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終わりのない物語「nipping rain」


※revo様リクエスト。「物語の名前は〜」の続きでロー×ルフィ←エース。


















 あ、という猫の鳴くような小さな吐息を聞くと、馬鹿みたいに背筋がぞくぞくとした。

両膝の裏を抱え上げて、背後から上に向かって抉るように突き上げる。
そうすると少年の全身が電気を流したようにびくびくと波打って、甲高い嬌声が鼓膜を刺激するのだ。

自らもは、は、と息を上げながら、ローは擦り寄ってくるみたいにして自分に頭を預けてくる少年の唇に、自分の唇を荒々しく押し付ける。
瑞々しく熟れた少年の唇は、赤く熱を孕んで半開きにローの舌を誘う。
小振りな柔らかい口を覆うように、ぽつぽつと浮いたピアスホールのような痕が、うっすらと残っていた。
抜糸の痕だ。どんなにローが腕のいい外科医だとしても、どうしてもその痕は残ってしまう。
キスをすると咥内でぷつぷつとその存在を主張するそれは、何だか自分がつけたマーキングのようで、小気味のいい気持ちがした。
少年の方からローの口の中へ舌を忍ばせてきたので、抱き締めてやるようにそれを絡めてやる。
義眼の代わりに眼淵の中へと入れたそれはただの黒い硝子玉の筈なのだが、どうしても熱っぽく見つめられているような気がして、胸が高鳴った。

舌の交わりの中で「兄ちゃん、」と言うので、ベッドの上にその細身を押し倒し、正面から抱き締めてやる。
縋るように腕を背中に回してくるのが愛おしく、そして堪らなかった。
奥まではなとうとギリギリまで性器を引き抜くと、肌と肌の間で糸が引く。
ぐちゃりと音がするそれは、間違いなく二人の細胞が混ざり合ったものだ。
自分たちと同じくして、このところどころに飛び散った粘り気のある体液の中でも、たくさんの自分たちが繋がり合っている。
それほど奥でもない個所にある突起目がけて腰を振ると、女のような声を上げて少年は悦がった。
ぐるぐる、飲み込むほどの勢いでローのペニスを肉の壁が取り巻いていく。
華奢な肩と腰をしっかりと抱え、息つく間もなく律動を繰り返せば、視覚を失った少年は、その腕の中で泣きじゃくる子供のように喘いだ。
瞳孔も水晶体もない仮初の瞳は、体のいずこからか溢れてくる涙に濡れて、暗闇の中で光を放っている。
見えないながらに、少しだけえづきつつも甘えるように胸板に頬擦りをしてきた。
本当に猫のようだ。
可愛い。これが自分だけのものなのだと思うと、更に可愛く思える。

「はっ…ぁ、う…!ああっ、ぁ…にぃ、ちゃん…兄ちゃんっ…!」
「何だ…ん?どうした麦わら屋…気持ちいいのか?ん?…っ、」
「んっ、くぅ、ふ…んぁ、あっ!ぁ…あ、ぁああ、は、ああ゛っ!あ、」
「ああ……不安なのか…。そうか、うん、可哀想にな、麦わら屋…」

見えない、暗い、怖い、と言って空に腕を彷徨わせる少年を、ローはそっと抱き締めてやる。
盲目の相手に孤独感を味あわせないためには、体温の触れ合いが一番有効だ。
上からすっぽりと体を覆うようにして少年を抱き締め、脚を脚で絡めてそれでも尚腰を動かすと、すっかり色の抜けた白い肌が軽く仰け反った。
ローの腹がじっとりと湿り気を帯びる。もう三度ほど精を吐き出した少年の幼いペニスが、しとどに涙を流して震えていた。
可哀想に、可哀想にと囁きながら、少年の体を宥めるように撫で擦る。
はぁ、はぁ、はぁ、ああ、
喘ぎの中に嗚咽が聞こえた。
大丈夫、俺はここだ。

