第一訓01
よく晴れた青空
雲ひとつない昼下がり
「静かで落ち着くなぁ…」
此処は江戸とは違い、澄みきった水と空気、そして何より空には異郷の船はなくさらに言えば、天人などという異国のものもいない
つまりはど田舎なのだ
「この空を眺めるのも、暫くお預けか…」
名前は旅立つ準備をしていた。
それは一週間前に遡る
ある日、父様から一通の文が届いた…私宛に
―名前、江戸に来ないか―
たったこの一言から全ては始まった。
こんな事言われても普通行かないよ、つうか絶対に行くもんか!!
いままで父様を信じてみて、嫌な目に合わなかったことなど一度もなかった。
『ヤバい薬運ばさせられた事もあったし、恐いおじさん達に追いかけられた事もあったな』
幕府の高官だか何だか知らないけど、実の娘に迷惑かけないでほしいよねマジで。どうせ今回もろくなこと無いんでしょ、こんなもの無視む…し?
「あれ、何この分厚い封筒………まさか」
慌ててひっくり返して見ると、バサバサっと大量の諭吉が出てきた。
『まさか札束送るなんて、うちの親父何考えてんだろ』
厚みから考えて、50万は軽く超えているようだ。
ごめん父様悪口言って、気が変わったよ私
やっぱり行かないのは申し訳ないので、名前は行くことに決めました。
あれ、作文?
最後に姉に挨拶をしたら、荷物を背負い玄関へ歩き出す
「いってきます、姉上」
さあ、華のお江戸へ!
―――――――――
――――――
ーーー
「もうやだ都会怖いよ、田舎に帰りたい今すぐ帰りたい、おうち帰りたいよォォォ!!」
周りの痛い視線なんか気にもできない程、名前は独りホームシックに浸っていた。
家を出てから今まで、散々な目に合いまくっていたからである。
電車乗り間違えるし、怖いお兄さん方に絡まれるし、通勤ラッシュ真最中の駅で財布を落とすし(死に物狂いで探したのは記憶に新しい)
やはり親父が絡むとろくな事がない
『だから行かない方がいいって言ったじゃん。どうして現金なんかに負けたんだよ名前!』
と、先程までの自分に酷く後悔していたら、到着のアナウンスが流れた
―間もなく、江戸、歌舞伎町に到着します―
(これ以上嫌なことを起こさないでください父様)
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