されただけなのに。
ラディッシュが群生する地方は寒い所のみな為、永久凍峰にきたワケなのだが…。

「何もこんな時、猛吹雪にならなくてもいいのにな…」
「仕方ないだろう。山の天気は変わりやすいと言うからな。こればかりはどうにもならん」

そう一言告げて、ユンはその場に腰を下ろす。
暫く天気が良くならない事を理解したのか、座ったまま自分の隣で立ったままのロゼに視線を向ける。

「お前も立っていないで座ったらどうだ?少しでも体力を残しておくのも大事だぞ」
「あのな、どうやったらこんな辺り一面氷な地面に座れるって言うんだ?冷たくて座れるわけないだろう」
「オレはそうでもないがな」
「あんたは平気かもしれないけどな、俺はただの人間なんだぞ。あんたと一緒にするなよ」
「ふむ…」

呆れて文句を言う気力も無いのか、ロゼはそれだけ言うと口を噤む。
その噤んだ唇が僅かにガチガチと震え、寒いということを物語っていることにユンが気がつかないハズもなく。ユンは視線をロゼに向けたまま、ゆっくりと立ち上がるとロゼの腕を掴み、己の方へ引き寄せ抱きしめたまま再びその場に腰を下ろして。それと同時にロゼも否応なしに胡坐をかいたユンの膝をまたぐように座らせられる。
ロゼはロゼで僅かばかりの抵抗なのか、ユンの顔を見ないようにユンの肩へと顔をのせて視線が合わないようにしてしまう。

「おっ、おい!いきなり何するんだ!?」
「お前の表情を見るに耐えかねて…な。寒いのなら我慢せずにオレで暖をとれ」
「べっ、別にそんな大して寒いわけじゃ…!」

視線を合わせようとしないロゼに、ユンはやれやれとため息をついて。
何故そんなにも自分に視線を合わせようとしないのかと疑問を抱くほどに今のロゼは変なのだ。視線を合わせてくれないのならば、半ば強引にむかせてしまおうと考える辺り、自分も相当ロゼに夢中なのだと改めて思い知らされる。

「唇をこんなに震わせているのにか…?」
「…っ!」

図星だったのか、ロゼの表情が軽く歪む。


(オレはそんなお前が見たいんじゃない…。一度にとは言わない。お前がオレに素直になってくれるのが見たいだけなのに…)


そんな想いを胸に秘めたまま顔を背けてしまっているロゼの顔を、強引に引っぺがして、半ば無理矢理指で顎を掴んで自分を見るように固定した。
自分から顔を背けた罰としてちょっとした悪戯心でそっと指でロゼの唇をなぞってやれば、ビクリと身体を反応させるロゼが面白くて…。
どうしてそうやって自分から視線を反らすのか…。
中々素直になってくれないのはわかるけれど、もう少し善処して欲しいものだとユンは心の中でため息をついた。リリアに金で雇われ、ロゼと出会う事がができて…。最初はロゼの使っている光を放つ剣が気になっただけだというのに。
でも、自分の事に、娘のコロナについても色々と助力をしてもらったりしていく内に、二人きりの時間が次第に増えていった。
そして、気がついたらロゼに惹かれて好きになっている自分がいて。
いつも冷静で、捻くれた言葉や冷たい態度を取ったりしか出来ないのかと思っていたのに。
長い時間、一緒に過ごす内にロゼ自身の本当の優しさ、思いやりに気がついた。
素直に言葉にできない捻くれた性格。でも、その言葉の裏にはちゃんと彼なりの優しさが籠められているということに気がついたのは、そんなに時間はかからなかった。


(悪く言えば無愛想、良く言えば面倒見がいいといった所か…)