「大丈夫だ麦わら屋…ほら、お前の兄ちゃんはここにいる…。ちゃんとここにいるだろ…?安心しろ、俺はあいつのように、いなくなったりはしない…」
「は、は、…は…ほん、とに…?ほんとに…っ?」
「ああ、本当だ…。お前を手放すなんてこと、できると思うか?」
「っ…ずっ、と…?ずっといる…?ずっとここにいる…?ほんとに…」
「いる。いるさ、ほら。今だって、お前の中にこんなに奥深く入ってるだろうが…。ほら、どうだよ、熱いだろう?俺の…兄ちゃんの体は熱いだろう?ほらっ、」

ぐじゅっ、じゅぷっ、
中に埋めた性器で突くと、小さな体が小刻みに痙攣した。
汗の滲んだ真っ赤な頬が、弱々しく横に振られる。

「くぅっ、ん!…あ、ひ、」

そうして、少年の腰と中が激しく震えたかと思うと、ローの腹にある花芯が熱を放出した。
もう殆ど透明だったが、幼い容姿が愉悦に生々しく歪む。

「ぁ、あっ、ぁあああ゛っ、ひ、ぃいっ、ぁ…!」
「っ……ああ、麦わら屋っ…!」
「…ゃ、やだっ…嫌だ、出て行かないでっ…!離さないでくれよっ、兄ちゃん…兄ちゃん、兄ちゃん、兄ちゃんっ…!」
「…馬鹿な奴だな…離さねぇって言ってんだろ、麦わら屋ぁ」
「嫌だ、嫌、行かないで…一人にすんなっ…置いて行くな、ぁ…!嫌だっ、嫌だぁ…!」


兄ちゃん、
泣きながらそう一生懸命にしがみついてくる少年を、ローはその度に手厚く宥めすかしてやる。
濡れた体を不安そうに震わせながら自分の肩口に頬を当てる少年の、滑らかな黒髪を指で梳きながら、ローは誰にともなくうっそりと笑った。

これだから、人間の脳は素晴らしいというのだ。
外科的な処置を施さずとも、こうしていとも簡単に、様々なものを修正できるのだから。
まぁ、その代わりに時間をかけた一手間が、どうしても必要だけども。
その過程すらも楽しいのだから、まだまだ、まだまだ、これからだ。
まだ、壊すところはたくさんある。






























「お、その足音は熊だな。熊のやつ。なぁ熊、ローは?ロー知らねぇ?」

ハートの海賊団にいる白熊、ベポは、人語を喋る獣としていたく麦わらのルフィに気に入られている。
少し前まではそれが素晴らしい特権のような気がしてとても嬉しかったものだが、今となってはその特権も、自身の命を脅かす起因以外に他ならない。

最近まで麦わら帽子を愛用していた少年は、今では真っ黒な頭に何も被せないまま、日々を淡々と過ごしている。
以前、この海賊団船長に眼球を奪われてしまった彼は、それでも何を気にするでもなく、他の受容器官の使用だけで船内を自由気ままに歩き回っていた。
さっきまで甲板の上でぼんやりとしていたらしい少年は、たまたま自分の目の前を横切ったベポの気配を耳ざとく察知し、嬉しそうに「抱っこしろ」と腕を差し伸べてきた。
ベポは困り果てながらも、周囲に船長の姿がないことを確認して、恐る恐るその細い胴体に手を回す。
そのままひょい、と持ち上げると、少年は幼子のようにきゃっきゃとはしゃいだ。

「麦わら…、こうして抱っこされるの楽しいの?」
「おお、楽しーぞ!見えねーけど、ふわってして空飛んでるみてぇだ!」

ただ抱き上げただけで喜んでもらえるならば言うこともないが、人工的な眼光で満面の笑みを浮かべている少年というのは、かくも不気味だ。
何故、こういうやり方をとるのか、自分の船長の考えとはいえ、ベポには理解ができない。
楽しそうに笑う少年の体を上下に緩く振ってやれば、彼は異常なほど笑い転げる。
ただ何となく腕を上げ下げしていると、視界の端にこちらの様子をはらはらと窺っている、他のクルーの姿が見えた。
こんなところを船長に見られたら、きっとひとたまりもないだろう。手酷い叱咤を受けることは、目に見えている。
ただ、ベポだけは比較的、容赦されているようだった。
自分がこの少年のお気に入りであるということもあるのだろうが、人間の男ではない、というのが、恐らく最大の理由だろう。
ベポの最近の仕事は、専ら船長に謂われのない暴力を受けるクルーを、それとなく守ることであった。
この少年と出会ってから様子がおかしくなってしまった船長を思うと、いたたまれない気持ちになる。
けれども。
だからといって、この少年を恨むことは、どうしてもできないでいる。
この麦わら帽子の少年に罪はない。この子もまた、被害者だ。何の、と訊かれても、はっきりとした答えは出せないけれど。

