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翌日、空は慌ただしい様子でパジャマのままドタバタと廊下を走っていた。

向かった先は、九音の部屋。


バンッ・・!

「九音!」

当たり前のようにノックもせずに入って来た空に、制服に着替え途中であった九音は驚きに目を丸くする。
と同時に、空が着ている(可愛らしいクマがプリントされたピンク)パジャマの趣味の悪さに顔をひきつらせた。


「使用人、貴様は覗きの趣味でもあるのか?ノックくらいしろ。しかもなんだ、その気色悪い寝間着は」

「誰が野郎の裸なんかに興味あっかよ。パジャマについては弁解はねぇ。あー、今はそれどころじゃねぇ!」


叫ぶように首を振る空。
尋常ではない様子に、九音はブレザーを着込むと眼鏡を掛けながら空に訊ねた。


「何事だ一体。こんな朝っぱらから…くだらない事だったら許さんぞ」

「た、大変なんだ!ゆ、遊二が!遊二がぁあああ」


半ば錯乱状態の空に、九音は呆れたように息を吐き出す。


「遊二がどうしたと言うんだ。ちゃんと説明をしろ」


九音が冷静に問いただすと、空は息を整え幾分落ち着きを取り戻した。



「じ、実は…遊二が…何者かに連れ去られた」

「何!?」


九音は空に告げられた事実に目を見開く。

脳裏に一瞬、幼き頃に味わった情景が過ったが、すぐにかぶりを振った。



「使用人、経緯を話せ」

「俺が庭の掃き掃除しようと思って玄関を開けたら、手紙が挟んであったんだ」

「手紙?」

「あぁ、これだ」


空は手に握りしめていたそれを九音に差し出した。

九音が受けとった手紙、そこには切り取ったような文字(ありがち)でこう書いてあった。


「“鴉間遊二は預かった。返して欲しくば午後12時までに八巻港近く、倉庫014まで、鴉間九音一人で来い。尚、警察に通報した場合鴉間遊二の命はないと思え”……成る程。犯人たちの目的は俺というわけか」


九音は犯人からの手紙を読み終えると、ベッドに腰かけ険しい表情で思考を巡らせた。



「九音!どうするんだ!?」

空はやけに冷静な九音に痺れを切らし声を張り上げる。


九音は犯人の目論見を十分に理解していた。
自分は鴉間家の次期当主。本来なら遊二ではなく、自分をさらうつもりだったのだろう。
何らかの理由で遊二を連れ去ることにしたに違いない。


(身代金の要求がないということは、鴉間家の財力ではなく政治的権力が目的か…)


たが、あの凶暴な遊二が誘拐されるとは俄に信じがたい。そう易々と捕まるたまではあるまい。
だとすれば、犯人は複数、または武術に長けた奴等だと考えられる。

犯人たちの要求をのんで一人で行くのは、かなりの危険が伴うだろう。


「大丈夫だ。犯人は遊二に危害は加えない」

「なんでそんなことわかんだよ」




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あきゅろす。
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