クスリと笑えば、その態度が気になったのか抱きしめられたままのロゼがようやく口を開いた。

「なっ、何人の顔見て笑ってんだ…!?ってか、いい加減離せッ!!」
「いや…面白くてつい…な。それに、別にこのままでも構わんだろう。ここにはオレとお前しか居ないのだし」
「あんたが構わなくても、俺が嫌なんだよ!」
「ほう…。ならばオレも言わせてもらおうか。この間皆でこの雪山で遭難しかけた時、お前はこのオレを主に暖房代わりとして勧めただろう?」
「そっ、それは…お嬢様が寒そうだったからで…」
「確かにその気持ちも判らなくもないが…オレとしては、お前が自ら寒いと言ってオレで暖をとってくれる事を少なくとも期待したと言ったら…お前はどうする?」
「ど、どうするって…別に、どうも、しない……」

言葉を詰まらせながら、ロゼの頬はうっすらと赤みを帯びて。恥ずかしいのか、そのままロゼは視線を反らしてしまう。そんな仕草がとても愛しくて堪らない。

「ほぅ…そう来たか。ならば、オレも少し強引にいかせて貰うとしよう」
「え…?ちょ、んぅ……ッ!?」

ユンは指で固定していたロゼの顎を掴んだまま、己の唇をロゼの唇に重ねる。不意打ちを食らったその唇はすんなりとユンの舌を受け入れ、咥内を蹂躙させる。ロゼはそれを阻止するように舌を突き出した。その途端ユンの舌がロゼのそれを掴まえ、強引に口の中へと誘う。うっすらと紫色に変色しかけていた唇はとても冷え切っていて冷たかったが、今のユンにとっては丁度良い熱冷ましだ。

「ふっ…ん…ぅ…」

声にならない声が唇の端から零れ落ちる唾液と共に溢れ、寒くて力の出ない身体は抵抗する術すら無くて。僅かに彼がとった行動といえば、自分の肩に力なく手を添えて何とか唇を解放しようとするくらいで。そんな彼が可愛くて、もっと喘がせてみたくなる。
だが、この冷え切った身体を温めてやりたい…そう切に願わずにはいられない。
目の前の彼は、自分とは違う。自分はマナという存在であり、彼は人間だ。
生きる種族が違うと言うのは今は関係無い。ただ今は、目の前で小さく震えている彼を救いたい…それだけが自分の気持ちと言えば嘘になるけれど。少なくとも、自分とは体温が違う目の前の彼を放ってはおけなくて。ちょっとした悪戯心もあわせて暖めてやろうと、ユンは心の中で微笑した。

「っ…はぁ…」

ようやく解放されたロゼは、力なく顔をユンの肩に預けたまま荒く深呼吸を繰り返す。ぐったりとしたまま無言で縋りついてくる彼は、とても堪らなく可愛くて仕方が無い。そんなロゼを見ていたらふと昔、雪山で遭難しかけた人間がどう身体を暖めたのかと言う話を思い出した。

「そう言えば昔、雪山で遭難しかけた時の対処方法を聞いた事がある。丁度今のお前もそんな状態だしな、試してみる価値はありそうだ」
「…なに、言って…うおぁ…ッ!?」

ユンはそれだけ語ると素早くロゼの服をめくり、その隙間から己の手を差し入れてゆっくりとした手つきでロゼの腹を撫でる。
炎のマナであるユンの手は、ロゼの冷え切った身体には熱すぎて…それでも、触れられている事に何処か安心感を抱くのも否めくて…。触れられている事に心地よくなったロゼは、抵抗という事すら忘れかけて、その手に身を委ねそうになった…が、しかし。次の瞬間、ユンの言葉を聞いて絶句した。

