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1,いるはずのないひと
1:いるはずのないひと








※アレンが教団を去り、神田とジョニーと再会。リンクの死を知らされ、伯爵から逃げた後の話。(原作捏造)








それは肌寒く、西の空の明るみが消えかかっている頃。
先ほどまでの騒動が嘘のように日常に戻っていった街の中。

アレンは一人、狭い路地裏で立てなくなっていた。荒い息を止め、必死に心臓を落ちつかせる。

自分は何度、死にかけたのだろう。どうしてこんなところで止まっているのか。そして、なぜ一人なのだろう。あの夢は、マナは、ネアは・・・
朦朧とする意識の中、気を抜くとすぐに闇に落ちそうになる。いつも横にいるはずの黄色い相棒は、一向に姿を見せない。指先から冷えていく感覚に襲われ、必死に温かい記憶を呼び起こそうとする。こんな時、彼がいたら。
「・・・リン、ク・・」
彼はどうしているだろう。あの牢獄から一瞬振り返った彼は、決して無事な様子ではなかった。でも彼ならきっと、きっと生きているとそう信じていたのに。
神田は”あの監査官を殺したのはお前か?”と言った。確かにそう、言ったのだ。



大きなワイン樽や粗大ゴミに言うことを聞かない身体とイノセンスを隠すように佇んでいる今のアレンには、ただ想いを馳せることしかできなかった。


”リンク。嘘だよね?君はまだ、世界の中にいるよね?嘘なら、ここまで来て・・・”


「ッごほっっ!ゲホッ・・っ・・・・くっ・・・・」
涙と鼻水で咳き込み、息を大きく吸い込もうとした時だった。





「ウォーカー」





大きく吸うはずの息は止まり、音が消えた。景色が映え、霞む視界にその一点だけを写す。

「リンク・・・??」


そのまま身体の支えを失い、重力に任せて頽れそうになったところを、見た目よりずっと鍛えられた腕が受け止める。ふわりと背に、もう片方の手が添えられた。
意識が押しつぶされる前に問うた。
「どうして・・ここに・・・」



「あなたに、呼ばれた気がしたのです。」



最近は苦しくも懐かしい夢を多く見た気がした。目が覚めたとき、身体は冷や汗でびっしょりで、理由の無い不安に陥る朝だった。
しかし、これが夢ならば、今ここで、彼の腕の中で殺してほしい。そう思った。




君に呼ばれたきがしたんだ



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