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side:美咲



倉庫内に響くのは、痛々しい音となじる声。


人だかりに囲まれた瑠衣が、その人達に今何をされているのか、遠目でもわかりました。




「君の心が苦痛に歪む顔も、一段とそそるね」

戻って来た夏蓮くんが、僕の頬を指でなぞりました。

「やめさせて下さいっ!瑠衣をこれ以上傷つけないでっ」


僕は必死に夏蓮くんにすがり付きました。

夏蓮くんは僕の手をそっと取ると、耳元に顔を寄せて甘く囁きました。


「そんな顔しても逆効果だって、わからない?君はここで、金城がなすすべもなくやられていく姿を見ていればいいんだよ。」

「そんな…そんなのって…」


酷すぎます。

大切な人が目の前で傷つく姿を、ただ見ているだけなんて僕には出来ません。


僕は意を決して、ギュッと拳を握りました。



「本当は、暴力は嫌いなんですけど…」


僕は肩を掴んでいた男の人の手を掴むと、反動使ってその大きな体を投げ飛ばしました。

ドンッと大きな音を立てて仰向けに倒れた人は、一体何が起きたのかわからないといった顔で固まっています。

僕の横では、表情をあまり変えない夏蓮くんでさえもが、目を剥いて僕を見詰めていました。

そんな夏蓮くんに目を留めることもなく、僕は人だかりの方へと駆け寄って行きました。







「――僕の大切な人を傷つけるのは、許さない。」

瑠衣を囲んでいた人達は、後ろを振り向いて僕に視線を移しました。


「なんだ〜?このチビ」

「知らねー。確か銀様が連れてきたんだよ、金城の人質だって」

「金城はこんなだし、もうこいつも必要なくねー?」


意見が一致したのか、薄笑いを浮かべた人達は標的を瑠衣から僕に移したみたいです。

「や、やめろっ!そいつに手を出すな!!」


必死にそう叫ぶ瑠衣の顔は傷だらけで、ところどころに血を滲ませていました。
あまりに痛々しいその姿に、僕は眉をしかめました。


僕はそんな瑠衣の元に近付いて、ポケットからハンカチを取り出して口の端に付いた血を拭うと、立ち上がることも出来ない瑠衣に向かって微笑みかけました。


「大丈夫です。瑠衣は、僕が守りますから」

「何言ってんだっ。俺はいいから早く逃げろ!」


僕はゆるゆると首を振って、瑠衣を庇うように背にして立ち上がりました。


暴力は嫌いです。


でも、瑠衣を守るために僕は心に決めていた誓いを今日破ります―――。







「ハァハァ、何だこいつ!化け物かよっ」

「一体何人やられてんだ!?」

こんな大勢を相手にするなんてこと初めてな僕は、感じたことのない疲労に荒い呼吸を繰り返していました。

その間にも飛びかかってくる体を避けて、攻撃を受け止め身を翻します。

突きを急所に入れて、何人かは倒れましたが……さすがに一人では限界があります。


このままではやられてしまうのも時間の問題でしょう。



そんな僕(と瑠衣)の危機的状況を打ち破ったのは、場にそぐわないやたらと陽気な声でした。


「ジャッジャ〜ン☆正義のヒーローの登場だっちゃ!」

その声に振り向けば、藍ちゃんとその横には太一、後ろには見知った顔のブラックスターの人達がいました。


入り口からぞろぞろと姿を現したブラックスターの人達に、僕を取り囲んでいた銀狼の人達は怖じ気付いた様子で身を少し引きました。





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あきゅろす。
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