「こう言った極寒の地で遭難した場合、人間はお互いの肌で体温を上昇させてその難を逃れると聞いた事がある。だから、オレがお前を抱けばお前は凍え死なずに済むと言う訳だ」
「なっ…な…何考えてんだ!?そ、そんなの間に受けるなよ!ってかあんた、前から思ってたんだが、無駄な知識多すぎやしないか!?」
「無駄な知識とは失礼なヤツだ。まあ、否定はせんがな。その無駄な知識とやらがあるおかげでこうやって堂々と抱けるのだから、少なくとも今は感謝している位だ」
「そうやって露骨に口に出して言うな!それと、俺はまだ同意すらしてないだろうが…ッ!!」
「今のお前に同意も何も無いと思うがな。それとも…オレから離れて寒さに震えたまま吹雪が止むのを待つつもりか…?」
「お前に抱かれるくらいならそっちを選ぶぞ、俺は」
「…本当にお前は捻くれてるな」
「今更何言ってやがる」
「では、オレがお前の事を心配してると言うことでは理由にすらならないか…?」
「心配って…あんたが、オレを…?」
「…そこまで驚かれると、さすがのオレも少々傷つくんだがな」
「んなコト、急にいわれ…あぁ…ッ!」

ため息をひとつつき、ユンはロゼの背中を抱えるようにして半身をしっかりと固定すると、着ているシャツを捲くりあげて露になった乳首にそっとキスを落とす。それだけでロゼの身体は、ぴくん、と小刻みに揺れる。
完全に脱がされるわけでも無いその状態は、ロゼにとって辛かった。雪山の寒さとユンから与えられる熱いくらいの愛撫は両極一端で堪らない。自分の身体が熱いのか寒いのか、もう上手く意識できない。

「やっ…んッ…」

両方の胸を舌先で転がされ、舐められて弄られながら、ロゼは熱い吐息を吐き出しながら己にこんな仕打ちをしている目の前の男の背中に縋りつく。自分を乱しているのは、他ならない目の前の男だというのに、縋りつける相手もこの男しかいないのがとても悔しくて堪らなかった。
次第に意識は朦朧としはじめ、思考は甘く霞んでいく。今、雪山で自分が遭難しかけていると言う事すら忘れそうなくらいに、ユンから与えられる愛撫が心地よくて堪らない。
胸を弄っていた舌が、そろりと乳輪をひと舐めされて。腹を擦っていた手は気がつくと器用にもズボンのベルトを外し、ボタンとジッパーを下げられて下着の中に侵入されていた。侵入してきた手は迷う事無くロゼ自身を握り、ゆるゆると上下に扱かれて否応なしに現実に戻される。ゆっくりと扱かれる感覚に、ロゼはビクリと身体を震わせた。

「早く、もっと擦って欲しい…だろう?」

いつもより低い声色で耳元で囁かれる、彼の言葉。
その声色は、ひどく淫靡で堪らない。けれど、素直に従うのが悔しくてロゼは僅かに残った理性をふり絞って小さく首を横に振る。そんな仕草が男を煽るという事を知る由も無く。

「抵抗されると余計燃えるのが男と言うものなのだがな…お前のことだ、絶対無意識にやってるだろう?」
「あ、あぁ…」

ぐちゅ、ぐちゅとユンの手の中で蜜を溢れさせて濡れた音を立てる。己の意識を全てそこに持っていかれたような感覚にロゼは、ますますユンの身体にしがみ付く。この快楽を与えているのも、解放してくれるのもユンだけだと言うのに。心は中々素直になれなくて、でも身体は敏感にユンを求めようと身じろく。

「くっ…あぁ…ん…」

どうしようもなく気持ち良いのに、ユンは緩い愛撫しか与えてくれない。じれったくて堪らないのに…早く、この熱を解放したいのに決定的な刺激をくれない。

「ゆ…ん…っ」
「なんだ?」
「う…あ、あ、あの…」

ロゼの言葉に、ユンは与えていた愛撫を一旦止め、そっとロゼの身体を離して彼の表情を伺う。今の今まで自身を扱いていたので、ロゼの顔は熱を帯びていてうっすらと目には涙が浮かんでおり、思わずユンはゴクリと喉を鳴らす。
ロゼは、そろそろとユンの顔を見る為に目線を上げた途端、カッと頬が熱くなる。慌てて視線を下に向けると、次の瞬間視界に飛び込んできたのは――ユンに弄られて赤く膨らんでトロトロと蜜を溢れさしている己自身だった。

