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Novel
フレンチトースト(微裏【セザルノ】

「ねぇ、セザンヌ?」

そう言って背中にまとわりつく彼の声は、気のせいかいつもより若干甘い。

「僕、セザンヌの作ったフレンチトーストが食べたいなぁ」

言うが早いか、私の指に自分の指を絡めてくる。
いつも無意識の手遊びとしてやってくることだが、今のこれは確信犯と見て間違いないだろう。

そんなことをしなくとも、私が彼のそんな声に逆らうことはめったにないのに。

しかし、今日は違った。
言ってみればまあ気まぐれに過ぎないのだが、彼を焦らしてみたくなったのだ。


なおも絡んでくる彼の指を、自らの指を使って強く引き寄せた。
予想しなかった行動なのか、彼の口は半開きになっている。好機と見て、その形のいい下唇に開いているほうの手の指を添えてみる。

その青い瞳をじっと見つめてやると、彼はひどく赤面して言った。

「な・・・なんだよっ、離せバカ!」

「ふん・・・その割には抵抗していないな。
実は嬉しいんじゃないのかね?」

そこで初めて気づいたというように、絡めていた指を解こうとしてくる。
しかし彼の握力が私のそれに適うはずはなく。
しばらくもぞもぞとしていたが、諦めた様子で力を抜いた。

「・・・力強すぎなんだよ、もうっ・・・」

赤面しつつ呟いたその言葉に、その吐息に、その甘い声に、得体の知れない何かがゾクゾクとこみ上げてくる。

「自分から絡めてきたくせに」

「それはっ・・・だって・・・セザンヌが悪いんだぞ」

もう涙目になっている。

「ほう、そんな口がたたける余裕があるとはな。自分がどんな状況に置かれているのかわかっているのか?」

そう言って、唇をなぞる指を首へ滑らせる。
さらに、彼の着ているシャツの襟元へと。

「っや、ちょっとセザンヌっ・・・」

「なんだね?君から誘ったんだろう」

「ちが、違うよっ!!そんなつもりでやったんじゃ・・・」

「そうか。しかし、私には誘っているように感じられたな。
そう受け取られることがあるということをしっかり教えてやらなくては」

ニヤリと笑ってシャツのボタンを外していく。我ながら下品な笑い方をしていそうだと思うと、ますます笑えてくる。

「なに笑ってんだよ・・・笑い事じゃないよ」

睨みつけてくる彼はいつものようにかわいらしい。

「いやすまない・・・君のその無様な格好を見ていると笑えてきてね」

「なっ・・・!!」

「ふふ・・・なあルノワールくん?君が欲しかったのは本当にフレンチトーストだけかね?」

彼の薄い胸板に指を這わせる。

「どういうことだよ?」

この問いが本気でわからないために発されたものだということに半ば呆れるが、そこも純粋な彼のいいところだろう。

「もっとほかの事も望んでいたんじゃないかと聞いているんだよ。
例えば、・・・こんな風に、ね」

彼の方に向き直り、背中に指を滑らせる。
彼はこれを苦手とするのだ。

「っ・・・そんなの、望んでたわけないだろっ」

精一杯の否定。
よく言うな、と鼻で笑い飛ばし、さらに下部へと手を侵入させていく。

「では、私との行為が嫌かね?」

「・・・・・・そうは言ってない」

ツンと横を向く彼は、しかしその仕草がテンプレのツンデレかと言いたくなるほどに似合っていた。

「変態だな君は・・・そうも堂々と言い切るとは」

「んな・・・違うってば!!」

「そうかい」

口角をあげて笑う私の顔を見て、一度こっちに向けた顔を全力でそらす。

そのまま、熱くなっている彼のそれに手が触れようとした時。
唐突に彼は口を開いた。

「こういうのが好きなんじゃなくて!
・・・せ、セザンヌとするのが、好き・・・なんだよ・・・」






――――――――――俺の理性を飛ばす気なのか、こいつは。



数秒黙った私を不審に思ったのだろう、おずおずといった体でルノワールが話しかけてくる。
それをあえて唇ではなく掌で塞ぎ、反対の手で自分の顔をひと撫でする。

今口づけなどしたら、本当の本当に止まらない自信があったからだ。

とりあえず・・・・・・とりあえずなんだ。
あぁ、とりあえず落ち着け自分。

自分自身に言い聞かせ、彼の口を塞いでいる手を離す。

「・・・っ、はー・・・なにするんだよ馬鹿セザンヌ!!」

怒鳴る彼をひと睨みすれば、たちまち大人しくなった。

私も大分落ち着きを取り戻したようだったので、彼に向き直る。

「・・・、・・・・・・・・・!!」

だめだ、何を言ったらいいのか皆目見当もつかない。

「?・・・どうしたんだよ?」

不思議そうにしている貴様こそが原因だ!!
と叫ぶわけにもいかないので、苦笑してごまかす。

とはいえ、このままうだうだしていても仕方ない。
今日はもう彼とやるのは諦めて、本でも読もう。

その旨を多少ぼかして彼に伝えると、何故か唇を尖らせながら了承した。

「何だ、やっぱり期待していたんじゃないか」

くすくすと笑いながら言えば俯くかと思ったのだが、予想に反して私の目をまっすぐ捉えてきた。

「さっき言っただろ?
君とならいつでも大歓迎だよ」

にっこり笑うその顔に、

今度は抑えられなかった。



____________________________________________

「君が食べたいのは、フレンチトーストだけかね?」
なセザルノ。
甘くしようと思ったのに・・・!どうしてこうなった!

それと、Diaryにも書きましたが、感想ありがとうございます!
SSを書く気力のもとになっております^^*
返信できなくて申し訳ありませんが、いつもありがたく読ませていただいています!

むしろpixivでの作品を心待ちにしている立場ですので、今回の感想はとても嬉しかったですぅう(*´∀`*)

またぜひ来てくださいw(


追記:pixivで活動中のテイラさんが、素敵なイラストを描いて下さいました!
   イメージにぴったりで、感動ものですv
   テイラさん、本当にありがとうございました!!
URL(pixiv):http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=29303924

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