side:瑠衣
美咲に対しての俺の態度がおかしいのを目敏く感じ取った高梨が、耳元で言ってきた。
「ミチャって、瑠衣の何なのかなぁ〜?」
ニヤニヤした顔付きで聞いてくる高梨を殴りたくなったが、俺は事の成り行きを短絡的に説明した。
「親父の再婚相手の息子」
「あはっ☆兄弟ってわけねぇ〜なるほどぉ。でも俺が思うに、それだけじゃないって感じなんだけどなぁ〜」
意味がわからないことを言いながら高梨はニヤリと探るような視線を寄こしてきた。
変人にこれ以上構うのも面倒になって、俺は高梨から顔を背け前を向く。
そこで目にしたのは、美咲の席を囲むようにして出来た人だかり。
「………」
よく見れば噂を聞きつけたのか廊下には他のクラスの奴らまで集まってきてる始末だ。
聞き耳を立ててみれば、付き合っている奴はいるかなど下心丸出しの質問。
困惑した様子でそれに律儀に応える美咲の声が聞こえ、フツフツと怒りが湧きあがる。
「ねぇ、すっごい綺麗な肌してんね?」
そんな誰かの声が聞こえ、人だかりの隙間から見えたのは知らない奴の手が美咲に向けて伸びている光景。
触 る な
ドッゴォオオーン・・!!
プツリとキレた俺は、いつの間にか机を吹っ飛ばしていた。
――――
「ミチャ〜、一緒にご飯食べよぉ☆」
「おいテメェ!俺が誘おうと思ったのに先に声かけてんじゃねーよっ」
「太一ったらヤキモチ〜?それともアレの日かしらぁ?」
「ヤキモチでもねーしアレの日なんてくるかボケッ!」
「もぉ〜結局同じ場所で食べるんだし〜いいじゃあん」
神崎と高梨がヤイヤイやっているのを横で見ながら、美咲は「うん、食べましょう」と嬉しそうに頷いた。
となれば、必然的に俺も一緒に昼食をとるという状態となるわけで…
「何ニヤついてるのぉ?ルンルン気持ち悪〜い」
「………」
ドスッ
「痛っ!!」
茶化してきた高梨の尻に蹴りを一発かまして、四つん這いで呻く奴を無視して俺は先に屋上へと向かった。
屋上に出ると、そこには誰の姿もなく生ぬるい風が頬を撫でた。
何だか今日は一段と苛ついていたせいか、外の空気が清々しく感じる。
真ん中を陣取りひんやりとしたコンクリの上に胡座をかいていると、ほどなくして三人がやって来た。
「ひっつくな変態っ!」
「だってぇ、太一って抱き心地イイ〜んだよぉ?」
「お前の抱かれ心地は最悪だっつーの!」
高梨と神崎はギャーギャー言いながら、何時ものように俺の右側に座る。
騒がしくじゃれつく奴らを見ながらクスクス笑っている美咲は俺の左隣に腰をおろした。
「あ〜腹減ったー」
「今日俺ね、フルーツ盛りだくさんのパンなんだぁ☆」
「あっそ、気持ち悪いね。高梨くん自体がもうアレだしね。気持ち悪〜」
「アレって何〜?ちょー気になるんですけどぉ〜☆」
コンビニで買ったであろうパンやオニギリを取り出す高梨と神崎を横目に、俺は朝美咲に渡された弁当箱を広げた。
隣を見れば色違いのボックス。
ほぼ同時に開けられた弁当箱の中身は、見事に同じだった。
「愛妻弁当ってやつですか旦那〜。ラブラブ〜」
ヒューヒューと子供染みたことをしてくる高梨をキレイに無視して、俺は弁当を食い始めた。
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