「…ッ!!」

自分でさえロクに弄った事が無い…ソコを今まさにユンに握られていると言う事実がダイレクトに視線に写って、慌てて視線を横に反らす。

「なんだ、自分自身を見て恥ずかしくなったのか?可愛いヤツだな」
「いっ…いう…な!」

ロゼの恥ずかしがる様をまるで楽しむかのように、ユンは笑いながら中途半端に下ろされたズボンを膝下あたりまで脱がせ…再びロゼ自身をくちゅ、くち、と扱き始める。今度は先ほどとは違い、少し強めに擦りながら、亀頭から滲み出る蜜を指に絡め、そのねっとりとした体液をロゼの口に差し込んだ。

「んぐ…ッ」
「お前が出したモノだろう?オレの手を汚したのだから、綺麗にしてくれないか」
「ん…ふっ…」

熱を帯びた身体は、その甘くて優しい命令に逆らえない。
普段リリアの命令に従順に従っているロゼにとって、自分の主人でもないユンの命令など聞く必要は無いハズなのに…。耳元でそっと囁かれると、腰に甘くジン…と刺激が走り、気がつけば無意識に素直に頷いていた。

「うぅ…ん…っ」

猫がミルクを舐めるような、たどたどしい舌使いで一生懸命ユンの指を舐めて綺麗にする。
自分が出した体液を口に含むこと自体が初めてなロゼにとって、今の行為は苦しくて堪らない。ねっとりとした体液は、粘り気と青臭さが口に広まって決して美味しいといったモノでは無くて…。

「良い子だ…もういいぞ」
「ぅあ…」

ようやく指から口を解放されたロゼは、思い切り息を吸い込んで深呼吸を繰り返す。
その唇からは唾液と体液が滴り落ち卑猥に見え、無意識にユンを誘う。一瞬、その唇に噛み付いてやりたいと言う衝動に駆られるが、そこは我慢をして、今までロゼが舐めていた己の指を、ロゼの後孔に押し当てる。

「や…やめ…!」
「今更やめられると思うか…?」

クスリと微笑むユンが、一瞬悪魔に見えて。
次の瞬間、まだ硬くて狭いその場所に、ずぶりと指が埋め込まれていく。

「ああぁ…っ!?」
「くっ…やはり狭いな…。唾液だけでは潤滑が足りないか…」
「や、やめ…ろ…。うご…動かさな…あぐ…ッ」

苦しむロゼを見て耐えかねたのか、ユンは一旦ずるりと指を引き抜き、再びロゼ自身に指を絡める。亀頭をなぞり、裏筋をそっと指で辿って撫でてやると、トロトロとロゼ自身から透明な蜜が溢れ出す。それをたっぷりと中指に絡め、再び後孔に中指を挿入させる。

「ひ…っ…」
「さっきよりは、辛くないか…?」
「あ…ぁ…」
「その様子だと大丈夫そうだな。ゆっくり動かすぞ。オレは別にお前を傷つけたいワケではないからな」
「ふっ、う…ぅん…!」

無理矢理こじ開けられるその行為に、ロゼは気持ち悪くなり口を噛み締めた。

「ロゼ…辛ければこっちに集中しろ。そう、それでいい」
「うぅ…あ、あぁ…あつ…い…っ!」

ひたすら嘔吐感を我慢しているロゼに、ユンは空いている左手を使ってロゼ自身に指を絡め、ゆっくりと扱き始めた。

「あっ…やぁ…ぁ…」

先ほどまで挿入されていた指が気持ち悪くて堪らなかったハズなのに。
ユンに自身を刺激され、絡みつく指が堪らなく気持ち良かった。

「そうだ…オレに素直に身を委ねろ」

ズズッ…と、奥まで侵入を果たした指が何度か抜き差しを繰り返された後、内部の媚肉を確かめるかのように細かく揺らされる。
くぷ、くぷ、と内部をかき回すように刺激され、気持ち良すぎて堪らない。時々かき回しては、内部を広げようとする動きも、指を増やされて注挿を繰り返される指の動きも、今ではもっともっとと強請りたくなるくらいに…。

