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(え?手をグーにして…………エイッ!っっってだから!!!無理だってば〜〜)
空のジェスチャーを感じとった十夜は首を横に振りまくった。
それでも空には伝わらないようで、何度も何度も拳をふりおろす動作を繰り返される始末。
こいつに頼ったら駄目だ。
空に助けを求めることを早々に諦めた十夜は逃げ道を探した。
目前にまで迫っている殺気だった九音を横切るのは自殺行為。
だったら逃げ道は後方にしかない。
九音の動きを警戒しながら、十夜は背後を確認した。
すると、老朽が進んでるためかはたまた誰かが故意に壊したものなのか、人一人が潜れる程度の大きな穴を見つけた。
いける。
十夜はそう確認した。
迷うことなく抜け穴へとダッシュする十夜。
それを追うように九音も直ぐ様駆け出したが、逃げ足の速さは十夜のほうが上のようで、寸でのところで取り逃がしてしまう。
「チッ、逃がしたか…」
苦虫を潰したように悔しさに顔を歪める九音。
そんな一瞬の沈黙を破ったのは、何とも間抜けな音だった。
グ〜リュリュルンッ
「九音、帰ろーぜ。腹減った」
「……」
倉庫内に反響したちょっと恥ずかしい腹の音にも顔色一つ変えずあくびまで漏らしている空に、九音は呆れたようにため息を吐き出した。
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