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我の影に汝あり(鹿+犬)


 おまえがいなくちゃ意味がない。だからそんなこと言わないでくれ!





 突然の呼び鈴に、僕はあやしていた愛しい我が子をベビイベッドに寝かせ、はいはいと声をあげながらドアの鍵を開けた。その間にもう片方の手では懐を探り、先の尖ったソレを中指と人差し指の間にはさんで慎重に戸を開ける。
「よう、相棒。俺だ」
「あいにくと僕には『俺』なんて名前の友人はいないんでね」
「ばか、あげあし取りをするな」
 軽口を叩きながらドアのチェーンを外し、来訪者を中に招き入れる。
「まだ生きていたな、プロングズ?」
「ふふ、おかげさまで。おまえの方こそ相変わらずの短気で、結構危ない目に遭っているというじゃないか」
「…………誰に聞いた?」
「リーマスだよ。今朝、梟が来たんだ」
 答えてやるとシリウスは苦々しい顔になって、告げ口をした親友への恨み言を溢す。そんな仕草は学生時代に、僕たちの悪戯を教師にばらされた時に見せたものと同じだったから、僕は思わず苦笑が漏れた。
「僕は色々と教えてくれる方が有難いけどな。パッドフットはちっとも話してくれないし」
「何だよ、俺のせいかよ」
「そうは言ってないさ」
 フォローするように肩をすくめて見せたのが気にくわないのかシリウスは憮然としてリビングのほうへさっさと入って行ってしまう。
「おーいハリー、もうひとりのお父さんが会いに来たぞー」
「さっきやっと大人しくなったんだからな。泣かせるなよ」
 ベビイベッドの柵に身を乗り出して嫌に明るい口調でハリーに話し掛けるシリウスを、僕は溜め息混じりにたしなめる。この名付け親が我が息子を両親以上に溺愛していることは、周知の事実だ。
「泣かないよなー、ハリー。君は俺になついているもんなー」
 すっかり上機嫌のシリウスは、とろけんばかりの笑顔を満面に浮かべてハリーを抱き上げた。ハリーはそれが嬉しいのか、あー、うー、としきりにお喋りしながら、シリウスの鋼色の髪の毛を掴む。シリウスが誇らしげに僕を振り返って胸など張ってみせるので、僕は仏頂面を浮かべた。
「こらシリウスっ、僕の息子を独り占めするな」
「聞こえないね!」
 その表情に満足したのか我が親友はえらくご満悦である。こういう時の彼には何を言っても無駄だと知っている。僕は無益な嫉妬を早々に放り投げて、ハリーを離さないシリウスごとぎゅうぎゅうと腕の中に抱き込んだ。
「何だよ、ジェームズ」
「あーあ、僕は幸せ者だよ。愛しい息子と愛しい親友(とも)を、一度にこの腕に抱けるだなんて!」
「ばか言うな、ハリーが潰れっちまう!」
「ばかはお互い様さ、シリウス。ハリーが潰れる前に君を潰しちゃうから」
「こらーっ!」









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