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It recalled it5








 昼間は太陽が隠れているに越したことはないが、せめて夜ぐらいは晴れてほしいと、つくづく思うマルコである。
何百年と生きているうちにある程度の日差しでは慄かなくなったが、やはり直接日光を網膜に映すことは、いくらマルコといえどもできることではなかった。
しかし、それでもときどき無性に、空を拝みたくて堪らないときがある。
今は亡き親父や、先に逝ったたくさんの仲間の所在を空に感じるから、だから余計に、憧れるのかもしれない。
または、ただ単に手の届かない場所への憧憬か。

夜空でも星空でも、青海原でなくてもいいから、思い切り空を仰いでみたい。

そんなマルコの羨望を嘲笑うかのように、今夜もまたいつもの如く、空には厚い雲がどんよりと、立ち込めたままだ。


最近、ずっと心が凍てついたままだった仲間の一人が、人間に恋をした。
いや、そもそもあの欲求が恋情なのか愛情なのか定かではないが、どちらにしろ、見初められた相手に危険が近付いていることに変わりはない。

確かに、似てはいるのだ。
マルコが知る、あの日見たあの子の姿に、かの少年は酷く似ている。
だが、それでも、
しかし、

とにかく当の本人、エースに、今の現状でいつもの冷静な判断ができるとは、到底思えない。
バンパイアとは、実に危うい性質を持っている。例えどんなに美しく、愛した相手を慈しんだとしても、感情が深まるほどに、相手を殺したくなってしまうのだ。
愛する者の体を流れる赤い血潮が、他の何よりも芳しく、そして甘美だと、本能で知っているからである。
一度愛したら、求めずにはいられない。しかし、手にかけてしまったら、もう二度と愛しい者には触れることができない。
その悪循環、矛盾。永遠に感じ続ける喪失感と、生きる苦しみ。

今朝アパートではち合わせた少年は、顔を蒼褪めさせながらかなり怯えていた様子だった。
エースが少年に何をしたのか、詳しくは分からないが、しかしあらかた予想はつく。
元々、常から何かを求めているような、そんな雰囲気ではあったのだ。
それにしてもまさか、今更になってあのことを思い出すとは、正直驚いたが…。


いつもよりも僅かに重い足取りで、マルコは夜の街を歩いていく。
表通りはネオンの明かりで華々しく活気づいているが、少しでも裏路地に入ると、途端に世界はひっそりと暗くなる。

巡回というつもりはないが、何か不安な要素があるとマルコはこうして、よく街の中に点々と散らばっている仲間の様子を見に回った。
それがますます自分を長兄たらしめているのだろと思うのだが、もう直そうにも直せない性分なので、仕方がないと諦めている。
本当は一番気になるのはエースなのだが、今朝会って以来ずっと姿が見えない。
それが、実は今最もマルコの胸中を占める心配事だったりする。

何か、早まったことをしていなければいいのだが…。

いてもたってもいられないのだが、自分にできることはただ、こうして街中を見て回ることだけだ。


小さなカジノの細い通りに入っていくと、黴臭い煉瓦塀に囲まれながら、仲間の女たちが何人かで煙草を吸っていた。
皆、マルコの姿を見つけると一様に、「あら、」とか「やだぁマルコ兄さんじゃないの」などと言って、ふわりとささやかに色めき立つ。

「よぅ、みんな元気そうだなぃ。今日もおいたはしてねぇかよぃ?」
「うふふ、する訳ないじゃない、もぉ」
「あたしたちちゃーんと、いい子で親父の言いつけ守ってるわよー?“なるべく食事は人以外で済ませること”」
「“これ以上仲間を増やさないこと”」
「よく我慢してるもんねー」
「ねぇ〜」

白い顔の中に、一際赤い唇が目立って浮き上がっている。
暗い空間に、白い煙がまるで幽霊のようにゆらゆらと立ち昇っていくのが見えた。
白は、何て際立つ色なのだろう。同じくらいまっさらなもののなかでしか、身を隠すことができないなんて。難しい色彩だ。

