[携帯モード] [URL送信]
2



「お弁当、どうですか?瑠衣の好みを知らないから取り敢えず色々入れてみたんですけど…」

無言で弁当を口に運ぶ俺をチラチラと窺っていた美咲が、やっと口を開いたと思えばそんなこと。
視線を感じて変にドギマギしてしまっていた自分がアホに思える。


「美味い」

「良かったぁ。瑠衣は嫌いなモノとかありますか?」

「……コンニャク」

「フフッ、じゃあコンニャクだけはお弁当に入れないようにしますね」


ふわりと笑った美咲は「明日のお弁当何にしよ〜かなぁ」と空を仰ぎながら洩らす。
そんな横顔を眺めながら、本当に自分と同じ男かよ、と今更ながら思う。



「どうかしましたか?」

俺の不躾な視線に気付いた美咲がキョトンとした顔で首を傾げた。


俺は変態かよ。


直ぐ様視線を弁当に向け卵焼きに箸を伸ばした。



「なぁ、金城。今日は“MINK-ミンク-”来るだろー?たまにはチームの奴らに顔ださねーとダメだぜー?」

ひっつく高梨を手で押し退けながら、神崎が言った。


MINKとは俺らのチーム、ブラックスターの溜まり場だ。
昼は普通の喫茶店、夜はバーと二つの顔をもつ。
まぁ、夜は俺ら以外の客なんて滅多に入らなねーけど。


「あー……」

それに答えようとした時、隣から刺さるような眼差しに気付き俺は口を結んだ。

「……」


美咲…


勿論美咲には俺が暴走族なんてものをやってるなんて言っていない。
しかも何だかんだで今は総長だ。
暴走族何てものに無縁だろう美咲に、その事実はかなり衝撃的だろう…

なぜか俺のことを、勘違いしちまってるし。


考えた末、俺は咄嗟に嘘をついた。


「意味わかんねー。だまれ」

だまれの部分を強調して神崎に睨みをきかす。
『余計なこと言うんじゃねー』と目配せすると、神崎は大袈裟に肩を震わし渇いた笑いを洩らした。


「あ、あはは〜。ホント俺意味わかんねぇよな〜」

「ビビりな太一がビビってる〜かっわいい〜」

「うっせぇ!誰だってビビんだろアレはっ。俺殺されるかと思った…」


またギャイギャイやりだした二人を無視し、チラリと美咲を横目で確認すると、疑いの眼差しは消え安心したように微笑を浮かべていた。


いつまで嘘を貫き通せるだろうか、と不安を感じる中、昼休みが過ぎていった――。





――――




HRを終え部活へと向かうクラスメイトが殆どの中、俺は美咲が立ち上がるのを見計らって席を立った。


俺は部活なんて面倒なもんに所属してねーし、転校してきたばかりの美咲だって同じだ。

因みに神崎はサッカー部、高梨はバスケ部に所属しているため二人は美咲に挨拶をすると、それぞれの場所へと向かって行った。




「瑠衣、あの…今日僕ちょっと帰り遅くなりそうなんで、先にご飯食べてて構いませんからね?」

玄関へと向かう廊下を歩きながら、美咲が申し訳なさそうに言ってきた。


「遅くなるって、どこ行くんだよ」

何だか思春期の娘を心配する親父のようだ。
どこ行こうが勝手だろ、と思われるだろうかと少し心配になったが、美咲は気にした様子もなく答えた。


「バイトです。あ、夕飯は冷蔵庫に入っているんで暖めて食べて下さいね」




.

[*←][→#]

16/21ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!