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――――




翌日、朝っぱらから親父に叩き起こされた。


「起きろ瑠衣!」

バシッ・・
「イテッ!」


ベッドから落とされ、その衝撃で嫌でも目が覚めた。


このクソ親父〜!


頭を摩りながら睨みあげると、親父は涼しい顔で「こっちへ来い」と俺の首根っこを掴みリビングまで引き摺った。



「痛ってーな!何すんだクソ親父っ!!!」

「いいから来なさいバカ息子」


一体何だってんだよ!


リビングの真ん中に放りなげられ文句を言おうと口を開いた時、何かが視界に入った。

顔を向けると、そこには知らない奴が居て――。


「…………」


目にした瞬間、息を呑んだ。


色素の薄いブラウンの髪と瞳、円らな目の下にはふっくらとした桜色の唇。
肌は雪のように白く…何もかも、完璧だと思った。


熱に浮かれたように頭がボーッとして、そいつが何を言ってるのか聞こえないほどに、俺は見惚れていた。


ゴツンッ
「痛ってー!!何すんだ親父っ!」

「美咲くんが挨拶してくれたんだからちゃんと返しなさい」


後頭部の衝撃で、やっと我に返る。

美咲と名乗ったそいつの笑顔が眩しくて、つい夢見心地のような気分に陥ってしまっていた俺は、内心舌打ちして視線を外し、一応自分の名前を名乗った。


「…金城瑠衣」

未だ鳴り止まない激しい鼓動に苛々していると、そいつが俺の名前をその愛らしい口で確かめるように呟いた。


「…瑠、衣…」


それだけで、俺の体温は更に上昇していく。


なんだつーんだよっ!


よくわからない自分の感情に戸惑っていると、小さな手が視界の端に映って、何だと思えば男とは思えないような小さな掌が俺の額に触れた。

「熱はないみたいですね。」

「……」

駄目だ。3秒以上こいつの目を見てられない…


「瑠衣、美咲くんを部屋に案内してあげなさい」

ふいに親父から言われた言葉に、俺は無言で廊下を進んだ。
その後ろを、美咲も手荷物を抱えて小走りでついてくる。




「凄い素敵なお部屋ですね」

美咲を部屋に案内すると、嬉しそうに声をあげた。

「き、気に入ったか」

「はい、とてもっ」

満面の笑みを向けてくる美咲は心臓に悪い。
なんというか、この世の者とは思えないほどに…可愛すぎる。

そう思う自分がキモくて自己嫌悪。


しかし数日前から業者を呼んで親父が嬉しそうに部屋を改装していたがまさか物置と化していた部屋がここまで見違えるとはな。


部屋を見渡しながらそんなことを考えていると、ガサガサと物音が聞こえ目を遣ると、床に座って段ボールから荷物を取り出してる美咲がいた。

どうやら前の家から持ってきた荷物を片付けるようだ。


「手伝ってやろうか?」

自分の口からでた言葉に驚く。
俺は基本的に面倒臭がりだし、荷物の整理だなんて頼まれたって普段ならしねーのに…。

「いいんですか?」

遠慮がちに聞いてくる美咲を無視して、俺は隣に座った。

空いてない段ボールを手繰り寄せ勝手に手伝いを始める。

自分で言ってしまった以上、引くに引けねーし。





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