第三訓05
往来を堂々と闊歩する神楽君と、若干引き気味な新一君を連れて私達は駅へと続く道を歩いていた
「あの…名無しさん、なんスか、この衣装…」
「始めに言った通り変装だよ、これで君も立派な真選組隊士だ!」
「おらおらおらァ!!どけアル、
選真組のお通りじゃあァァァ!!!!!!」
「真選組だから神楽ちゃん
…良いんですかこんなことしても、あと名無しさんなんで瓶底眼鏡にちょん髷被ってるんスか!?」
「オシャレだよオシャレ、まぁ見つかったらコスプレとでも言っておけばいいんじゃない?」
黒い上着に黄色のライン、細部まできっちり再現したこの隊服。上下フルセットでお値段なんと12800円とお手頃価格!!
通販みたいに言ってみたけどコレホントに再現度が高いんだよね、無駄に!
バズーカに刀のオプションも着けたし、完璧だね!
真選組効果は意外にも絶大らしく、道行く人はみんな道を空けてくれた。さっきのパンチパーマヤクザも私達に気付かないままそそくさと逃げてくれたし、なんかもう万事解決的な?
「土方さん、なんか見覚えのねぇ隊士がいるんですけどいつ入隊させたんですかィ」
「あぁ?新しく入隊させた覚えなんざねぇよ
…なんだあいつら」
「ちょっちょっと名無しさん!?本物の、しかも副長と一番隊隊長が…!!」
「あー仕方ない
新一君は神楽君を連れて逃げなさい、僕は囮になるから」
「待つネ、それじゃあ名無し捕まってしまうアル!!!!」
「僕はいいから神楽君は帰ることだけ考えなさい。
必ず送り届けるんだよ…っと!!」
「嫌アル!!私も「神楽ちゃん!!」…ぜってー怪我するなヨ」
二人の服を渡して私はモノホンの隊士達の前に出ていった
「オイてめぇ何処の隊所ぞく」
「申し訳無いでござるゥゥゥ!!命だけは、命だけはお助け下されェェ!!!!」
↑精一杯のダミ声
「ええええええええ!!!!ちょっ、てめっ何でいきなり土下座ァ!?」
「オラ最近真選組に入隊したばかりの、たっ田中伊右衛門と申しますですたい。土田舎から上京してきたばっかどすて、なんも分からんとでさぁ」
「時代錯誤な上に胡散臭い名前ですねィ、あと京都弁か博多弁か東北弁か江戸っ子口調かどれかに統一しなせェ
…土方さん、アンタ必死に土下座してる奴に切腹させるんですかィ?あんまりでさァ!」
「ちょっと待てェェェ!!!俺がいつ死ねって言ったァ!!つーかお前、土下座は止めろ」
やっぱり往来のど真ん中での土下座は効き目大のようだ。それに栗色の髪の人がこちらの味方になってくれたみたいだし
よっしゃ、このまま押しきるぜ!
「もう二度と致しまへんせんさかい、
どうか…どうか最期に田舎の母ちゃんに一目会わせておくんなんしィィィ!!」
「だから大阪弁か遊郭言葉かどっちかに統一しろっつってんだろ、
土方さん、俺からも頼みやす」
おぉっ副長らしき人の瞳孔が死ぬんじゃないかってくらいに開いていく…!!
そうだよね、歩くだけで避けられてる真選組だもんね、イメージさらに悪くなしたくないよね
さぁ私を逃して事なきを得る?
それとも往来のど真ん中で土下座してる奴に切腹命じてイメージ落とすのか!?
「だからさっきから切腹なんて命じてねぇだろうが……ったく!とりあえず見逃してやるからさっさと見回りに戻れ」
勝った…私の完全なる勝利!!
「有り難き幸せ!!オラ今まで以上に頑張るぜよ、失礼致しましたでござる!」
「だから土佐弁か武士かどっちかに統一しろィ…って行っちまいやしたね、あいつ」
「…ああ、しかし田中伊右衛門なんて名前聞いたことねぇぞ」
(私って、意外と変装の才能が…!?(違っ))
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