第三訓06
新八side.
「名無し行っちゃったアル…」
「大丈夫だよ神楽ちゃん、田中さんは強い人だから」
「…………お前が囮になれば良かったのに」
「…あれ、気のせいかな
凄く辛辣な言葉が聞こえたんだけど、」
「………………………………………………ちっ」
「オイ聞こえてるからな!その舌打ちハッキリと聞こえてるからなぁァァ!!」
「うるさい男は嫌いネ、お前はさっさとこれからのことを考えておけばいいんだよ」
「いや、ナチュラルに酷いんですけどこの子。扱いに差がありすぎるんだけど、
……まぁ、取り敢えず故郷に帰りたいんだっけ?
だったらターミナルへ行かないと」
銀さんと田中さんが居ない今、神楽ちゃんを護れるのは僕だけになってしまった。
何とかして神楽ちゃんを無事に送り届けなきゃ。
何かいい方法は無いかな…。
「あ、これなら…!」
*****************
ガダッ
「…臭いアル」
ゴトッ
「しっ!バレちゃうよ」
ガダッ
「…何かぬめぬめするヨ」
ゴトッ
「我慢だよ、神楽ちゃん」
ガタガタガダッ
「もう無理アル我慢できないネ!!
お前バカですかァァ!?
だからお前は新八なんだヨ!!!」
「どういう意味だゴルァ!!だって仕方ないじゃないか、これしかいい方法が無いんだから」
「ゴミ箱に籠ることの何処がいい方法ネ!
めっさ長い車でめっさ強いボディーガードが送り届けるって話しはどうなったアルか!!」
「なんの話だよ!そんなハイスペックな事できねーよじり貧なんだようちは!!」
「けっ、これだから貧乏人は……!」
「お前が言えた義理かァア!!!」
なんなんだよこの貧乏娘は!田中さんがいなくなったとたんにこれだよ。
いや、確かに滑って臭いけれど…
「田中さんは良いとして、それにしてもアイツ…本当に帰るなんて、薄情な奴だ」
「気にしないネ、江戸の人皆そうアル。
名無しが特殊なだけヨ
人に無関心、それ利口な行き方
名無し達のようなお節介の方が馬鹿ネ。」
どこか冷めたように言う神楽ちゃんに、何も言えなくなる。
「でも私、そんな馬鹿の方が好きヨ
お前は嫌いだけどな」
「アレ?また標準語で辛辣な言葉が聞こえたような…」
私メガネでうるさい男嫌いなんだよね、と言い捨てる神楽ちゃんに若干の殺意を覚えつつ、無理矢理飲み込んだ。
「ねぇ、神楽ちゃん
そういえば田中さんにお礼言ってたけど、何かあったの?」
思いきって、聞いてみた。
「うーん、一言で言うとタダ飯食わせてもらった仲アル」
「え、そうなの?」
姉上は頻繁に田中さんに会っているらしく、よく話しは聞いていたけど…
まさか神楽ちゃんと親交があったなんて、
「…羨ましいアルか?」
「羨ましい…って言うかなんと言うか、あの人がどんな人なのかいまいちよく分からないからさ」
気になっただけだ、と続けたかったのに言葉が出なかった。
『…羨ましいアルか?』
正直なところ図星かもしれないと、一瞬頭をよぎった。
一番始めに知り合ったのは僕なのに、姉上や神楽ちゃんの方が仲がいいなんてさ…。
姉上は度々あって食事したり、神楽ちゃんは名前を教えてもらったり
それに比べて、僕は……
「オイ新八、しーんーぱーちッ!!」
「っな、何!?」
「急に何も言わなくなったから死んだと思ったアルよ。あと駅に着いたネ、ほらさっさと乗り込むヨロシ」
「あ、ああ…そうだね、」
いつの間にか駅に着いていたんだ…。
神楽ちゃんの不審そうな眼差しを苦笑いで躱しつつ、ゴミ箱から体を出そうとして引っ掛かった。
「…どうしよう、抜けない」
(田中さんは大丈夫かな…)
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