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side:美咲



―――



瑠衣に教えてもらったスーパーは、マンションから徒歩五分程度の場所でした。

こんな近くにあるなら買い物には不自由しないな、と思っていた僕でしたがスーパーに入り並べられた品物を見てビックリ。


外観からして豪華だし、なんかおかしいなと思ったんです…


僕が以前通っていたスーパーと野菜の値段を比較すると、およそ倍。

つまり、このスーパーはセレブ御用達の高級スーパー。
値段にさえ目を瞑れば、品揃えは豊富だし品物はどれも新鮮そうでいいんですけどね…



「どうした?」

野菜を見ながら固まってしまった僕を、瑠衣が怪訝な顔つきで聞いてきました。

「値段がちょっと、高いような…」

本当はちょっとどころじゃないですけど。

「そうか?気にせず選べ。俺が払うから」

「え、でも…」

「正確には親父のカードだけどな。いいから選べ」

値段が値段なだけにちょっと気が引けますが、なるべく安い食材で納めることにして買い物を再開しました。




「瑠衣は何が食べたいですか?」

必要最低限の調味料をカゴに入れたところで聞くと、瑠衣は立ち止まって考え始めました。

暫く無言で下を向いていた瑠衣でしたが


「…ハンバーグ」

「え?」

聞こえなかったからではなく、瑠衣の口からハンバーグなんてでてくるとは思わなかったからつい驚いてしまいました。

そんな僕の反応に機嫌を損ねたのか、瑠衣はそっぽを向いて「やっぱなんでいい」と言いました。

髪の間から覗く耳が少し赤いのは、黙っておきましょう。











「今から作るから、出来るまで好きにしてていいですよ」

カウンターキッチンで先程買ってきた食材を出しながら言うと、瑠衣はリビングのソファーに腰をおろしました。

因みに達也さんは仕事で出掛けていて不在です。



使う食材はそのままに、翌日の分は冷蔵庫にしまい準備に取りかかろうと前を向くと、瑠衣は何をするでもなくただ座ったままで…

もしかして僕、気を遣わしてしまってるんでしょうか…。



「瑠衣、僕は一人でも大丈夫ですよ?」

ニコリと笑って言うと、少し考える素振りをした瑠衣は、僕の居るキッチンへとやって来ました。

なんだろうと思っていると、僕の姿を上から下まで眺めた瑠衣は、顔を少し赤らめながら言いました。


「なんだそのエプロン…」


その、というのは僕が付けてるフリフリの白いエプロンのことでしょう。
毎日、当たり前のように使っていたから気付きませんでした。

誰だって、男がこんな可愛らしいのを付けていたら気持ち悪く思うのも当然です。


「母さんに貰ったんですが、これしかなくて…」

恥ずかしさに顔を伏せエプロンを外そうか迷っていると、少し間をおいたあと瑠衣がボソッと呟きました。


「に、似合ってる」

「本当ですか!?嬉しいです」


瑠衣の心遣いに感謝しつつ、僕は包丁を手に食材を切り始めました。


だけどなぜか瑠衣は冷蔵庫に凭れかかりずっとこちらの様子を窺っていて、背中に刺さる視線が痛いです。

ちょっと、落ち着かないというか…集中出来ないというか…


一体何がしたいんでしょう?





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あきゅろす。
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