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アレキサンドライトの恋



今の君じゃまだ嫌だよ

いつかの未来でもう一度

今の言葉、待っているから。



下町は今日も概ね平和だった。

騎士としての仕事をこなし、空いた時間に下町をぐるりと見回って、最後に宿屋の2階へ足を運ぶ。別にこれといった用は無いのだけど、なんとなく気掛かりでつい足繁く彼の様子を見に行ってしまうのは最早幼馴染みというよりも母親の心境に近いのかもしれない。
…困ったな、僕が将来過保護な親になったら間違いなくユーリのせいだぞ。

階段を上がってすぐの部屋、ノックを2回と名前を呼ぶ。返事を待たずにノブを捻ると中からは何かいい匂いがした。


「ようフレン、騎士様が不法侵入とは頂けねーな。ま、そろそろ来る頃だと思ってたけどさ」

「……不法とか君にだけは言われたくないんだが。それより何だい?いい匂い」

「あぁこれな、今日女将さんの手伝いした礼にレシピ教えて貰ったんだよ。食う?」

「じゃあ味見だけ」


ユーリは相変わらずその日暮らしの様だ。君が満足ならそれでも僕は構わないと思っているけど、どうしても違和感は拭えない。君が騎士を辞めたのは幅広く人を助けたいと思ったからじゃないのか?
こんな事を言っては下町の皆に失礼かもしれないけど、君は倉庫掃除だとか宿の手伝いだとかって小手先の助け合いがしたくて僕と道を違えた訳じゃないだろう?いつまでこの狭い世界で燻っているつもりなんだ。

…………って、あああやっぱりほら駄目だもう僕は!母親みたいなお小言が今にも口をつきそうになってる。ううう我ながら世話焼き過ぎるだろうが…小さな子供相手じゃあるまいし。


「どうだ?美味いだろ」

「ん…、これユーリが?」

「まぁな。女将さんのお墨付きだぜ」


そんな僕の内心なんて素知らぬ顔で、ユーリはもう一口とスプーンを向けてくる。うわ、なんか餌付けされてるみたい。うん、美味しいけどさ。


「ユーリ、料理上手くなったな」

「ほっとくと誰かさんが対人最終兵器を生み出しちまう以上、俺がやらなきゃ駄目だろうが」

「ハハハその失礼な口を縫い付けてもいいかな?大丈夫、裁縫は得意なんだ」

「そりゃ結構なことで。いい嫁さんになるだろうよ」

「誰のだよ」

「俺のだろ」


水のボトルに口を付け、ユーリはさも当然の如くさらりとトンデモ発言をしてきた。
………うん、まぁ、当たり前になるくらい聞き飽きた台詞ではあるけれど。

嫁ぐとか嫁がないとかいう話はさておいて、君がそれを望むなら僕は一生を共にしても構わないと思ってる。君みたいに上手く口に出せないけれど、ちゃんと僕も君のこと、好きだよ。



でも、ね。



「…………ふふっ、丁重にお断りするよ」

「フレン?」

「すまないがユーリ。僕、今の君には幼馴染み以上の関心は無いんだ」


にっこり笑って言ってやる。新鮮だな、君の唖然とした顔なんて滅多に見られるものじゃない。

君のことは好きだよ。でも、今の君は、嫌い。

つまりはそういうこと。


「あの日交わした約束は、君の剣は、下町の為だけにあるんじゃないだろ?いつまで立ち竦んでるつもりだい?
悪いけど僕は先に行くよ。君のこと、いつまでも待ってられないから」

「ちょっ、フレン!俺は…」
「とにかく僕は、今の君には興味ない。仕事に戻るよ、ご馳走様。」


一方的に言い放ち部屋を後にする。……少しきつかっただろうか。
でも、君は君なりに足掻いてるのは分かっているけど、どうしても歯痒くて苛々してしまうんだ。だから一緒にいる事は出来ないよ。



今は、まだ。
















(いつかの未来でもう一度)

(その時は君に、渡したい物があるんだ)



フレン戦で落とすアレキサンドライトはエンゲージリングですよねって話^p^

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