「なぁ熊ー、ローはどこ行ったかなぁ?昼飯食ってから見つからねーんだよ。ずっと離れないって約束したのに、どこにもいないんだ。ローの奴。ローの、やつ、」
「…麦わら?」
「離さないって、言ったのに、」
「………」

何だろう、とベポは思う。
兄、この場合の「兄」というのは、要するに麦わらの本当の兄、という意味だけれど(とはいえ血は繋がっていないようだけれども)。
その兄が実は生きていたらしいと知った当時、この少年は崩れに崩れた。
彼の自我が崩壊した理由は、とてもついていけないほどの目まぐるしい現実のせいだけではなかったのだけれど、むしろそれは多分に、これでもかと少年の心身を痛めつけた自分たちの船長のせいだったのだけれど、それでも今の少年よりは、過去のあの凄惨な状態であった彼の方が、まだ幾分かまともに見えた。不思議なものだけれども。
一見普通に微笑みながらも、どこか歪んで見えるその表情に、ベポは小さく「ぁ、」と声を出した。
何かが捻じれている。
きっと手の施しようもないほどに。


「…キャプテン、なら…」
「俺はここにいるぞ、麦わら屋」


背後で急に声がしたので、思わず肩が跳ねた。
空気にのそりと圧し掛かるような雰囲気を持つその声は、ベポの体を貫いてそのまま少年に巻きついていく。
麦わらは、聞こえたその声に安堵したように破顔すると、「ロー!」と叫んでその声の方向を頼りに、ベポから離れてその場へと駆け寄った。
両手を突き出してふらふらと船長の元まで近付いていく少年は、刺青のびっしりと入った手に腕を取られたと分かると、「にしし、」と笑ってローの体にしがみつく。
そのままローは、少年の耳元に何事かを囁いて、その肩を抱いて船室に向かおうとする。
踵を返す際、ローはベポのことをちらりと一瞥した。
影の浮かんだその瞳には、じとっとした負の感情がありありと読み取ることができる。
ベポは、今麦わらの相手をしていたのが自分で本当によかった、と思った。
それならば少なくとも、この船から死人を出す結果にはならないからだ。
だがあまり安心しきっていると、自分ですらも命が危ういかもしれない。
近頃は、自分と関わった船員がその場で船長に斬りかかられたとしても、麦わらも顔色一つ変えることがなくなってしまった。
見えないから、それも無理のないことなのかもしれないけれど。
いや、あれはやはり、壊れてしまっているのだ。
自分たちの船長に、いいように壊されて再構築されてしまった。
もう、以前のような麦わらではない。
それを思うと、ただただ心苦しい。
不憫な境遇の自分たちに対しても、自らの船長に忘れ去られてしまった麦わらの仲間に対しても、そういう形でしか愛情を表現できない、自分たちの船長に対しても。
ベポは、重い重い溜め息をついた。
それを合図にしたかのように、影で成り行きを見守っていたクルーたちが、ベポの元に集まってくる。

そのときだった。


上空から、突然火の雨が舞い落ちてくる。
それが最初何なのか分からなかったが、雨だと思ったものが跳ね上がるほど熱くて、これが水ではないことを知った。

「ぅあっちぃぃぃいいっ!!」
「ぎゃぁああ何だコレェッ!」
「火っ、これ火だ!火のつぶてが上から!何故ぇぇ!?」
「だぁあ船が燃えるっ!どうしよう!キャプテーン!」
「ダメだよ!今キャプテンは、麦わらと部屋に…」

「麦わらって言ったか?今」


小さな火の雨が降ってくる中、その声の主は、ズダン!と派手な音をたてながら、燃え盛る甲板に降り立ってきた。
見覚えのあるその姿を見て、ベポを始めとするハートの一味は、一様に息をのむ。