「ん、んん…ぅ…」

自分に与えられる快楽に抗えなくてずぶずぶと快感に飲まれていく感覚に、ロゼは最後の理性の欠片をかき集めて自分の口を両手で塞ぐ。このままだと本当にユンに溺れてしまいそうで怖くて堪らなかった。

「ふぅ…う…んぁ…ッ!」
「声を殺すな。もっとその厭らしい喘ぎ声をオレに聞かせろ。ここは学園ではなく、今は誰もいない雪山なのだから…」
「ひっ…んあ、あぁ…ッ!」

口を覆っていた両手をユンに剥がされ、噛み付くようなキスを与えられる。
噛み付かれるのかと思ったのに、そのキスはどこまでも優しく、甘さを含んでいて…とても心地が良くて。
キスに浸っていると、後孔からズルリ…と指を抜かれ、下腹部から布の擦れる音がした。
そして次の瞬間、指の抜かれた後孔に灼熱の塊が押し当てられ、ズッ…と鈍い衝撃が襲い、ロゼの体重も加わって一気に内部へと挿入させられる。

「ひあっ、あ、あぁ――!」
「くっ…!慣らしたのに、結構キツいな」
「いっ、あぁ…!」

ロゼの中に灼熱の塊が全て納められ、そして蹂躙する。
熱くて苦しくて、堪らずロゼはユンの首に腕を回して助けを請う。今、自分を苦しめているのはユン自身なのに…縋りつけるモノも彼しかいなくて。
ロゼは必死に呼吸を繰り返し、苦しくて堪らなくて…。そんなロゼの頬に生理的な涙が伝う。

「ロゼ…泣くな。辛いならこの吹雪のせいにしてしまえばいい…全てオレのせいにしてしまえば良い…。お前は何も悪くない。オレは、凍えているお前の身体を暖めるために抱いていると…そう、思えばいい…」

苦しいながらもロゼは、閉じていた瞳をそっと開けると…そこには辛そうに顔を歪めたユンが居た。
彼は、この行為を吹雪きのせいにしろと…自分のせいにしろと言った。
なのに、何故目の前の男はそんなに辛そうな表情をしているのだろう…?
思考がうまく回らなくなった頭で、必死に答えを探す。
何故、彼は急にそんな態度を取ってきたのか…?
本来排泄器官である場所に、挿入されて苦しくて辛いのは自分のハズなのに、何故彼がそんな辛い表情を見せるのか…。


(あぁ…なんだ、そんなの…答えはひとつしか無いじゃないか…)


考えずとも、答えはわかっていた。
けれど、その答えを素直に口にする事が出来なくて…。
自分だってわかっている。
なかなか素直になれない捻くれた性格。
でも、そんな自分を目の前の彼は好きだと言ってくれた。
信頼しているとも言ってくれた。
その言葉を聞かされた時、不意に涙が零れ落ちそうだったのも…。
遥か昔、マナに裏切られたのだと思って今までマナを恨んできた。
全てのマナが悪いワケでは無いのに、幼い頃の傷跡はロゼの心に大きな傷を残したまま成長して。
心が通じ合っても、きっといつかは自分を裏切って何処かへ行ってしまうのかと…。
だからマナとは深く関わらないようにしてきた。
期待するぐらいなら…最初から深く関わらなければ良いと、そう自分に言い聞かせて。


(でも…こいつは、ユンはきっとそんな事、しないと思う…)


確信など何処にも無い。
あるのは今、目の前で辛そうにしている彼だけだ。
一歩引いて見ているだけじゃダメだと…そう思った。
自分でも少しでもいい…一歩踏み出してみようと強く思った。
そこに止まるだけでは、決して先に進まない。
少しだけでも良い。今目の前にいる大切な人に、自分の気持ちを伝えたい…。
その想いがあれば、きっと過去の自分とも吹っ切れるに違いないと…ロゼはそう思った。

「…」
「…ロゼ?」

ロゼの表情が変わった事に気がついたユンは、行為を一時的に止めてロゼの様子を伺った。
そんなユンを見てロゼは絞り出すような小声で、そっと瞳を閉じてユンの唇にキスをする。

「……!?」

不意をつかれたロゼからの初めてのキスに、ユンは驚きを隠せずに瞳を大きく開けて視界に映るロゼを見ていた。


(これは…夢なの…か?オレは寒くて幻覚でも見ているのか…?)


