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中へ一歩足を踏み入れると、そこは別世界のような光景が広がっていた。
手入れの行き届いた芝生に、中心には天使をモチーフにした噴水まである。
「すんげぇー…」
このような建物が日本に存在していた自体に、空は度肝を抜かれた。
一体自分ちいくつ分だろうか、という考えが一瞬頭を過ったが、比較する対象があまりに小さすぎてとんでもない数になることがすぐに予想できた為、馬鹿馬鹿しい考えを振り払う。
上京したての田舎者よろしくキョロキョロと辺りを見渡しながら空が先を歩いていくと、前方からギコギコという不思議な音が聞こえ空は前を見据えた。
するとどうだろう。メイド服を着た女性が自転車に乗ってやって来るではないか。
女性は穏やかな笑みを浮かべながら色々とコーティングされたピンクの自転車を降りると、斜め45度の綺麗な姿勢で頭をさげた。
「ようこそ鴉間(カラスマ)家へ!わたくし、使用人頭をつとめます周陽子(アマネヨウコ)と申します。以後、お見知りおきを」
「はあ…」
いきなり自己紹介をされ戸惑う空。
(鴉間家…?)
空は一体自分が何のためにここへ来させられたのか、今さらながら疑問を抱いた。
自分はただ、借金取りにここへ来るよう言われただけ。そうすれば父である五郎を解放してもらえるから、と。
それに必死すぎて現状を今一理解していなかった、いや、出来なかった。
「では、参りましょうか。ご主人様がお待ちかねですよ」
疑問符を飛び散らす空に、周は穏やかな笑みを向けると「どうぞこちらへ」と、自転車の後ろに乗るように促した。
「……」
見知らぬ人(しかも女性)と2ケツをするのは若干気が引けたが、建物まで続く長い道のりを見た空はとてもじゃないが歩く気力もなくなり大人しく周の背後に回った。
フワフワした座布団が巻かれているため乗り心地は最高だ。
「しっかり捕まっていて下さいね!少し飛ばします」
「え、ちょっ、うわぁあああ!」
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