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「ご主人様のお部屋にご案内致します。着いて来てください」
「え、あ、はい…」
ご主人様ということは、この大邸宅のボスということだろう。
空が全く面識がないのは明らかで、自分が来させられた目的さえわからない状況。
空は困惑を隠しきれなかったが、兎に角今は黙って周に着いて行くことにした。
コンコンッ・・
「ご主人様、お連れ致しましたよ」
『あぁ、入りたまえ』
一際大きな扉の前で立ち止まった周が中の主に呼び掛けるとすぐに応答があった。
「失礼します」と言って扉を開けた周の後ろに続いて部屋に足を踏み入れる空。
「いやぁ、待っていたよ。鷲尾空くん」
革張りのソファーに座っていた品の漂う中年男性が空に向かってにこやかに手をあげる。
空も反射的に手をあげてしまったがすぐに下げた。
「誰だ?俺をどうしてここに?クソ親父は無事なのか!?」
ここへ来て初めて空は疑問をぶつけた。
我慢していただけに、山ほどある聞きたいことが口からついて出てくる。
取り乱す空をやんわりと笑顔でいさめた男は「まぁ、座りたまえ」と言って空をソファーに座るように促した。
警戒しながらもそれに従った空は、まずテーブルに置かれた茶菓子に目をつけた。
何しろ三日三晩飲まず食わずだったのだ。
普通の人間であれば動くことすらままならないはずだが、貧困生活を強いられてきた経験値ゆえか空はピンピンしていた。
と言っても、もの凄く空腹であることは事実。
「これ、タダか?」
空は茶菓子を指さし男に確認をとった。
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