「ねぇねぇマルコ兄さん、暇ならこれからちょっと付き合ってよぉ。久しぶりに新鮮な血を飲みたいの。ね〜いいでしょぉ?」
「あーずるい!あたしもあたしも!」
「マルコ兄さんあたしもー。目一杯可愛がってぇ〜」
「あー、分かった分かった。また近いうちになぃ。今日はちょっとまずいからなぃ。エースの奴を探してんだ。お前ら見かけなかったかぃ?」
「エースー?あたしはここんとこ見てないわねぇ」
「あたしこないだサッチのバーで一緒に飲んだけど」
「ばっか、マルコ兄さんは今日見てないかって訊いてんだよ?昨日までの話してどうすんのよ」
「あ!それならあたし今日の昼間ちょうど見かけたー。何かねぇ、駅近くのパブの軒下で、マーシャと何か話してたわよー?」

全員こぞって我先にと口を出す女たちに苦笑いを浮かべていると、不意に聞こえた「マーシャ」という名前に、マルコは反応する。
マーシャとは先日、エースの部屋で本人に殴られたのだと、頭から血を流しながら訴えてきた女バンパイアの名だ。
髪の黒い、昔からエースに何かとまとわりついている女だった。
ここのところ、エースが例の少年に心を奪われているので、近頃はまったく音沙汰なしだと思っていたが…。

「何話してたのか分かるかよぃ?」
「うーん、距離があったしはっきりとは聞こえなかったけど、確かエースが“この前は悪かった”とか、“今夜どうだ?”とか言ってたような…」
「…エースが?」

マーシャからなら話は分かるが、あのエースから誘いをかけるとは…一体どういうつもりだ?
マルコの胸には唐突に、不安が充満していく。

「エース何かしたのぉ?」と尋ねてくる女の声を聞き流し、マルコは急いでエースの住むアパートまで向かうべく、踵を返して路地から駈け出した。


「マルコ兄さん?」
「ねー、もう言っちゃうのぉ?!」
「お前ら、今夜はもう家に帰って、外に出るんじゃねぇぞぃ!いいな!?」
「ええ?!何でぇ?!何かあるのぉ?!」
「いいから!!」


あいつ、まさか…!

間に合えば、いいのだが。



























昨日首筋に感じた、冷たい感触が忘れられない。
あの柔らかさからしておそらくあれはキスをされたのだろうが、思い出しただけでも悪寒が走る。


「あらルフィ、もう行くの?」
「うん。配達コース変わったから、早めに行って道順確認しねぇといけねぇんだ」

時刻は、午前二時半である。
いつもなら後一時間は寝ていられるのだが、トラブルとはいえ自分の我儘で配達コースを変えてもらったので、出来る限りのことはしようと、いつもより早く家を出ることにしたのだ。
トレードマークである赤いジャージを着、ルフィが玄関先でスニーカーの紐を結んでいると、トイレに起きてきたらしいナミに、欠伸混じりな声で背後から問いかけられる。
片手間に振り返りながら早口で返答をしたルフィは、その直後立ち上がり、爪先を叩いて「んじゃ、行ってきます!」とナミに向かって笑って見せた。
ナミは、寝癖のついた頭をかきつつ、最後にもう一つ大きな欠伸をして、若草色の寝巻の裾をひらひらとさせながら、「行ってらっしゃぁい、」とふわりとした声で手を振った。


「今日の朝ご飯は久しぶりにチーズフォンデュにするってサンジ君が言ってたから、なるべく早く帰ってね」


それはきっと、ここのところどことなく気分が沈みがちであった、自分へのさりげない配慮だろう。
寒気の立ち込める外とは裏腹に、ほっこりと温かくなった自分の胸の中にルフィは、本物の笑顔でにしし、と笑った。