「よぉ…返してもらいに来たぜ?俺の弟をな」


胸に大きな傷痕を残してはいるが、特徴的なテンガロンとそばかすを頬に浮かべたその男は、紛れもなくあの白ひげ海賊団二番隊隊長、火拳のエース本人であった。
この男こそが、件の麦わらの少年の、義理の兄である。
一度囚人にまで身を落とした筈のその姿には、そんな名残などもう微塵も窺えない。
火拳の背後には、やはり白ひげ一味の幹部である、不死鳥のマルコが青い炎の羽をおさめながら空から現れた。
たった二人だけの敵襲だというのに、妙に圧巻で威圧感が半端ない。
びりびりと肌を突き刺すような殺気に、ベポなんかは体中の毛が逆立ってしまった。

「ったく、エースお前よぃ、人を乗り物代わりに使うんじゃねぇよぃ」
「悪ぃ悪ぃ、でもよー、俺こう見えても病み上がりな訳だし、もしものときのために少しでも体力は温存しておきてぇんだよ」
「何が温存だぃ、さっき手加減もなく思いっきり先制食らわせたくせによぃ」
「ははは、そりゃそうだろぉ」

爽やかそうな笑顔から一変、鋭い目線がクルーを突き刺す。


「弟を助けてくれたことにゃ感謝するが、その後の対応がいただけねぇ。あいつを監禁したまま、航路から外れてまで雲隠れなんざしやがって…。俺の弟を返せ。今、すぐに!さもなくば全員ぶっ殺すぞてめぇら!」


ぼぅっと燃え上がった炎に慄き、船内中がどよめく。
ベポは何とか恐怖を振り切って、「待って!」と火拳に向かって肉球を広げて見せた。
釣り上がった火拳の眦が、すう、と細められる。
慌てふためく自分を庇うようにして、不死鳥の男が「ちょいと落ち着けよぃ、」とその背中を軽く小突いた。
あああ、ありがとうございます!
威力を失った炎を見て、ベポは心の中だけで不思議な髪形をした男に両手を合わせた。

「む、麦わらなら、元気です…ちゃんと無事です!だから…その、乱暴は、止めて下さい…船を燃やさないで…大事なんだ」
「………」

火拳は、おどおどと言葉を紡ぐベポの要求を飲んだのか、火に変貌していた体を普通の肌に戻した。
だが刃物のような視線はそのままに、低い声で「弟はどこだ」と言う。
クルーたちは、目下のベポのファインプレーに喜び勇んだが、このまま案内しようにも、後々の船長の制裁が怖いと、どうするべきか互いに目配せをし合った。
船長の自室にいるであろう麦わらの元へ火拳を案内し、よしんばそれでとりあえず炎の脅威から逃れられたとしても、その後に待ちうけているものは、静かに怒り狂う我らが船長の存在である。
どちらに転んでも、行きつく先は地獄。
ただ、火拳自身もクルーには邪心がないと分かっているのか、そこまで追求する気も白ひげ一味の二人にはないらしい。
ベポは、そこでようやく両手をおろした。

「弟は…ルフィは、どこにいる。俺を助けるために、相当な傷を負ったと聞いた。早く会わせてくれ。返してくれ、早く…!」
「わわ、わ、分かりました…」
「!?、ベポお前…!」
「大丈夫、僕が案内するよ。キャプテンも僕なら、きっと殺すまではしないと思うから…」

はっきり言ってそんな確信はないが、確実にこの中では自分が一番案内役としては適役だろう。
ベポは、神妙な様子で佇んでいる火拳に「こっち、」と向かうべき方向を指で示すと、船長室に足を向けた。
火拳が、その後に続く。
不死鳥は、「俺はここで待ってるよぃ」と言って、甲板に残ることを選んだ。
それに少し、不安を覚える。
この麦わらの兄は、自分の弟の身に起きた出来事を何も知らないのだ。
見た目としては通常に近いとはいえ、弟の目が義眼と知ったら。過去、口を縫い付けられていた事実を知ったら。何度となく殴られ、蹴られ、挙句の果てに組み敷かれて、精神の崩壊を来たし、今ではすっかり自分たちの船長を兄と思い込んで、しかも依存していると知ったら。

どんなことになるんだ、一体。どうなってしまうんだ。














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