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それ、に二人きりなら今のうちに聞きたかったことも聞けます。

達也さんがいたら瑠衣が本音を言ってくれない気がしますし…


「瑠衣は僕の母さんとは会ったことあるんですか?」

「いや、再婚のことだってお前が来る前日に聞かされたぐれーだし」

「え!前日に!?瑠衣はそれで…再婚については何て?」

「別に。そんなん親父の勝手だろ」

瑠衣は特に気にした様子もなく、味噌汁をすすりました。

瑠衣がもし僕と母さんのことを歓迎してくれてなかったらどうしようかと思いましたけど…

いきなりやって来た僕に対してこんなに優しくしてくれるくらいだし、瑠衣は心が広いんだなと思いました。


「今日母さんからメールがきて、明日帰って来るそうですよ」

「ふーん。そういや前の家はどうしたんだ?」

「売り払ってしまったらしいです。だから母さん、ここに直接来ると言ってました」

「そうか」


何だか昨日と比べると凄い饒舌な瑠衣に、僕はニコニコしながら食事そっちのけで話しに夢中になりました。

瑠衣は僕が何か言うとちゃんと答えてくれて、それが嬉しくて。

だけどふと、今日聞いた教室での話しを思いだしました。


“ブラックスターの総長”


聞くいい機会かも知れません。


「瑠衣あの――」

PPPPP・・・・

僕の言葉を遮るように鳴ったのは携帯の着信音。

瑠衣は舌打ちすると後ろポケットから携帯を取りだし、ディスプレイを確認するとボタンを押して着信音を止めました。


「…でなくてよかったんですか?」

「あぁ」

もしかして僕に気を遣ってるんでしょうか?
もしそうなら気にしなくていいのに、と言おうとしたら通話にでることなくテーブルの上に置かれた携帯が再び震え出しました。


着信を知らせるそれを睨み付けた瑠衣は、一呼吸おいて苛々した様子で手にとりました。


「うぜーんだよ」

電話口に出るや否や相手に向かって不満をぶつける瑠衣。

「あ?知らねーよ勝手にやってろ」

眉間に皺を寄せ面倒臭そうに髪を掻きあげた瑠衣は、吐き捨てるように言うと電話を切りました。

そんなに嫌な相手からだったんでしょうか…?


「……高梨からだ」

あまりにジッと見ていたせいか、瑠衣は僕の視線に気付くと箸を持ち直しながら電話の相手を教えてくれました。


あぁ、藍ちゃんなら納得です。

今日見ていた限り、憎まれ口を言い合いながらも仲は良いみたいですし。


「そうですか。でも、いいんですか?電話の途中で切っちゃったみたいですけど…」

あまり詮索するのはよくないかなと思いつつ、なるべく自然にご飯を口に運びながら聞いてみると


「……仲間うちで集まってるから来いって言われただけだ。」


仲間うちって…



「ブラックスター、ですか?」

空気がピンとはりつめたのがわかりました。
瑠衣は箸を止め顔は下を向いたまま、表情は読み取れません。

何も答えない瑠衣に、僕は続けました。


「瑠衣が…暴走族の総長って、本当ですか?」

「………」



時計の秒針が聞こえるほどの長い沈黙のあと、瑠衣はゆっくりと顔をあげました。


「本当だ」

「え…」


ショックで固まる僕に、瑠衣は苦し気な視線を向けると少し考える素振りをして、慌てたように付け足しました。

「でもな、お前が思ってるよーな危ない集まりじゃねーぞ?」

「けど…喧嘩とかするんですよね?しかもバイクで危険な走行とかもするんですよね?暴走族というくらいですし…」

「ハッ、しねーよ。すげー安全運転!喧嘩?俺はそーゆー面倒なことしねーって」

目を泳がせる挙動不審な瑠衣。
明らかに嘘をついてるようにしか見えません。

瑠衣を疑いたくなくても、僕の中の疑念は拭えませんでした。


きっと、この目で見ない限り―。


「僕を、連れてって下さい」

「は?どこに…」

「ブラックスターの人達が集まってる場所にですっ!」

立ち上がり真剣な眼差しを向けた先には、顔を青ざめさせた瑠衣がいました――。





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あきゅろす。
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