汝王
３年前のメモには
「ここから出して下さい」
と書かれていて
今では口に出せない
助けて
という文字に
今では表現出来ない
怒りや
嗚咽や
悲鳴を
見た
こんなに外は暑いのに
自分を考える時は
息が
冷たくなってしまう
吸い込んだ端から
食道を掻いて
シロップをかけられるまでに
砕氷の浸食は
速く
ぼくを埋めた
地下は
容易く発見された
あなたに
一緒に死のう
と言わせたぼくは
梅雨時期の飴に
貫かれれば良かったのだ
貫通したブドウ糖を
蟻が運び
やがて
地下には
女王が君臨するだろう
あれから３年が経って
ぼくは弱くなったけれど
今は落ちている飴を拾って
食べる
愚かさを知って
あれから３年が経っても
ここから出たいと想うけれど
息も冷たいけれど
あなたたちをゆるせないけれど
もう
あなたは死にたがらない
これから先
息をしなくなるまで
ぼくのうえに
君臨
して
にどと
溶け出さないように
見張り続けるのだから
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