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さぁ、どうする。

もちろん被害者の一員である遊二は知らん顔を突き通す気満々なようで、スタスタと出口に向かってしまう。

それが妥当だろう。
何しろいきなり拉致され、恥じまでかかされたのだから。



十夜は焦った。

空は立ち尽くしたまま、感情の読めぬ表情で誘拐犯(仮)、十夜のほうへ向かって行く九音をじっと見守っているだけで、未だに何の指示も寄越さない。


(もぉ!空っちどうすんのさ〜)


着実に近付いてくる九音に、十夜は仕方なしに縄を掴んで拘束の準備に入った。



「……なぁ、九音」


十夜の心の叫びを知ってか知らずか、空は涼しい顔のまま九音の名を呼んだ。


足を止め振り向く九音。


「貴様まだいたのか。なんだ」

「この状況、よく考えてみろよ。相手は一人だぜ?こっちは二人」


不気味にニヤリと笑う空に、九音は溜め息を吐くと厳しい口調で言った。


「馬鹿者。遊二を拉致するくらいの奴らだぞ。それなりに武術を心得ていると考えるのが当然だ。もしかしたら仲間が潜んでいるかも知れない。迂闊に手を出すのは危険だ」

「他に人の気配は感じないぞ?俺は今がチャンスだと思う」

「俺は、貴様の安易な判断で怪我を負うのは御免だ」

「おいおい何ナマなこと言ってやがる。テメェはビビりかよ」

「………貴様、今なんと言った」


ビビり呼ばわりされてカチンときた九音は眉をつり上げる。

空はそんな九音に続けた。


「だってそうだろ?見えない相手に怯えて、反撃しようともしないなんて。ビビりじゃねぇか」

「……よし、よかろう。貴様の言うことを鵜呑みにするのは癪だが、このまま易々と捕まってやるのも気に食わない」


空の煽りにまんまと乗っかった九音は、十夜へと向き直る。
目は本気モードだ。


うまいこと運んだ自分のアドリブに、空はしたり顔で十夜にウインクを送った。


(はぁ〜〜〜〜〜!?)


十夜は冗談じゃない、と冷や汗をかき始める。

九音は、小さい頃からあらゆる武術を叩き込まれている兄弟たちの中でも、べらぼうに強いことを熟知している十夜は思わず後ずさった。


視界の端に映る空はなぜかこちらに親指を立てて誇らしげに笑っているし。

意味がわからない。

十夜は混乱した。


(ガチで対決しろってことなの!?やだよ、九音(遊二もだけど)とだけは絶対やだ!)

プルプルと首を振る十夜に、空は不思議そうに眉根を寄せた。

もしかしたらちゃんと伝わっていないのかも知れない、と思った空は、九音が背を向けているのをいいことに、身振り手振りで十夜へジェスチャーを送った。




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