side:美咲
「瑠衣ー、朝食できましたよ」
「あ、あぁわかった」
部屋まで呼びに行くと、瑠衣は既に制服に身を包んでいました。
紺色のブレザーに青のネクタイ、下はグレーのチェック柄のスラックス。
星都学園の制服は長身でスタイルの良い瑠衣にとってもよく似合っています。
そんなことよりも…
僕は朝からどこか様子のおかしい瑠衣が心配です。
動きはぎこちないし、話かけても全然目を合わしてくれません。
僕、何か瑠衣に嫌われるようなことをしてしまったんでしょうか…
リビングに戻ると、スーツ姿の達也さんがコーヒー片手に新聞を読んでいました。
「美咲くん」
仕事の時間もあるので先に朝食を済ませた達也さんは、僕の姿に気付くと新聞を畳みカバン片手に近付いてきました。
「行ってきます」
腕を広げられ、少し考えたあと達也さんが何を求めているのかを察した僕は達也に抱き着きました。
「行ってらっしゃい、達也さん」
「うん」
達也さんは満足そうに僕の頭を撫でました。
スキンシップが多い人なのかな?と思っていると、昨日のデジャブのように背後から低い声が聞こえてきました。
「今すぐ離れやがれ変態親父」
達也さんから体を離して振り返ると、不機嫌そうに眉間に皺を寄せた瑠衣が立っていました。
また不穏な空気になりそうな予感がした僕は、慌てて声を張り上げました。
「あ、達也さん!お仕事の時間大丈夫ですか?そろそろ行かないと!それに瑠衣も、早く食べないと学校遅刻しちゃいますよ!?」
そう言うと、無言で席に着いた瑠衣。
達也さんも笑いながら「うん、行ってくるね」と言って仕事へ向かいました。
ホッ、と一安心。
もしかして…
瑠衣と達也さんて、仲が悪いんでしょうか?二人共僕にはよくしてくれるのに…。
親子感の関係に不安を覚えつつ、僕も瑠衣の向かいに座り朝食にありつきました。
そこで、これから向かう場所について多少なりとも知っておくべきかな、と思った僕は瑠衣に質問をなげかけました。
「瑠衣、星都学園てどんなところですか?」
聞くと、瑠衣はピクリと肩を揺らしトーストを食べていた手を止めました。
「どんなって…何がだ」
「えっと…いいところですか?」
「最悪だ」
「え!?」
「あ、いや………普通だ」
ビックリしました。
最悪と言われた瞬間とても危険な場所なのかと思いましたが、言い直した瑠衣いわく“普通に良い学校”のようです。
「良かったです。――瑠衣はきっと学校では人気者でしょうね!」
「は?」
「かっこいいし、優しいし…何か皆のお兄さん的存在なんだろうなって思います」
そう言うと、なぜか瑠衣は遠い目をしました。
――――
家から電車を乗り継いでそれからバスで10分。
バス停から徒歩で暫く進んだところに星都学園はありました。
校門近くまで来ると、同じ制服を着た生徒たちが続々と見受けられました。
しかし妙なことに皆、瑠衣を見た瞬間逃げるように走って校舎へと入って行きます。
どういうことでしょうか?
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