[携帯モード] [URL送信]
第二訓05


何時からだろう

気づいたのは家から出てすぐ、つまり最初からってことになるのだろうか













誰かが私を付けてる。ずっと、
















予定の時間より少し遅れてしまった事への若干の焦りと、後ろからずっと付いてくる何かの存在に対する恐怖が名前の足を急がせる



『まずいまずいまずい…どうしようどうしよう、泣きそうなんですケド

どんだけ走っても走っても付いてくる…というか半夜兎の私に追い付くって、どんな脚力してんだよ!!』




半月かけてやっと覚えたばかりのこの街を覚束ない足取りで駆け抜ける


恐怖で歪んだ視界の右側に、約束の場所が見えた。














「―っあれ、妙さんがいない、もう先に入ってるのかな」


確認してみると腕時計は丁度
12時5分


おかしいな、まだ来てないとか?それともまさか後ろのあいつに…!


















そう思っていたら、背後で何かが揺れた、



素早く振り返る


すると3M先の電信柱の後ろにいた誰かもこちらの動きにあわせて隠れた





「え、女の子…?
ていうか此処からでも瞳孔開いてんのが見えるんですけどォォォ!!!!
尋常じゃないよアレ!何かぶつぶついってる、こっちみて何か呟いてるぅぅ!?」



遠目で見ると少女は真っ赤な髪に、真っ赤な服、真っ赤な顔に

一面の赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤…


あれ、真っ赤なんですけど
すんげぇ真っ赤なんですけど




「なにあの人ヤバイよ!!!なんか恐いよおそろしいよ!!

うわぁ知り合いだと思われたくないなコレ…仕方ないっかくなるうえは!

…あの、そこの」



「ごめんなさい遅くなって!もう一度買い直してたら時間が」


うわぁあぁああ!!!!!!!
来るなこのストーカーっ!!


ってあ゛れ゛……たっ妙さん?」




恐る恐る振り返ると、そこには仏の様な微笑みを携えた妙さんが









「ストーカー?誰がですか、私?え、私なんですか?そうなんですか、名無しさんには私がストーカーに見えるんですか、

……で、どの辺りが、なんです?《誰がストーカーだあ゛あ゛ん?私をクズなんかと一緒にしてんじゃねーぞ、殺すぞテメェ》」



いやぁあああああああ!!
マジ何言っちゃってんの名前!!

あと台詞の訳がおかしいよ!最後なんか殺すぞテメェって、本音駄々漏れじゃんかよォォォ!!!!!

やべぇ妙さんマジギレしてるよ!
いやだ、ペスの二の舞になるのだけはいやだ!!




「いやっ妙さんの事ではなくてデスネ、ちょっと最近誰かに付けられてるキガシテデスネ、スコシビビッテマシタ」



「あら、そうだったんですか?
ストーカーだなんて悪質な人もいるんですね



……夜道には気を付けてくださいね」




にこりと微笑んだその顔は、何故か背筋が凍りつくほどの冷気を放っていた



「はっはい以後気をつけマス…」



夜道ってなんだァァァ!!!!私一度も夜に出るなんていってないよ!?どういう意味だよオイィィ!?




ガタガタ震える身体を引き摺りひとまず私たちは店に入ることにした













―――――――――
――――――
ーーー



「それでね、その時新ちゃんが…」



料理が来るまで妙さんの話に相槌を打っていたけど、どうしも集中できない

何故ならば窓の外からさっきの赤い少女がこちらを未だガン見しているからである


「…あそこにいる真っ赤な少女がこちらをずっと見ているんだけど、妙さんの知り合い?」


「え?何処かしら…あらどこにもいないわよ、

名無しさん今日疲れてるんじゃないかしら、大丈夫?」



そんなバカな!?

慌てて窓の外に顔を向けると、そこには往来を行き交う人々しか写っていなかった


「うーん、確かにいたんだけど…なんか恐くなってきたな」


「あら?あの子…ほら手前の電柱の影にいる子」


ふと妙さんが窓の外、最初に彼女を見つけたより少し先の電柱を指差した















いた、真っ赤な少女






















「なんかこっちを見てぶつぶついってるみたいなんだけど、どうしよう」


「そうね、放っておいたらそのうち向こうから声をかけてくるんじゃないかしら?

とにかく食べましょう!」


不気味な熱い視線に包まれながらも、運ばれてきた料理に何とか口に運んだ


















―――――――――
――――――
ーーー



「今日はお話しできてとても楽しかったわ、またお昼に行きましょうね!」


「そ、そうだね…」


私は胃に穴が開きそうだったけれど

















食事中も、真っ赤なあの子は私達…主に名前に強烈な視線を送っていた

そのお陰でいつもの半分も食べられないでいたのだ

いやむしろ食べたらすぐ吐き出しそうな勢いである






いつまでも真っ赤な少女をそのままにしておくわけにも(名前の精神上)よくないので、コンタクトをとって話してみることにした





























「……いい加減隠れてないで出てきたらどうかな?警察に電話とかするつもりは一切ないから」



暫く黙っていたがついに観念したのか、例のあの子がガサガサっと植えてある園芸用の木の影から出てくる


名前は静かに構えの体勢をとった…が、












「―っべべべべっ別に私おぉ前の事なんか見てねーアル!!

自意識過剰ネ!!!!」



透き通るような肌
吸い込まれるような蒼い瞳
それに真っ赤ではなく太陽のように明るいオレンジがかった朱色の髪

そしてなにより人形のように整った顔

可愛らしいこの子が、誰もが羨ましくなるようなこの子が、さっきの真っ赤なストーカー…?

なんかイメージが全然違うんだけど




「……なんで君みたいな可愛い子が、僕なんかを

…もしや僕に付け回したい程の怨みでもあるのかい!?」


「なっ何の話ネ!?私はただ、ご飯たかろうと思っただけアル!!別にお前の食べっぷりが見たかったとかそんなんじゃねーヨ!!」


「…別に僕そこまで聞いてないんだけど」


「なっ…お前私を嵌めやがったな!?」


「勝手に墓穴を掘ったのは君だろう」




真っ赤な少女、もとい飯をたかりに来たというこの子は神楽というらしい

出稼ぎに来たけど、雇ってくれる所も無いらしく、飢えに飢えていていたそうな

それでこの前私が大量に食べているところを見て、つけ回していたらしい


…なんだ、そんなにビビることなかったじゃん!




「はぁ奢ってあげるからもう付け回すだとか見つめるのはやめなさい、呪われそうだから」


「だからみつめてないネ!
……でも、ありがたくおごられてやるヨ

さっさと店入るヨロシ!!」


「りょーかい、神楽君!」



ん?なんか平和的な流れができてるけど、そういえばこの肌の色私と同じ夜兎族だ

え゛夜兎ってめちゃくちゃ食べる…



















(おかわりヨロシ?)

(ちょ、神楽君!?これで五杯目だから!食べ過ぎだから!!)

(育ち盛りに食うなという方が無理アル、あ、店員さんこれ追加で持ってくるネ!)

(…あぁ、懐が極寒の地に)

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!