これだもの、例え血が繋がっていなくても偽物でも、家族というものはとても素晴らしい。

あの男も、もしかしたら孤独で、誰かに傍にいてほしいと寂しくて嘆いているのかもしれない。

そう思ったルフィは無意識のうちに男に同情したが、それでも自分にはやはり関わりのないことだと、家を出て暗闇の街を駆け出した。

今日は、仕事が終われば早朝パーティーだ。
きっと今日は、いつも遅くまで寝ているゾロとウソップの二人もナミに叩き起こされるのだろうし、それを見たロビンが、きっとくすくすと楽しそうに笑う。
それでも、サンジの作る山羊のミルクのチーズはほっぺたが落ちるほど美味しいので、ぶすくれているだろうゾロもウソップも、いつの間にか食事に夢中になっているのだ。
いつも朝は不機嫌なナミもこの日はちょっとにこにこで、あらかた食べ終えたら、ロビンの持っているあんまり難しくない本を、あの深く優しい声で読んでもらって、ソファやカーペットの上でみんなで思わずうとうととするのだ。
ゾロなんかは熟睡してしまうだろうな。ナミも、涎を拭いながら慌てて庭の水やりをしに行くだろう。
ウソップは、もういない母親との懐かしい時間を思い出して鼻をすするのだろうし、ロビンは相変わらず子守唄のような調子でゆっくりと文章を追いながら、みんなの頭を撫でてくれるかもしれない。
そしてすっかり寝入ってしまった自分を見ながら、サンジが苦笑いを浮かべつつ、音をたてないように後片付けをするのだ。

そんなふうに、今日も始まって終わっていくのだ。
きっと。






変更された新しいコースを、渡された地図を見ながら、ルフィはそろそろと進んでいく。
何度か道に迷いかけたが、前までのコースでなんとなく進み方のコツは掴んでいたので、それほど時間をかけることなく終盤まで配達することができた。
時刻はもう朝方近いが、空は相変わらず重厚な雲で覆われていて、朝がやってくる兆しがまったく見えない。
小さな街だが古くからの歴史があるので、街並みは細い道が入り組み、複雑だ。
この辺はあまり立ち寄ったことがないので、ルフィは地図と睨めっこをしながら慎重に、新聞を配る最後の家まで歩を進めていた。
このコース最後の家は、つい二ヶ月前に赤ん坊が生まれたばかりの、若夫婦の家らしい。
聞いた話では、夫は礼儀の正しい好青年で、妻は笑顔の似合う、背の低い可愛らしい女性。子供は女の子で、とても大事に育てられているという。
誰が見ても仲睦まじい家族だというので、ルフィは心なし、新しいその家族の家に赴くことを楽しみにしていた。
普通なら誰もが寝ている時間に訪れても会えることはないと分かっているが、何だかとっても心が弾むのだ。
そういう両親に育てられた子供はとても優しく、心豊かに成長するのだろうな。
自分まで幸せになりそうなその話と、少しの羨ましさに笑みを零しながら、ルフィは煉瓦が敷き詰められた路地を、足音を鳴らしながら跳ねるように進んだ。

小さな街灯しか光源のない街は、ひっそりと寝静まっている。
ここは街唯一の繁華街とも離れているので、本当に静かで、真っ暗だった。
こつこつという自分の靴音しか聞こえない中、あの古めかしい本屋の角を曲がれば配達する家が見えるというところで、ルフィはただならぬ気配を感じた。
一瞬、ぴたりと足を止め、それまで密やかに奏でていた鼻歌も止めて、そっと本屋から大通りを覗いてみる。

背中が、ぞくりとした。

ルフィが今いる場所より百メートルほど向こうには、目的の場所である若夫婦の、真新しい青い屋根の家が見える。
その、手前。おそらく何らかの商店なのだろう建物の、シャッターが降ろされたその前に、あの男が立っていた。
男は、最初からルフィが現れるのを弁えていたような様子で、やはり薄暗い笑みを顔にたたえながら、こちらに向かって佇んでいる。
昨日までと同じく、まるで闇に溶け込んでしまいそうなモノトーンな出で立ちであるのに、何故か妙な存在感があって、ルフィにはその全貌がありありと見てとれた。