そんな筈が無い。
少なくともユン自身、炎のマナなのだ。人間ならまだしも、マナである自分がこんな幻覚を見るハズが無い。


(では…コレは、現実か…?)


そっと離される唇を、目で追いながらユンは今の出来事が幻で無い事に気づかされた。
幻なら…唇同士が触れ合う感覚など、ありはしないのだから。

「ロゼ…?」

そっと離れていくロゼに、ユンはそっと声をかける。
幾度か身体を重ねた事はあったが、今のようにロゼ自身からキスをしてきてくれる事など一度たりとも無かったのだから。
今でも信じられないくらいに、ユンの思考回路はぐるぐると回っている。

「好き…だ…」
「…!?」

それだけ告げると、ロゼの身体はくたりと前に倒れ、ユンの胸に顔を委ねるようにして気を失ってしまった。
その横顔は、何処か穏やかで…安心したような表情だった。

「お前と言うヤツは…」

嬉しくて堪らないその感情は、普段見せた事の無いような優しい笑みで。
ユンは気を失ってしまったロゼの身体を包み込むようにして、そっと髪を撫でる。
サラサラとした髪は、ユンの指から零れ落ち、ロゼの顔にかかる。
先ほどまでの行為のせいで汗ばんだ顔も、身体も、何処もかしこも愛しくて堪らない…。
どうして突然あのような言葉を紡いだのかは判らない。
けれど、こうして今、自分の腕の中にいる彼は紛れも無い事実なのだ。
捻くれた彼の事だから、きっと言葉にしてはくれないと思っていた。
だが、先ほど伝えられた想いは…言葉は決して偽りなどでは無く。


(目が覚めたらもう一度問いただしてみるとするか…。まぁ、きっと二度と言ってはくれないとは思うがな…)


安らかに眠る彼の横顔を見つめながらユンは、使いに出してくれた主とこの猛吹雪となった永久凍峰に感謝したのだった…。







END


+++後書き+++

初めて書いたユンロゼ小説がコレか…orz
紫乃様のサイトで開催されました茶会にて出てきました雪山遭難ネタを、がっつり書かせていただきました…ッ!
なのに…それなのに、このへたれ具合…。本当にすみませんすみません…!!(ヘコヘコ)
エロ書いたのは良いけれど、最後までシてないってのは大いに問題アリですよね。;
私がヘタレなばっかりに…おぅおぅ;(号泣)

胸→ロゼ息子→後ろ(指)→後ろ(本番途中で強制終了)

もうね、この流れがありえない(涙)
しかも、なんだかお互いに好きなのか分らない意味不明な文章に成り果てている…orz
やっぱり長い間、小説書いてなかったのがいけないんですかね…。リハビリにすらなっていない気がしてなりませんorz
なんかロゼはロゼでエセくさくてたまりませんし。(…)
何だ、この糖分高い甘々っぷりは…!(少なくとも私の中ではですが;)
ネタはポンポン出てきているのに、文章に書き起こせないってかなり辛いですね(泣)
ツッコミ所満載ですが、あえてつっこまないでやってください…。つっこまれたらもう二度とユンロゼかけなくなりそうだ…(何処までヘタレなんだ…)
こんな文章でしたが、読んで下さってありがとうございました―!!(脱兎の如く逃)









































…実は、この後の話も一応考えてあったりなかったり。(笑)
書く気力があればの話ではございますが…(ぇ)
きっとまたエロになるに違いないのですが…やっぱり書いててちょっぴり恥ずかしい七海でした―!!(逃)



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