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メイクを落とし制服に着替えて撮影所を後にした僕らは、夕日が沈んだ街中を肩を並べて歩きました。
「瑠衣、黙っててごめんなさい。やっぱり驚きましたよね?」
「あぁ、お前すげーんだな」
「え?」
あれ、と言って瑠衣が指さした先は、こないだ発売されたroseのファースト写真集。
その表紙の写真が、ビルの側面に垂れ幕のように掛かっていました。
「何だか恥ずかしいです…」
「あれ、もう売ってんのか?」
「あ、はい。確か先週発売だったと思いますけど…」
「……ここで待ってろ」
瑠衣は僕にそう言うと、来た道を戻り始めました。
何か忘れ物でもしたんでしょか…?
通りの隅で壁に体を預けて暫く待っていると、瑠衣が走って戻ってきました。
「行くぞ」
「…はい」
戻ってきた時、瑠衣が手に持っていたのはノート型の茶色い紙袋。
気になりチラッとその表面を見ると“ひまわり書店”と書いてありました。
本?
戻ってまで欲しかった本があったんでしょうか?
中身まで聞くのは不粋な気がして、僕は気を剃らすように前を向きました。
家に着くと、僕は早速夕食の準備に取り掛かりました。
瑠衣は到着するなり自室に籠ってしまったので、今日は一人です。
と言っても、今日は遅くなる予定でいたので事前に作っておいたものを暖めるだけの簡単な調理ですが。
お皿に盛り付けて二人分を用意したところで、僕は瑠衣を呼びに部屋へ向かいました。
コンコン・・・
「瑠衣ー、ご飯できましたよー」
扉越しに声をかけると、中から「あ、あぁわかったっ」と焦ったような瑠衣の声が聞こえてきました。
「いただきまーす」
「…いただきます」
二人で席につき、手を合わせて食事を始めようとしたら瑠衣が小さい声で言いました。
「今日、親父は」
「朝、遅くなるって言ってましたよ」
「…そうか」
なぜか嬉しそうに微かに笑った瑠衣に、やっぱり達也さんと仲が悪いんだろうか、と僕は心配になりました。
けどもしそうだとして、それを聞いて瑠衣の貴重な笑顔が崩れてしまうのは忍びないです。
今は、黙っておくことにしましょう…。
それに、家族になったばかりの僕が言ったところで、余計なお世話かも知れませんし。
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