side:美咲
「――好きだ。」
瑠衣の言葉がまるで魔法のように、暗闇に沈んでいた僕の心を光で照らしてくれました。
もしかしたら、瑠衣は嫌々僕と暮らしてるのかもとか…一人部屋悶々と考えていたら泣きそうになりました。
瑠衣の本当の気持ちが聞きたくて、でもまた無視されたらと思うと怖くて。
臆病な自分が嫌いだと思いました。
だけど…
変なの。瑠衣の一言で、こんなにも容易く変わってしまうなんて。
「僕も瑠衣が大好きですっ」
「は、――ッ、おいっ」
自分の気持ちも無性に伝えくなって、口にしたら何だか感情が高ぶりすぎてしまった僕は瑠衣に飛び付いてしまいました。
屈んでいた状態だった瑠衣は、僕の突然の行動に慌てふためきながら両手がどうしたらいいのかわからない様子でさ迷っています。
「瑠衣、ありがとう。これからも兄弟仲良く暮らしていきましょうね」
「兄弟、仲良く?」
「はい。“兄弟として”気持ちが通じ合ったことですし僕もこれで安心して眠れます」
「…………………そーゆーことかよ」
瑠衣の肩に顔を埋めていたら、一気に睡魔が襲ってきて。
瑠衣の最後の呟きは、微睡みの中に消えていきました――。
―――
朝目が覚めると、僕は瑠衣の腕の中にいました。
でも、いつの間にベッドに?瑠衣が運んでくれたんでしょうか…。
瞬きを数回して、そっと顔をあげると気持ちよさそうに眠る瑠衣の寝顔があって。
それにクスリと笑い、僕はなるべく瑠衣を動かさないように慎重に腕の中から抜け出しました。
「あれ?母さん早いんですね」
リビングに行くと既に母さんが居て、ソファーで優雅に足を組みながらコーヒー片手に朝のニュース番組に見入ってました。
僕が声をかけると、母さんは顔だけ振り返って「やっぱ自分がいれたコーヒーは駄目ね」と苦々しい顔でカップを持ち上げました。
「今入れ直しますよ」
母さんは何につけても不器用で、コーヒーすらまともに淹れられないのはいつものこと。
「あ、そう言えばぁ翼から聞いたわよぉ〜」
僕が新しいカップにコーヒーを注いでいると、母さんが思い出したように声をあげました。
「辻堂さんからですか?」
辻堂さんとは、僕(rose)のマネージャーさんをしてくれてる方です。
実は母さんと辻堂さんは、高校の時に知り合い今でも仲の良さは健在で、その縁で僕は今の事務所に入りました。
出張が多い母さんは、定期的に辻堂さんと連絡を取り合い僕の状況などを聞き出しているのだと少し前に知りました。
やけに僕のスケジュールに関して詳しいな、とは前々から思ってたんですけどね…。
「そう、瑠衣くん乱入事件!もぉ〜っ、そんな美味しいツーショット私が撮りたかったわよ〜」
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