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REBORN
きみを拐って (雲アデ+1)


愛する並中を卒業して早一年。
ぼくはいつでも好きな学年さ、と言っていたのはまぁ冗談で。
来るべき時が来たら卒業しなければならない。

並中を卒業した学生の多くは並森高校に進学する。
並森から出たくないぼくは勿論だが、ボクシング部の笹川と粛清委員会の鈴木も並校に来た。

風紀委員会?
あぁ、あいつらも並校に来たよ。
当然こっちでも風紀委員(ぼくの下僕)だ。

ついでに鈴木の粛清委員会も彼女を崇拝する女子生徒を取り込み、今やぼくの風紀委員会と肩を並べている。

並校の学校生活もまぁまぁ楽しいよ。
草食動物や山本武や獄寺隼人や、赤ん坊などの咬み殺し甲斐のあるやつがいなくて若干物足りないけどね。

だけど、それももう終わりだ。


コンコン
「やっぱりここに居たんですか」

振り返れば、開いたままの屋上のドアをノックする女の姿が。
モデルの様な長身で制服を校則違反に着こなす彼女、鈴木アーデルハイト。
腕には見慣れた"粛清"の腕章を着けている。
今やこの腕章を着けるのは女子生徒の間では最高の栄誉となっているからね。
君から貰った腕章を誇らし気に着けた粛清委員をチラホラ見かけるよ。

「…何?」

「行くんですってね、イタリアに」

基本、彼女はムダな前置きをするのは好きではない。
要件のみをストレートに伝えるタイプだ。
だけどそれはまさに、ぼくが今考えていた事の核心をついた。

「もうちょっとしたらその件で跳ね馬が並校まで来るよ」

「そうですか」

数日後、沢田綱吉は並中を卒業する。
そうなったらリング保持者は全員イタリアに行く。
勿論それはイタリアにボンゴレの本部があるからだ。

やつらのファミリーに入った覚えはないけど、退屈な毎日から抜け出せるならイタリアに行ってもいい。
咬み殺し甲斐のあるやつはいるんだろうね?
それが自称ぼくの家庭教師跳ね馬に言った答えだった。

「あなたがいないと私も静かな学校生活をおくることができます。
風紀委員会は粛清委員会が吸収することにします」

「何言ってるの。君も一緒に来るんだよ」

「…、…は?」

ワォ、ここにきて君のそんな間の抜けた顔が見れるとはね。

そう、これがずっと考えて出した答え。

「ふざけてるんですか」

「至って本気だよ」

「冗談は…私を倒してからにして下さい!」

「ワォ、驚くね。勝てると思うの?
君を連れて行くよ」

ぼくはトンファー。
彼女は鉄扇。

互いの武器が鳴らす金属音が、賛美歌をおもわせる音楽に聴こえる。
短いスカートをヒラヒラさせて舞う彼女も、ぼくの為に勝利の舞いを踊る女神に見える。

ぼくが勝つよ。






「ゔお゙ぉ゙ぉい!遅ぇぞぉ!何やってんだぁ゙!」

「あ、スク…」

ディーノが呆然と並校の校庭に立ち尽くしていると、痺れを切らした彼の恋人が滞在先のホテルからやって来た。

「つーかマジで何やってんだぁ…」

「最初は屋上で、今は校庭でかれこれ二時間はあーやってんなぁ…あいつら」

「ぼーっとしてんじゃねぇ!何でシモンの守護者とボンゴレの守護者がバトってんだぁ゙!」

「さぁ…?」






「意外と頑張るね…」

「あなたこそ…」

余裕そうに軽口を挟んでみるものの、炎ナシの普通の肉弾戦。
二時間も本気でやっていれば息も上がってくる。

「いくよ…」

「どうぞ?」

((次で、決めてみせる))

「…!!きゃっ!」

一閃がぶつかり合った時、アーデルハイトが足を滑らせてバランスを崩したのを、雲雀は見逃さなかった。

白い首筋に、ひんやりとしたトンファーが当てられた感触。

「ハァ…ぼくの勝ちだね」

「っつ!…フゥ…」

負けを認めたのか、アーデルハイトは鉄扇を下げた。

「さっきの約束、覚えてるよね?
ロール…カンピオ・フォルマ"アラウディの手錠"!!」


「おっ、決着ついたみてぇだぞぉ゙」

「ちょっ!何で恭弥のヤツ開匣してんだ!?」

待ちくたびれていたスクアーロは座り込んでデニムに着いた砂を払った。

「あぁ、来てたの跳ね馬…と鮫」

「てめえぇ゙!どれだけオレ様を待たせるつもりだぁ゙!」

「まぁまぁスクアーロ!てか恭弥、それ…」

ディーノが指差した先には手錠に繋がれた擦り傷だらけの二つの白い手首。
その手首が繋がるのは勝者・雲雀と、ムスッとした表情のアーデルハイト。

「これ?戦利品♪」

「「???;;;」」

頭に?を浮かべたディーノとスクアーロに、雲雀は(彼にしては)ご機嫌で答えた。






「「…というわけで、ぼく(私)たちは自主退学します」」

職員室中の先生が全員、ポカーンと大きく口を開けていた。

「え、と…君たち成績上位者に辞められると学校としても困るんだが…。それに辞めてどうするんだ」

「「イタリアに行きます」」


「委員長おぉぉぉっ!!!」

混乱に静まり返る職員室の静寂を破ったのは、風紀副委員長・草壁の大声だった。

「何?」

「イ、イ、イタリアに行くっていうのは…」

「うん、行くよ」

「じゃあ我々風紀委員会はどうなるんです!?鈴木さんの粛清委員会も!!」

「「だったら君(あなた)が兼任すればいい(わ)」」

べしっ!
べちっ!

草壁の顔面に勢いよく二人の"風紀"と"粛清"の腕章が叩きつけられた。

「そんなぁ……(涙)」




それから数日間、全校生徒の間である噂が流れた。

(雲雀さんと鈴木さん、カケオチしたらしいよ!)
(うそー!!)
(イタリアに高飛びだって!)
(すてきー!!)
(屋上でプロポーズしたって聞いたわ!)







「まったく…あなたといると平穏な生活はおくれませんね」

「ところで君、ぼくが気付いてないと思ったの?わざと足を滑らせてバランスを崩したこと」

「……///!!!」




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あきゅろす。
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