慌てて、本屋の影に身を隠す。
何でだ、何であの男がここにいるんだ。
心臓が、口から飛び出てくるのではないかと思うほど、胸がドキドキとしていた。
物凄い、恐怖だった。
何だあの男は、何なんだ、何でだ。

ルフィは、もう一度そっと、おそるおそる大通りの方に視線をやる。
男はやはり、姿勢を少しも崩すことなく、こちらを見ながら立ち尽くしている。
閑静な真夜中の街にぽつんと立っているその様は、実に何とも言えず、不自然なものだった。
逸る鼓動を抑えるために胸に拳をあて、ルフィは一度大きく深呼吸をして、「落ち着け」と自分を宥める。
落ち着け。とにかく、あの男に見つからないように、あの家へ新聞を送り届けるのだ。
これは仕事だ。無理を言ってコースを変えてもらったのに、断念する訳にはいかない。
多分、今いるこの道を引き返してもう一つ向こうの通りに出、迂回すれば、あの男の反対方向から若夫婦の家に辿り着ける筈だ。
幸い、あの男はこちらに顔を向けている。足音も気配も消して、静かに家に近付けば、絶対に気付かれることはない。
そうと決まれば、さっさと実行して新聞を投函して帰ろう。
今日は、帰ったらみんなで賑やかな朝食会を開く予定もあるのだ。なるだけ早く帰って、みんなの顔を見て安心したい。
ルフィは大通りから背を向け、なるべく足音をたてないように気をつけながら、来た道を引き返した。
本屋の通りを抜け、もう一本ある大通りへと歩を進める。
あそこは、古いが活気のある市場が週に一回催され、時折自分もサンジにひっついて行ったりする通りなので、大体位置関係は把握していた。
他よりは街灯の多いその通りに出ようと、小路地から抜け出そうとする。
しかし、またもやぎくりとして、再び体をさっと隠した。

何故か、さっきあの大通りにいた筈の男が、今度は市場の開かれるその通りの、道の真ん中に立っていた。
先程と同じように、男はこちらに顔を向けながら、微笑みを浮かべて佇んでいる。
ルフィの背中に、冷や汗が伝った。
何で、さっきまで、確かにあの通りにいた筈なのに。
あの男も、自分のように迂回してきたのか?それでも、このルートと別の道から来たのでは、どんなに足が早くてもルフィの倍以上の時間がかかる筈だ。
しかも、ということは確実に、自分がここにいることをあの男は知っているということにならないだろうか。
それに気付いたとき、ルフィの喉からは無意識に、ひ、という悲鳴が漏れた。

嫌だ、もう嫌だ、怖い。帰ろう。

恐怖で、自然と体が震える。
力の入らない脚を叱咤し、ルフィは家路につこうと道を戻ろうとした。
そのとき、


「 ルフィ、」


耳に吹き込まれたかのような、そんな小さな歌声のような声音で、自分の名を呼ぶ声が背後から聞こえる。
それが、もう一も二もなく、走り出すきっかけとなった。
音があがることも最早気にせず、全速力で街中を疾走する。
怖い、怖い、怖い!
とにかく、逃げたい、帰りたい!

何なんだ、何なんだあいつは!
まだ、俺を弟だと思ってんのか!?
いかれてる。あれは完璧いかれている!
頭がおかしいんだ、きっとそうなんだ!

ごちゃごちゃと頭の中でそう叫びながら、複雑な街の中を右へ左へと縦横無尽に突き進んだ。


「っ!!」


短い横断歩道を渡り、街のメインストリートへと躍り出る。
すると突然、ずっとそこで待ち構えてたとでもいった様子の男が、またも目の前に現れた。
ルフィがこれから進んでいくだろうその進行方向に、立ちはだかるようにして立っている。
大声で悲鳴をあげそうになったところを何とか堪え、すぐさま身を翻して別の道を行こうと引き返した。

だが、今度はすぐそばの裏路地に入っただけで、その男にはちあう。

愕然とし、それでもまた逃げ出すルフィ。
おかしいだろ、こんなの。絶対におかしい。あの男、ただ者じゃない!


