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呆れたように溜め息をつく九音に、空は「いいじゃねぇかよ」と肩を竦めた。

「まぁいい。兎に角、先を急ぐぞ。この辺りは物騒みたいだからな」

「わかった」














今度は絡まれることなく指定された倉庫へとやって来た九音と空。

少し空いたシャッターの隙間から身を屈めて中へと入ると、中は薄暗くどんよりとした湿った空気が漂っていた。



「遊二…」


内部の中央で、布団にくるまれた遊二を発見した九音は眉を潜めた。

いくら喧嘩が強い遊二でも、あれじゃ抵抗出来まい。

九音は隣に佇む人物に目を向ける。


「望み通り来てやったぞ。遊二を解放してもらおうか」


パーティー用のふざけたお面をつけた体格的に男だと思わせる人物は、九音の言葉に無言で遊二の拘束を解き始めた。

「……」

遊二は何か言いたそうに口を開いたが、お面の男に首を振られ黙りこむ。


「約束は守った。鴉間九音、こっちに来てもらおうか」

初めて発せられた男の声は、ヘリウムガスを吸ってるようでかなり高音だった。
こんな緊迫した状況でなければ、かなりのお祭り野郎である。


「あぁ、わかっている」


九音は男の指示通り、歩きだした。



「……何で来やがった」


拘束を解かれた遊二はのろのろと立ち上がると、顔を伏せたまま呟いた。

足を止めて遊二に顔を向ける九音。


「さぁな…」

「はぐらかしてんじゃねぇよ!」

「………」

怒気を孕んだ遊二の言葉に、九音は若干眉を潜めた。

無言の九音に、遊二は苛々した様子でもう一度舌打ちを鳴らす。


「いい子ちゃん気取りも大概にしろよ。虫酸が走るぜ」

「何が言いたい」


罵声を浴びせてくる遊二に、九音は落ち着き払った声色で問い質す。

その冷静ささえも、遊二は気に食わなかった。

体にまとわりついていた縄を乱暴に投げ捨てると、ツカツカと九音に近付き、胸ぐらを掴む。


「兄貴面すんなって言ってんだよ。ここに来たのだって、本当は俺のためなんかじゃねぇ。自分のためだ。弟を救った“イイ”兄貴として、脚光を浴びてぇだけだろが」

「………」

「フンッ、だんまりかよ。テメェは都合が悪くなるといつもそうだよな。」


遊二はそう言って鼻で笑うと、九音から手を離した。



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あきゅろす。
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