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てっきり瑠衣は、学園の人気者で知り合いも多いだろうと予測していたのに…。
これはどう見ても、瑠衣を避けてるような…

あ、そっか!


「もしかして瑠衣は生徒たちから憧れの的で、高嶺の華って感じなんですねっ」

うんうん、と自分で導きだした答えに頷いていると、隣の瑠衣からドッと溜め息が漏れました。








「わざわざ職員室までありがとうございます」

学園内を把握していない僕を、瑠衣は職員室まで連れて行ってくれました。

けれど、これ以上甘えるわけにはいきません。

何しろ学園内では瑠衣と他人同士として過ごさなければいけないのですから…。


少し寂しい気持ちで俯いていると、瑠衣の大きな手が僕の頭に乗せられました。

「何かあったら俺に言え」

「でも…瑠衣に迷惑はかけたくないですし…」

「いいから言え」

眉間を寄せ、真剣な瞳を向けてくる瑠衣に僕は笑顔で頷きました。

その瞬間、バッと目を逸らす瑠衣。

昨日一日でこれが瑠衣の照れ隠しだと気付きました。


それにクスクス笑っていると、「もう行く」とぶっきらぼうに言った瑠衣は教室に向かって行きました。




「き、君が結城くんかな?」

瑠衣の後ろ姿を見送っていると、職員室からひょっこり現れたのはオドオドと怯えた様子の人。
丸い眼鏡に青白い顔で、白衣を着ています。


「はいそうです」

「ぼ、僕は担任の三橋。よ、よろしくね」

「宜しくお願いしますっ」



挨拶を終えて、僕がこれから過ごすクラスに案内してもらう最中も、三橋先生はずっとオドオドしていました。






「こ、ここだよ」

扉の上には“2-3”とプレートが掛かっていました。

ガラッ
三橋先生がビクビクしながら入って行く後ろに付いて僕も教室へと足を踏み入れました。

ガヤガヤと騒がしかった教室内は、徐々に音がやんでいき僕が教卓の横に着いた時には、シンとした静けさに包まれました。

注目されるのって何だか緊張します…


前を向いて教室を見渡すと、窓際の後ろに見知った人物がいて思わず頬を緩めました。

瑠衣と同じクラスという嬉しさに浸っていると、クラス全体の温度が上がった感覚がして気付けば数人のクラスメイトが熱に浮かされたように真っ赤な顔をしていました。

風邪が流行ってるんでしょうか?


「て、転校生の結城くんです。結城くん、あの、自己紹介を」

「はい。結城美咲と言います。不慣れなことも多いと思うので色々と教えてもらえると嬉しいです。皆さん仲良くしてくださいねっ」


第一印象は大事だと思いなるべく笑顔で紹介を終えると、何人かが鼻血を垂らし始めました。

やはり具合が悪かったみたいです。

ある人は「ヤバッ、トイレ」と言って前かがみになりながら教室から飛び出して行きました。
僕の紹介のせいでトイレを我慢してたようで、申し訳ないです。



「じ、じゃ結城くんの席は廊下側の――」

ガンッ

先生の言葉は突然鳴り響いた大きな音に遮られました。

その出所に目を向けると、瑠衣が前の席の人と何やら話をしていてここからは聞こえませんが、顔を青くしたその生徒は細々とした声で言いました。


「せ、先生、俺廊下側にしてください」

「…あ、あぁ、いいとも」

三橋先生はその生徒の要望を、オドオドしながらもすぐに了承しました。

荷物をまとめ、廊下側の空席に移動をする生徒。


となれば、空いている席は一つしかありません。


「ゆ、結城くんは窓際の席に…」

「はい、わかりました」


僕は“偶然”にも、瑠衣の前の席になりました。






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