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我の影に汝あり2





「やっぱり、ハリーはジェームズの息子だな」
 僕とシリウスの学生時代さながらの追いかけっこの最中に眠ってしまったハリーをベッドに寝かせたシリウスが、やれやれと言うように腕を回してそう切り出した。
「おまえの子供であってたまるか」
「そういうこと言ってるんじゃない。あれだけ騒いでいた中で熟睡とは、お前譲りの無神経だってこと」
「ひどい言い掛かりだな。シリウス、お前そんな風に僕を見ていたのかい」
「俺だけじゃないから安心しろ」
 そう言って爽やかに笑む彼は、あちぃ、とシャツを脱ぎ捨てた。無神経はどちらだ。リリーが戻ってきたらどうしてくれようと毒づきながら、僕はシリウスに濡れタオルを放った。そして、視線がある一点から外せなくなる。
「―――シリウス、その怪我」
 左肩から左胸にかけて、斬り下ろされたような傷。それは治りかけだろうか、まわりの皮膚が引き攣れて何とも痛々しい。
「ああ、ちょっとかすっただけだよ」
「手当てしてやるから、そこ座れよ」
「大袈裟だな、只の擦り傷だぜ」
「いいから」
 語気を強める僕に、シリウスは面倒臭そうにソファに腰かけた。
「こんなの、ホグワーツにいた頃はしょっちゅうだったろ」「その度にマダム・ポンフリーに叱られていたっけ」
「俺だけじゃないだろ、それ」
「僕はシリウスほどお世話になっていないよ。ほら、じっとしろよ、今此処にはマダムも居ないのだから!」
 僕は杖をシリウスの躯に近付けた。すると彼は、少し慌てたように僕の手を制する。
「なに」
「治療系呪文は使うな。消毒と包帯だけでいい」
「それじゃあ治りが遅いだろう。おまえが治療系呪文が得意じゃないから、僕がやってあげようと言っているのに」
「傷痕が消えちまう」
 シリウスは苛々と僕を睨みつけて、自ら救急箱を取りに立ち上がった。
「……いつから君はそんなマゾヒストになったんだい、パッドフッドくん」
「俺が何だって、プロングズ?」
 呆れて後についた僕を振り返った彼は、横柄に消毒液と真新しい包帯を突き出してしかめっ面を見せた。
「ジェームズ、おまえを守るために受けた傷痕は、俺にとっては勲章だ」
「……え、」
 僕はシリウスの顔をまじまじと見つめかえす。
「俺の今の生き甲斐は、おまえと、リリーと、ハリーを守ることだ。ジェームズ、おまえを守るためなら、俺は死ぬことさえ怖くないぜ」
 白い歯を見せて笑うシリウスの言葉には、嘘などみじんも伺えなかった。まるで悪戯の計画を立てている時のように誇らしげで、生き生きとしている。
 僕は何も口にすることが出来ずに、彼が差し出す消毒液と包帯を受け取った。








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