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20000HIT OVER
As you like(鹿百合)


「待ってエバンズ、話が違うじゃないか!」
「変な言い掛かりはやめて頂戴、ポッター」
「言い掛かりなもんか!」
 グリフィンドール寮談話室では、土曜日の朝だと云うのにそんな言い争いの声が響いていた。片や胸に監督生バッジを光らせ、片や学年首席。その肩書きを差し引いたとしても、彼等の言い合いの仲裁に割って入るような奇特な寮生がいるはずはない。―――否、いなくなったという方が妥当だろうか。
 つまりこの光景は日常茶飯事のことで、はじめこそ仲裁に入っていた双方の友人たちも、馬鹿ばかしくていつしか誰も何も言わなくなったのだ。
「どうしてデートに行かないなんて言うんだい? 約束したじゃないかっ」
「それは貴方が他の寮生に悪戯をしなかったら、というものだったでしょう!」
「してないだろう!」
「えぇ、やっていないでしょうとも。スリザリン以外には、ね。さっさと其処を退いて頂戴」
 キ、と上目使いにジェームズを睨み上げたリリーは、彼が塞いでいる談話室の入り口を指差した。他の人の迷惑になるでしょう、と言うがその場にいるのは言い争う二人と、ジェームズの仲間たちばかりだ。ジェームズが『はい、そうですか』と言うことを聞くはずがなく、「どかないよ。君が今日のホグズミードに一緒に行ってくれると言うまで」
 頑として立ちはだかる。
「ふざけないで」
「ふざけてなんかいるもんか。君こそ僕の禁欲生活を見ていたのに何だって約束を破ろうって言うんだ?」
「だから、それは貴方がスリザリン生に―――」
「スリザリンにだって悪戯はしてない! 君が昨日のことを言っているなら、其れは誤解だよ!」
 そう声を荒げたジェームズは、くしゃくしゃの髪を更に掻き混ぜて、言葉を探すように眉根を寄せた。
「スリザリンのあのチビ、我が寮の可愛い一年生諸君をいたぶってくれていたんだ。たっぷりお礼申し上げるのは当然だろう!」
「年下の子に手を上げて恥ずかしいと思わないの?」
「それじゃあ君があいつを慰めてやればいいじゃないか」
「どうしてそうなるのよ」
 呆れた、と言わんばかりに、リリーは眉を寄せた。ジェームズはジェームズで、だってそうだろう、と―――それはまるで、スリザリン生に向けるように冷ややかな笑みを見せる。
「スリザリン、スリザリンって、何かにつけて君は其ればっかりじゃないか、エバンズ。そんなに心配なら、いっそスリザリン生になったらどうなんだい?」
 見開かれた目は、直ぐに怒りを宿した。だけれど言い返すことはなく、リリーは小さく肩を震わせてうつむく。
「…………ルス……」
「え?」
「ペトリフィカス・トタルス(石になれ)!」
 怪訝そうにリリーの顔をジェームズが覗き込んだ瞬間。そう言ってぴたりと眉間に杖を突き付けられたジェームズは、避ける間もなく彼女の呪文の直撃に遭って、身体を硬直させた。
「馬鹿にしないで頂戴!」
 倒れ込んでくる彼の身体をひょいとかわしたリリーは、怒りに満ちた声で吐き捨てると、ついと顔を背けて談話室を出ていく。
「あーあ、馬鹿だな」
「本当に。あれは言い過ぎだよ、ジェームズ」
「格好悪いね……」
 その背を見送った親友達の呆れ返った集中攻撃には、首席のクディッチのエースも肩無しだ。


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