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倉庫が多く点在する八巻港は、不良の溜まり場として有名な場所だった。

空き倉庫をアジトとする族がいたりと、辺りにはいかにもな不良たちがたくさんいる。
目が合っただけで喧嘩が勃発することも少なくない。



そんなこと知らずにやってきてしまった九音は、チラホラと目につく柄の悪そうな男たちを警戒をしながら歩いていた。

慎重な九音とは違い、空はここが危険地帯だと気付いているのかいないのか、暢気に口笛を吹いている。

九音は度胸が据わった奴だ、と空を感心したが、それは違う。

空は、何かイベントでもあるのか、くらいにしか思っていなかった。
周りの空気を読むことが出来ないためこのアウェイな雰囲気に全く気付いていなかったのだ。



しかしながらいくら警戒しようとも、金持ち学校の制服を身に纏う二人は、嫌でも目立つ。

二人が不良たちからの不躾な視線を浴びながら暫く歩いていると、目の前から嫌な笑みを浮かべた二人組がやってきた。


「お坊ちゃんたちー、こんなとこで何してんのー?」
「俺らに金恵んでくんねーかなー?」


九音は瞬時に空を庇うようにして前へ出ると、カツアゲをしに来た不良たちに臆することなく言い放った。


「貴様らに渡す金などない」

「あ?んだとテメェ!!」

九音の言葉にカッと頭に血がのぼった不良Aは、ポキポキと指の関節を鳴らした。


(やるしかないようだな…)



今にも殴りかかってきそうな不良たちに九音が身構えていると、空が袖を引っ張ってきた。

こんな時になんだ、と九音は苛々した様子で振り返る。



「これはどんなイベントだ?」

「イベント?こいつらは俺たちから金を巻き上げるつもりだ」

「そうか。金を巻き上げるイベントか…難しいそうだな…でも、いつスタートしたんだ?もしかして港に足を踏み入れた瞬間に強制参加という――」


訳のわからないことを呟く空に、九音は状況が状況なだけにこれ以上構ってやれない、と前を見据える。


「何コソコソ話してんだよ。逃げれるとでも思ってんのかー?」
「金置いてくまでぜってぇ逃がさねぇけどな!」


金持ちのボンボンには負ける気がしないのか、不良たちは既に勝ち誇ったように笑っていた。


「よし、俺がやる。」

そんな中、いきなり九音の前に空が立った。


「馬鹿か!貴様は下がってろ!」

「うっせぇな。俺がやりてーんだよ!」

「……」

(進んで前に出るくらいだ。それなりに腕っぷしには自信があるのだろう…)

そう思った九音は、少し様子を見ることにした。

空がこれをただの遊びだと思っていることなど知らずに…。




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あきゅろす。
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