「おいおい、ルフィ。そんなに逃げるなよ。俺だよ、俺。兄ちゃんだ。ちょっと話を聞いてくれよ」


走っている後ろから、声が聞こえる。
自分は息を乱しながら必死に駆けているというのに、その声はまるで、優雅に椅子に落ち着きながら談笑でもしているかの如くだ。


「なぁ、俺の家にはもう新聞を届けに来てくれないんだな。さっきは何か変なおっさんが来てさ、驚いたあまり思わずぶっ殺しちまった。ぷははは、びっくりしすぎだっつーのって感じだろ?」
「…っあ、あんた何言ってんだよ…!追っかけてくんじゃねぇよ!」
「何…って、だってお前がうちに来てくれねぇからさぁ。今日も部屋綺麗に掃除して、せっかくサプライズパーティーに招待しようと待ってたのに、お前、来てくれねぇんだもんさぁ…しょうがねぇだろ?俺たちは、一度感情が高まると、誰かを殺したくなっちまうんだから」


お前にだって、少しは分かるだろ?
さっきから何を言っているんだこの男は。意味が分からない。分かる訳ないだろう!
それよりも、殺したくなるって何だ。殺したって、どういうことだ。

ルフィはとてつもない不安に駆られたが、今はそれどころじゃなくただ我武者羅に、自宅へと走った。
背後を顧みる余裕も、度胸も今はなかった。
あの男が、いつものうっすらとした笑顔で、追いかけてきているような気がして。
実際追いかけられているのだけれども、何だか異様に、尋常ではない恐怖があった。

ずっと全速力で走っていたからか、疲労で足がもたつき視界がぼんやりとする中、とうとうみんなでシェアしている、オレンジ屋根の自宅が見えた。
その途端ずっと聞こえていた男の声も止み、一気に安堵したルフィは、最後の力を振り絞って家族のいる家へと足を走らせる。

家には、キッチンに明かりがついていた。煙突からも、白い煙がもくもくと空に昇っている。
きっと、サンジがいつもよりも早く起き出して、チーズフォンデュの準備をしているのだろう。

もう家は、目前だった。
ああ、よかった。自分は助かる。
これから扉を開け放って玄関に飛び込み、静かに入ってこい!みんなが起きるだろ!とサンジに叱られるのだ。
それに心を撫で下ろした自分は、きっと大きな溜め息をつくに違いない。
それから事務所に電話して事情を話、最後まで配達できなかったことを謝った後、明るくなってからもう一度、改めてあの若夫婦の家に配達をしに行く。
おそらく、ゾロがしょぼしょぼとした顔つきで、文句を言いながらも付き合ってくれるだろう。
そしてあの好青年な夫と、笑顔の似合う妻。そんな二人に抱かれた可愛らしい赤子に頭を下げ、新聞を直接渡す。この家族に会えて嬉しいと、自分の胸には喜びが広がる。
少しばかり世間話を交わして家に帰れば、そのころにはチーズフォンデュの朝食会が、すっかり整っている。
ナミに遅いと叱られ、ロビンにお疲れ様と頭を撫でてもらい、ウソップとじゃらけあう。
サンジの作った、チーズの濃厚ないい匂い。
幸せだ。そんな幸せな家に、帰るのだ自分は。

まるで走馬灯のように、これからのことに思いを馳せながら、家門に手を伸ばす。
ひんやりと、夜の空気にさらされた冷たい鉄の感触が、指先に走った。

同時に、目の前を真っ暗な何かが覆う。
速すぎてそれが何だかよく分からなかったが、最後に口元から伸びた、長い犬歯が見えた。
途端、一瞬で指に感じていた冷たい感触が消え、全身を突風に包まれたような感覚が、ルフィを襲う。
激しい浮遊感の中、微かに漂うチーズのいい香りがした。


世界が真っ暗になった。






















































更新が遅すぎて申し訳ない…。
ちなみに。バンパイアエースは飛べません。運動神経がずば抜けているだけです。←文章で表現しきれなかったことをここで補足(おい)。

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