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まいご(沖田+土方)

 右も左も分からなくなってしまった。ここはどこだろう。おれは何度目かも分からない溜め息をついた。そもそも京都にきてからまだ数日も経っていないっていうのに、「巡察」しろって言う方が無理な了見だ。そう不満を漏らしながら、暗くなってきた空を振り仰いだ。
「おなかすいたなあ」
 呟くと、その言葉に応えるように腹の虫が啼く。なんだか虚しくなってきた。
 こんなことになるのなら、新八さんたちと離れなければ良かった。新八さん、平助、そしておれの三人で巡察をしていたが、途中で次々目に入る甘味処に我慢が出来なくなったから、辛党の二人には先に帰ってもらったのだった。まさかこの歳で迷子になるなんて思ってもいないもんなあ。もう一度息をつく。八木さんの家が一体どの方向にあるのか、皆目検討もつかない。随分あちこち歩き回ってしまったが、いい加減足が疲れてしまった。
「うぅん、本当にどうしよう」
 二進も三進もいかなくなるとはまさにこういうことを言うだと思う。誰かが迎えにきてくれないかなあ、とも考えたけれどみんな今頃は夕餉を食べているに違いない。いい人たちばかりだけれど、おれの心配より飯の心配をする連中だ。まったく薄情なんだから。
 こうやって誰にも心配されないまま、おれはこの京都のどこか分からない場所で死んでいくんだろうか。短い一生だったなあ。まだ食べたいお菓子とか、遊びたいこととか、行きたい場所とか、たくさんあったのに。
 おれはがくりと肩を落とす。振動がひどく頭に響いた。










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